アーク灯
私は何十年と立ち続け、往来を行く人々を見届けてきた。
私の下で告白をしたり、三日後に別れたり。
大きなジュラルミンケースをもった男が捕まったり。
またあるときは、どうして繋がったのか分からない、奇跡としかいいようのない偶然だったり。
しかし、私は忘れない。
足元で血を流して倒れた人々を。
いさかいの流れで女性が刺し殺されたり、大金を持ち出して逃げた男が撃ち殺されたりした事を。
私には、血にまみれた空間と薄汚れた空気との間をつなぐ役目があるから仕方がないのだが、どうしてもいたたまれない。
いっそうのこと、私が崩れ落ちればよいのだ、と何度おもった事か。
でも、悲劇は繰り返される。
代わりはいくらでもいるのだから。