十羽 お風呂のバストはもふっとね
「俺は、迷いの林で船になりそうな木を見て来る。皆は、ナオちゃんのお風呂へ行くといいだろう」
ドクターマシロが、ダンジョンになっている迷いの林を連れて行ってくれると話はついた。
「私は、勇者、佐助様とご一緒いたしますね」
ひっつき虫だな。女神ヒナギクは。
「方向音痴だろう。ヒナギク殿だと必ず迷うよ」
「ええん。酷い」
ドクターマシロに突っつかれて泣くのか。
「ヒナギクくんは、この迷いの林だけはダメなんだよ。帰って来れなくなる」
「えええん。私のうさうさウインドウも頼りにならなくて」
ユウキくんにも突っつかれて泣くのか。
「俺には、腹羅針盤がある」
「いいですか、ダンジョンなんですって」
俺の自慢の方向感覚だったが、真血流堕アナがお化けみたいに迫って来て冷やかす。
「あたしは、一人で行かないもの」
「自分が一緒に行きますからね」
ナオちゃんは、やはりドクターマシロと気が合うのだね。
「ナオちゃんのお風呂に重大な秘密があるって、何だろうね」
「佐助先輩。覗いたらダメですよ」
真血流堕アナ、純な俺をからかわないでくれよ。
「しないって。既にビキニの人とか、もうごちそうさまですよ」
そう言えば、真血流堕アナもシャワーを浴びていないな。
「うん。真血流堕アナも行っておいでよ。汗を流したいだろう?」
「えーと。えーと……。あたしのお風呂には、真血流堕さまは、ちょっと……」
「ナオちゃんが困っているよ。皆、真血流堕アナはダメなのかな? 俺の男湯は後でいいよ」
頼んだが、皆、首を縦に振らない。
「いや、これは、ナオちゃんの問題じゃないんだ。我々、ガラパパパ諸島の女性なら同じ感想を抱く重要な話だ」
ドクターマシロが両手を開いて、力説する。ふうん。何だろう。
「分かりました。男湯って、使っていらっしゃいますか?」
真血流堕アナも大胆になったな。
「あれ? 真血流堕アナ。ユウキくんは、男湯でしょう? ご一緒になるのかい」
「いつからボクが男湯なの! 確かに小さいけれども、二つのふくらみがありますよ。ぷんぷんぷんぷんぷんだからね」
お、女の子なのね。
「ごめんなさい。叩いてもいいので、勘弁してください」
本当にぽかぽかとユウキ=ホトくんに叩かれた。俺は痛くなかったけれども、ユウキくんは傷付いたよね。ごめんなさい。
「そう言えば、ドクターマシロの機器に、マル秘データが入っていたな。確か……。確か、皆のビキニサイズ表だったと思うのだけれども」
「それ、開けちゃうかなー!」
「え?」
時既に遅し。せっかくだから、プロジェクターに投影してみた。
Aカップ:ミコ=ネザーランドさん。
Bカップ:ユウキ=ホトくん。
Cカップ:ナオ=ライオンラビちゃん。
Dカップ:ドクターマシロ=ダッチ。
Eカップ:女神ヒナギク=ホーランドロップ。
真血流堕アナは不明。
「これ以上は、ガラパパパ諸島沖に浮かぶことになるので、控えた方がいいかな?」
「脱いだら、一緒だよ」
Bカップのユウキくんが主張する。
「お風呂に来ないのは、ミコさんがAカップで一番小さいからでは? 恥ずかしいと思っているのでしょうか」
「真血流堕様、ダメですわ、そんな」
Eカップの女神ヒナギクには言われたくないな。
「なかなか神秘的で魅力的だと思うよ。どうも灯台から離れられないらしいから、そっちの理由だよ」
真血流堕アナと俺の推測は、どうも皆の抱えている悩みの本質と違うらしい。女神ヒナギクがCHUを迫る訳でもないしな。事情があるのなら、よそ者の俺達がどうこう言えたものではない。
◇◇◇
とにかく、俺は、船の図面をこの基地で大方引いて行き、頭に入れて、迷いの林でいい木を探すことにした。
「真血流堕アナ、俺の金魚の糞じゃないんだから、一人で男湯に入っておいでよ。さっぱりするよ。あの二ツ山からして、広くて気持ちがいいお風呂だと思う」
「でも、佐助先輩」
表情を見て、これは強情の域に入っていると分かる。肩を竦めて許可することにした。
「分かった。ただし、迷うなよ。腹羅針盤を持っていないんだろう? 真血流堕アナ」
素直に首肯したから、言うことないな。
「では、お風呂に入りに行って来ます。自分らは、日が沈む前には基地へ戻るよ。佐助殿、気を付けて」
「おう。ごゆっくり」
◇◇◇
皆が迷いの林へ入って、お風呂へ向かうのを見送った。真血流堕アナと二人っきりになるのも久し振りだ。
「佐助先輩」
「おお、何だか賑やかだったな。パラダイスは、孤独にさせないのな」
大きく息を吸う。綺麗な空気のところだ。基地のある南の地も海に近いのだろう。俺の腹羅針盤は、潮の香りも逃さない。
「では、大方の設計をするか」
俺は、暫くここで、七人乗れる船を設計していた。ガラパパパ諸島から東京へ行く船は難しいのだろうか? 近くに寄港できれば、食料なども揃えながら航海できるのだが。海図によれば、七つの島が目立つのみだ。
「うーむ。これは、やっつけ仕事とはいかないぞ」
「佐助先輩。先ずは、実際に林を歩いては如何でしょうか?」
苦悶する俺へのアドバイスか。独りで影踏みしているようなものだから、気分一新だ。
「それもそうだな」
さて、命の水を持って、歩き出そうと真血流堕アナを促す。歩きながら、造船にいい木を探せばいい。迷いの林へ足を入れる。
「佐助先輩。私、キノコンのパラダイス定食で記憶があやふやなのですが、何かしませんでしたか?」
「残念ワンピースに着替えただけだろう」
女神ヒナギクとの実況は上手く行っていたのだから、記憶障害はないのだろう。安心したよ。思わず頭をくしゃりと撫でてやりたくなったが、節度ある行動をしなければならない。
「こ! これは、ユウキ=ホトくんが家庭科で縫ったと言っていましたよ」
真血流堕アナは、スカートの裾をつまんで、ちらちらと見ていた。
「こんな島に家庭科の授業があるのか。……ん? そう言えば、先割れスプーンが並べられたじゃないか。ガラパパパ諸島はどうなっているのだ?」
「先割れスプーンとは、あのスプーンにフォークの機能をつけたようなカトラリーですか?」
真血流堕アナは、ちょっと若いのだろう。給食に出て来なかったのかな。
「懐かしき給食で、出会い、別れたカトラリーだよ。今は知らない子も多いだろうな」
「私は、小学校から私立の慶栄で、お弁当でした。給食には夢が詰まっていそうですね」
そうだった。三神家ならば、私立に行くだろうよ。しかも、慶栄とは!
「それに縁日ストローも懐かしかったが、ここにある理由が分からないな」
あれに痺れがあったのだ。口にしなくて、正解だったよ。ここに暮らしている皆は、大丈夫なようだ。
「もう少し、奥へ行こうか」
「はい」
◇◇◇
暫く、ささくれのように複雑な道を行った。
段々おかしくなる。草が高い。これは道ではないところへ入ってしまった。やらかした。迷子なんだと真血流堕アナは気が付いているだろうな。
「はあ、はあ……。真血流堕アナ、水は足りているか?」
「大丈夫ですよ」
お互いに林というよりはジャングルに紛れたかのようだった。木を四つ書いてジャングルってか。体力だけは残さないと。
ついつい、下を向いて歩いていたが、大きな影が落ちて来たので、上を見上げた。
「あれは、随分と大きな建物に見えるが……?」
真血流堕アナと目を合わせる。
「果たして、中はどうなっているのかな。入って調査しよう」
「よーし! おつかれーしょん!」




