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悪魔の花嫁と蒼き死神  作者: 奏 舞音


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第18話 友人の決断


 緊急事態だと〈鉄の城〉に呼び出されたテッドは、目の前の光景に目を疑った。

 城内で、【青銅】の騎士が一人死んでいる。それも、拷問されて殺されている。鉄製の門に背を預け、あちこち剣で斬られて騎士服は赤黒く染まっていた。

 そして、そこには血だまりができている。失血死だろう。

 嫌な予感を覚えながら、テッドは尋ねる。


「この男は?」

「〈宝石箱〉の警備をしていた【青銅】の一人、シュガレス=ノートンだ。白昼堂々、見せしめのように拷問され、殺されている」

 答えたのは、テッドの上官であるホルワイズだ。

 その内容に、テッドは自分の予感が的中したことを知った。

 現在、【黄金】の騎士たちを総動員して宝石を探している。しかし、一向に見つからない。

 その居場所も、見つからない理由も知っているテッドは、内心冷や汗をかく。

 もしエレノアを一時的にでも匿い、ジルフォードに引き渡したことが知られれば、テッドもこのシュガレスと同じ目に遭うだろう。

「我々以外に、宝石の件が漏れた可能性が高い。だが、この男を拷問しても得られる情報はなかっただろう」

 ホルワイズが厳しい顔で言った。内密に探す、といっても限度がある。【黄金】の騎士が動き、城内がピリピリしていれば誰でも何かあったと分かるだろう。

 しかし、ほとんどの者が皇女の存在を知らない。

 騎士たちが何を探しているのか、分かるはずもない。

 もし宝石が消えたと言っても、誰も皇女のことだとは思わないだろう。

 しかし、シュガレスを殺した人物は別だ。警備の騎士を拷問してまで、その居場所を探ろうとした。

 それも、誰に見られても問題ないと言わんばかりの時間と場所で。

 そんなことができる人物は、テッドは二人しか知らない。

 カザーリオ帝国皇帝カルロスと、その息子ブライアン。

 そして、今宝探しに参加したがる人間といえば、一人だけだ。


「第一皇子が、ついに動き出したのですね」

 ブライアンは、皇帝カルロスに憧れてか、残虐行為を繰り返していた。

 軍事遠征で訪れた街や国でも、一般人の血も流し、負けを認めた相手に対しても容赦なく手を下す。しかしそうしたブライアンの行動に、皇帝カルロスは無関心だった。ブライアンは、認められない不満をさらに弱者へと向けていった。

 そして、その劣等感と嫉妬を抱く相手は決まって妹のエレノアだった。

 しかし、ブライアンはエレノアに手出しできない。だからこそ、嫉妬心や憎悪がブライアンの胸の内で膨らみ続けた。

 何度か、ブライアンが〈宝石箱〉に行こうとしていたことがあったが、その度にカルロスの怒りを買っていた。それも、憎む原因のひとつなのだろう。

 厳重な警備で大切に守られていた、憎いエレノアが外へ出たのだ。ブライアンが騎士を殺してまでその動向を知りたい理由はひとつしかない。

 エレノアを殺すためだ。


「どんな手を使ってもいい。ブライアン殿下よりも先に宝石を見つけるんだ」

 ホルワイズの言葉に頷き、テッドはその場を辞した。

 ジルフォードがいれば、エレノアが殺されることはないだろう。しかし、万が一、ということがある。【黄金】の騎士が見つけた場合は問題ないが、もしブライアン直属の騎士に見つかればエレノアの命の保証はできない。

 そして、エレノアを匿っていたジルフォードも、今度こそ皇帝に殺されるだろう。

 もしそうなれば、エレノアには悪いがテッドは彼女を皇帝に引き渡すつもりだった。

 このままでは、友人のジルフォードがようやく手にした平穏が失われる。

 テッドはジルフォード宛ての手紙を書くことにした。宝石捜索の指揮を任せられているため、自由に身動きが取れない。ジルフォードに会って状況を詳しく説明することはできない。しかし、連絡する方法がない訳ではない。


「ベロニカ、この手紙をジルに届けてくれ」


 甘い微笑みを浮かべて、テッドはベロニカに手紙を持たせた。

 どうか無事にジルフォードに届くよう、心の中で祈りながら、テッドは待機させていた捜索部隊の前に出て行った。


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