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わたくしレベルの悪役令嬢になれば婚約破棄フラグ管理は完璧ですわ!~今度はハッピーエンドを目指します~  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第一部

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 長く続く、二つの世界の行き来を繰り返す中で、わたしはヴィアラクテ工房のガラス細工を集めるようになっていた。


 きっかけは些細なこと。

 最初にもらったのは、ずっと前のランセルテから、誕生日プレゼントに、ヴィアラクテ工房のガラス細工をもらったこと。あれは小さな、手乗りサイズの狼だった。

 今ほどランセルテへの対応が分かっていなかったけれど、初めて誕生日にプレゼントをもらえるくらいの仲になったことに、わたしはとても喜んだ。なんなら号泣してしまったくらい。


 でも、わたしはその後、知ってしまったのである。

 実はその狼、二匹セットだったことを。


 それは、単純にランセルテのお小遣いの範囲で買うことができたのが一匹だけだった、という話。ランセルテが意地悪で一匹しか買ってこなかったというわけではない。

 そもそも、二匹セット、というのはあくまで、シリーズすべてをそろえると、狼二匹の番同士、という風に見えるように作られている、というだけであって、売られているのは単体で。


 ――でも、せっかくなら二匹揃えたいわ。


 そう思ったのが全ての始まりである。


 『アルコルズ・キス』が乙女ゲームであり、乙女ゲームというのは一種のコンテンツの総称である。

 つまり――わたしは、向こうの世界とこちらの世界を行き来する間に、『アルコルズ・キス』を知る前、一回目の『わたくし』と比べ、随分とオタク気質になってしまったのである。


 いや、もちろん、『アルコルズ・キス』の攻略や、対処方法の模索が最優先なのは、どちらの世界も変わらない。


 でも、毎日を慎重に生き、気を抜かず、張り詰めて生きていく、なんてこと、人間、できないものだ。


 こちらの世界では、ずっと一挙一動を気にして生きるように心がけているから、向こうの世界では、その反動が来ている部分があるのは自覚している。

 そもそも、『アルコルズ・キス』は商業コンテンツ。ゲームが発売されるまでも長い時間があるし、メディアが展開されるスピードだって、一つひとつの間が開く。


 その合間に、似たような作品で何かいい作戦が思いつかないかしら、と手を広げていくうちに――こうなったのだ。生まれによっては、そういう趣味に寛容どころか、家族自身もどっぷりハマっているところに行くこともあったから……。

 そんな、オタク気質に芽生えたわたしが、二匹揃えたいわ、と思ってから、やっぱり全シリーズ揃えたいかも……と思い出すまでに時間はかからなかった。


 お小遣いの範囲で買い集めていたけれど……それでも、ヴィアラクテ工房で唯一プレミアがついてしまった『夜旅』シリーズのガラス細工は、一つも手に入らなかったのである。

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