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悪魔の花嫁と蒼き死神  作者: 奏 舞音


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第40話 解き放たれる闇

「何やら、面白そうな話をしているね」


 まるで舞踏会にでもやってきたような優雅さで、ブライアンは美しく笑みを浮かべた。ブライアンの登場に、ジルフォードがしまった、と思った時には遅かった。王座の背後から現れたブライアン、王座より下の広間にいたジルフォード、どちらがレイモンドに近いかは言うまでもない。

「さて、お前はもう十分楽しんだだろう? 次は僕の番だ」

 貴公子然とした穏やかな微笑みは、レイモンドに用済みだと告げていた。

「何を……ぐぁっ!」

 ブライアンに意識を向けていたレイモンドは気付かなかった、横から迫る騎士の刃に。無表情でレイモンドの両足を切り付けたのは、ブライアンの近衛騎士だ。逃げないように足を傷つけたということは、今ここでレイモンドを殺すつもりはないらしい。しかし、だからといって救われる訳ではない。

「……あなたが、私と…兄の代わりにこの血濡れた国に復讐を……!!」

 強い復讐心をジルフォードに託し、レイモンドは崩れ落ちる。

「レイモンド!」

 ジルフォードは剣を構えて玉座に近づくが、レイモンドを盾にとられ、動けなくなる。

「こいつのことを思うなら、私にそれ以上近づかないでくれ。そうでなければ、殺気立ったあなたとはゆっくりと話ができないだろう?」

 ブライアンはにっこりと微笑み、必死で抵抗しているレイモンドを押さえつける。その間にも、レイモンドの両足からは血が流れ出ている。このまま放置すれば失血死もあり得る。レイモンドの血、そして未だ意識を失っているカルロスの血によって玉座の下は真っ赤に染まっていた。

「俺には話などない! 今すぐにカルロス様とレイモンドを解放しろ。でなければ、俺も強硬手段に出るぞ」

「へえ。今、あなたの大切な宝石も、僕の手中にあるとしても?」

 ブライアンは、自信満々の笑みでジルフォードに問う。絶対にジルフォードが手を出せないと確信している。その様子からして、エレノアをこの城に入れるな、というジルフォードの命令は意味をなさなかったらしい。

(エレノア、俺がこいつを黙らせるまで無事でいてくれよ)

 彼女を守るために再び剣をとったのだ。

 もう、大切なものを失う訳にはいかない。

 命を盾にとられて、動けないのはもうまっぴらだ。


「それがどうした? 俺がビビるとでも思ったのか? エレノアはああ見えて強い。卑怯な真似しねぇと威張れないお前よりもな」

「何だとっ……! 僕は父を超えるのだ。皇帝である父を欺き、皇帝暗殺を謀った賊は私の手で捕縛する。そうして、私は帝国を救った英雄に、名実ともに皇帝となる……すべては私の思い通りに進んでいる。私を楽しませる余興として、死神と宝石を織り交ぜてやったんだ。こんな一大イベントに招待してもらったことに感謝するべきだろう」

 ジルフォードの挑発に怒りの感情を一瞬のぞかせたが、ブライアンはすぐに冷静になった。自分の思い通りに事が進んでいることに、心配することは何もないと思ったのだろう。

 しかし、ジルフォードはそうは思わない。エレノアはただのか弱い皇女ではない。

 ブライアンは知らないのだ、エレノアがどんなに強い心を持っているのかを。

 ジルフォードの心さえもあたためてくれた彼女の想いの強さと優しさを。

 人は、そのあたたかな光に触れて、動かされる。

 今、自分がここにいるように。


「あぁ、感謝するよ。俺を招待してくれたおかげで、そんな馬鹿げた計画を止められる」

 ジルフォードが大剣をかまえ、反撃に出ようとした時だった。玉座の血の塊、いや、カルロスの身体から突如黒い闇が発生したのは。

(このタイミングで悪魔までお出ましか……)

 おそらくは、カルロスの血が流れたことと、憎悪に染まったレイモンドの血が悪魔に影響したのだ。

 かつて死神と呼ばれた自分でも、本物の悪魔と対峙するのは初めてだった。だが、たとえ悪魔相手だとしても、守り切ってみせる。

 決意を固め、ジルフォードは謁見の間を飲み込まんとする闇と対峙した。


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