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レビューのたしなみ

作者: うそつき

 モンチッチという人形をご存知でしょうか。赤ちゃんとサルを足したような人形で、それを少し前にいただきました。人形を買うことは今までなかったためどうしてよいかわからず、とりあえず机の上に放置してまったく気にかけていなかったのです。最近ふと視界に入ったのをきっかけに意識し始め、知らぬうちに愛でるようになりました。なんとなく頭をなでたり握手してみたり……。今日は背中をさすってあげました。なんだか自分が心配。そんなモンチッチは、私がこうして書いている目の前でおしゃぶりを咥えたままこちらをじっと見て座っています。


 今日は帰りに本屋さんに寄り道してきました。前は小説が読みたければ小説コーナーを、実用書が読みたければビジネス・専門書コーナーをなんとなくぐるりと回ってから、買うか立ち読みするかしていました。でもなかなかそうもできなくなってきたので、あらかじめ気になるジャンルや本そのものについて通販サイトで調べてから物色するようになりました。


 そうするとですね、やっぱり見てしまうんですよ、レビューを。

 絶賛されてようと酷評されてようと、見てしまうんです。

 そして勝手に私はイライラしています。


 「おもしろかったです」とかそれくらいならまったく問題ないと思います。

 ときどき変わった方がいらっしゃるんです。たとえですけれど、「作者のナイーヴな語りには鳥のさえずりを彷彿とさせる心地よさが……」みたいなものを長々と書いているのを見かけることがあります。


 いや、わからないです。何もわからないです。気持ちはわかりますがあくまでレビューなんですから、そこに凝った比喩表現はいらないと思います。読んだ人がわかればそれでいいと思うし、もしそういうことが書きたい気分になったのなら自分の日記かこういう小説投稿サイトに自由に書けばいいと思います。

 だいたいなんですか、鳥のさえずりって。もし鳥嫌いの人ならばただの騒音ということになるでしょう。せめてもう少しわかりやすい比喩にしてほしいです。(繰り返しますが私がたとえ話として作ったものです。実在するレビューからの引用ではありません。)


 その点、このサイトの感想はいいですよね。趣向を凝らした表現で書かれていてもすんなり受け止められます。わずかでも作家に興味を持っている人たちがメインユーザーだと私は解釈しているし、そういった方々が自由に書ける場でもありますから。人を傷つけるだけのものでないかぎり、各々が好きに書いていいのではないかなと思っています。


 ただし通販サイトのレビューには、ひどい書き込みもたくさんあります。

 本でいうなら、「買って損した」「この作者は頭おかしい」「二度と本を書くな」などと無遠慮に書く人がたくさんいます。

 過去から現在まで発行された書籍の量を考えれば、当然ながらあたりはずれはあります。中にはつまらないと思うものもあるし、内容によっては受け入れられないものもあるかもしれません。


 でもうるさいです。黙っていてください。

 読書は楽しいかもしれませんが、ものによっては苦行にもなります。時間はかかるし、前提知識がなければ全然進まないものもあるし。何も得られない、おもしろさがわからない―― 損をしたと感じるということは、自分の求めていたものとは違うか理解できていないかのどちらかだと思います。どちらにせよ子どもじみていて見たくもありません。

 

 それだけならまだいいほうで、作者の人格や創作活動の否定は傲慢そのものです。ただただ気分が悪くなります。

 よほどの人格者なのでしょうね。あなたが書いてください。そう言いたくなります。

 

 私はレビューを書いたことがないのでわかりませんが、書く人はどういう心境なのでしょうね。

 仮に「じゃあお前がレビュー書いてみろよ」と言われても、つらつらと書いてきた通りなので場違いな文体や不愉快なだけの悪口を残す人の気持ちがよくわかりません。

 大前提として、本の読者がどう思うかは自由です。おもしろいならそれでよし。二度と読みたくないなら、読まなければいいだけです。自分がどんな場所にどういう内容のことを書いているかをもう少し考えてほしいなと思ってしまいます。目上の人に敬語を使うのと同じくらい普通のことではないでしょうか。


 それでも「絶対書くな!」と私には強く言うことができないんです。

 今年の夏に私はホラー小説を読んだことがないと思い、通販サイトでいろいろと眺めていました。すると関連商品でホラー関連のDVDが紹介されていたので、興味本位で見てみました。そのレビュー欄には「人からパクッた話なうえに、話の組み立てが悪い。終始ニヤニヤしていて恐怖が伝わらない」というような似た書き込みがたくさんしてあり、思わずにこちらがニヤけてしまいました。もしかすると酷評を楽しみにしている人もいるのかもしれないと気付いてしまったのです。

 レビュー欄に好き勝手書いてガス抜きができるのなら、まあ、それでもいいのかもしれません。ただしせっかく書くなら、嘘でもいいからおもしろいものにしてもらえるとうれしいなと思います。しょうもない語りでも、悪口でも。




――――――――――――

 

 私の持っているモンチッチは、レビュー欄でなんと書かれているのか見てみました。「まるで孫」ということで星五つでした。私も孫を大切に愛でていこうと思います。



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― 新着の感想 ―
[良い点] とても参考になりました。 レビューを書く機会があれば是非気をつけさせて頂きたいと思います。 [一言] 今作は 正にキュビズム的! エクセレントでスウィーート克つ、コンパクトでプレジョニ…
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