二日目 部屋
朝7時スマホからなるアラームの音で私は眼を覚ます、深く眠る時は人の形を解き黒い霧状になっていたが瞬時に秋山三雲の姿戻る、さて服装は昨日と同じものでいいか、身体はともかく服を構成するのは苦手なのであまりレパートリーがない、いつも似たような服装になってしまっている、着替えられればいいのだけどこの部屋の元の持ち主は男、当然タンスの中に今の私が着られるものがない、買ってくるかな、そうだ、どうせ出かけるなら…
今日の予定が決まったとき1階から朝食を知らせる母親の声が聴こえた
朝食の時間、隣に座った弟の涼の視線を感じる昨日この家の人間で彼だけ彼だけ私に対する様子がおかしかった、恐らく記憶の操作が不完全だったのだろう、こんなことは初めてだけど不安や焦りはない、むしろ胸が高なる真実を知った涼がどう行動するか
私に対して何ができるのか、何故かそんなことを期待してしまっている
朝食後…
「じゃ行ってくるね」
「あぁ、行ってらっしゃい」私の声に父が答える
「えっ何処に行くの?」涼が驚きながら聞いてくる
期待道りの反応だがそれは顔に出さず
「何ってバイトだよ、ほらあのファミレスの知ってるでしょ?」
「あぁ…いやでも」一瞬納得しかけた様子だがすぐに疑問を持ったようだ
ファミレスのバイトをしていたのは秋山昇の方で私じゃない、昇の記憶は私に書き変えられているので両親は何の疑問も抱かない
「18時くらいには帰るからね」涼に向かってそう伝えたそれまでに何かやってくれると期待をこめて
三雲は駅前のファミレスのバイトに行くと告げて家を出た、初めはいつもの事だと思ったがすぐそれはおかしいと気付く、兄ちゃんのバイト先なのに…
兄ちゃんに関する記憶があの女、三雲にすり変わっている昨日その事に気付いた俺はまず両親に話した、がまるでこっちの声が聴こえないかのようだった、朝のあいさつとか普段の会話はいつもと変わらないのに三雲への疑問になるといっさい答えない、さらには友達にもLINEや電話で確認しても同様だ、こちらの声や文章が伝わらないのだ
記憶と家族の中に突如現れて同時に兄の居場所と存在を塗り替えた三雲という女に対して俺はとまどいと怖れを抱いた、えたいの知れない存在に対して自分が何が出来るとも思えない、それでも兄を失っなった悲しみと怒りから何か行動を起こさなければいけない「・・・」俺は今三雲のいや兄の部屋の前にいる、昨日はここで写真を見て兄の事を思いだした何か調べるとしたらまずはここだろう、三雲が帰ってくるまでまだ時間はある、見慣れたはずの兄の部屋が怪物の巣のように思えた、一呼吸おいて俺はドアを開けた。




