4 最強の元聖女様
「最近、校門の前に人だかり出来てない?」
休み時間、教室で誰かがそんなことを言った。
「いや最近、魔法学科に転入してきた女の子に会いにくるらしい。」
「なにそれ。その女の子、どんなコなの?」
「どうも隣の国の元聖女様って話だぞ。」
俺は机に突っ伏したままぴくりと耳を動かした。
聖女様っていうのは、類まれなる魔力量持ってて人を癒したり国を守ったりするあのチートな存在のことか?
少し興味が湧いたので、その会話に耳を傾ける。
「本当にすごい力のコみたいで、昨日も校門の前で魔物との戦いで負傷した騎士団長の腕をはやして、騎士団長が五体投地状態で感謝してたって話だぜ。そのほかにも国一番の大富豪の孫の不治の病を癒したり、筆頭公爵家の当主にかけられた何世代にも渡る呪いを秒で解呪したりで、信者っぽいのが日に日に増えてるんだってさ。それにこの国の魔物が最近激減したのはあのコの結界のおかげなんだと。あの校庭にいる大銀竜も飼ってる聖獣とかいう話で・・・」
最近校庭にバカでかいオブジェがあると思っていたが、あれは聖獣だったのか。
すげえな元聖女様。姿拝んでみたいわ・・・俺は思った。
けどなんでそんな国宝みたいなコを隣の国は手放したんだ?
と思っているとやはり聞いたやつもそう思ったようで、
「なんでそのコ、この国に来たの?」
と聞き返していた。
「いや・・なんか・・噂だと・・・」
情報主が口ごもりながら言った。
「・・・貧乳だから追放されたんだってさ」
なんじゃそりゃ!!俺は思わず顔を上げてしまった。
ガン聞きしていたのを誤魔化すためにわざとらしく机の中から教科書を取り出す。
彼らの話によると、元聖女様は王太子に婚約破棄されたうえに国外追放されたらしく、貧乳のため生家でもあまり良い扱いを受けていなかったそうだ。本当かよ。
「じゃあ、いま隣の国の聖女様は・・?」
会話はさらに続く。
「噂だと元聖女の妹で、ものすごい巨乳のお色気美人らしい。王太子の婚約者にもなったそうだぞ。わがままらしいがな。」
巨乳か・・いやいや。乳と顔じゃなく能力だろっ。俺は心の中で突っ込む。まあ一瞬妄想しかけたが。
「で、元聖女様以上に凄い聖女様なのか?」
という言葉が終わるか終わらないかのタイミングで、バンっと教室のドアを凄い勢いで開けて入ってきたやつが叫んだ。
「おい大変だぞ!隣の国の王都にSSS級ランクの魔物が10体同時に現れて王城が一瞬で消滅したらしい!!」
教室がざわついた。
「それで隣の国はどうなったんだ?!」
誰かが聞く。
「それが、不思議なことに王城と聖女の生家が消滅した以外、何も被害がなかったんだそうだ。」
「それ本当の話なのか??」
教室にいた学生がみな困惑している。そりゃそうだ。意味がわからない。
「本当だよっ。さっきISK魔導通信でそう言ってたんだ!SSS級魔物も王城と聖女の生家を消滅させたら帰っていったって。今後は他国に留学中だった第4王子が王位を継ぐそうだ。」
第4王子っていったら、今の腐敗した政治体制を批判して留学って形で他国に追いやられていた、人徳があって聡明だという噂の王子のことか。
なんかえらい都合のいい話だな・・
その時、冒頭の元聖女様が国に結界をはってる話を思いだした。
まさか・・・自分のした想像を振り払おうと教科書から目を外すと、元聖女様の話で盛り上がっていた2人も顔を真っ青にしていた。
まさか・・まさか・・・
貧乳の恨み・・・・・・?
後日、魔法学科の教室に元聖女様をこっそり見に行ったが、想像以上のツルペタ貧乳ロリ娘だった。
風の噂によると、彼女が呪いを解呪した筆頭公爵家当主の長男に熱烈にアタックされ最近婚約したらしい。
ツルペタ貧乳が、長男のドストライクだったとか。マニアなやつでよかったな。
その後、隣の国はというと、第4王子が王位を継ぎ、その治世のすばらしさから国民からは賢王と呼ばれ、平和で豊かな国を築いていった。
事の真偽はわからないが、賢王の行った政策の中に貧乳差別をなくす取り組みがあったとかなかったとか。
貧乳の恨み恐るべしである。




