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 協力者を増やす。


 それは今まで、考えても実践してこなかったことだ。


 別の世界で生きている記憶がある、だなんて。子供の頃の戯言ならば受け入れられるかもしれないけれど、成長していくにつれそういうものは『卒業』しないといけないと周囲は思うだろうし、いつかは王族へと嫁ぐ貴族令嬢がそんな妄言をいつまでも信じていたら、怒られる、程度では済まない。


 それに、内容が内容だ。いつかの自分がメモに残したものを見られて極刑になったくらいだ。誰かに知られたらそうなったのに、わざわざ自分で言ってしまうのは悪手すぎる。

 わたしの話を信じてもらえても、そうでなくても、どちらの場合でも非常に危険なのだ。


 デネティア様に協力していただけたら、それはもう心強いかもしれないが、そうでなければ――……。

 ついこの間は、冗談で、死んでやり直そうかな、なんて考えたのに、いざ本当に死を意識すると、怖くてたまらない。


 そして、死ぬ以上に――失敗して、やり直すことが恐ろしい。


 この世界に生きる人々や出来事は、わたしにとって『本物』のはずなのに。どこかで、物語の登場人物やイベントという『記号』に見え始めている。わたしの五歳の誕生日パーティーやランセルテがその筆頭だ。

 きっと、もう何度か繰り返せば、この世界は、わたしの『本物』ではなくなる。長い、長い夢のような、記号と幻想になって、もう一つの世界の方が『現実』になってしまう。


 それだけは――絶対に避けたい。

 わたしが迎えたい幸せは、『本物』のここでしか叶えられないものなのだから。


「……セルニオッド様はセルニオッド様ですから。無理に他人の真似などなさらなくても、そのままでよろしいのでは?」


 わたしは、デネティア様に協力を求めるという選択肢を捨て、「僕もスフィカの真似ができたら三人で入れ替えごっこできたのに」と不満そうなセルニオッド様に声をかけた。


「――っ! そ、それもそうだよね!」


 にまにまと、わたしの言葉を実に嬉しそうに受け取るセルニオッド様。

 彼がきっと、このままわたしに興味を持ったままでいてくれれば――そして、周りへの好感度を上げれば、うまくいくはず。


 今までの失敗が、それでいいのか? と問いかけてくるけれど、今、わたしがやるべきことはそれなのだから。

 デネティア様に頼らなくとも。わたし一人でなんとかして見せる。


 わたしが、別の世界の情報を元に、わたしのために幸せになるのならば、きっと、誰にも頼らないほうがいいのだろうから。

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