切ない恋 〜中学生でも恋します〜
楽しんでいただけたら嬉しいです。
僕はあの頃まだ十五歳だった。
そう、あの時だった。中学一年になったばかりで、父の転勤が決まった。学校にようやく馴染んできた、二学期の途中、そんな時であった。地元広島は、人口はそれほど多くないため、こじんまりとしたそんな所が好きだった。
「宙!」
母さんが呼んでいる。おそらく、食事の時間だろう。
そう、僕は宇宙の宙と書いて"そら"、松田宙だ。今はもう高校一年生なんだけども、僕の中学校の切ない恋をここに収めたい。
〜夏休み〜
ある、暑い夏休みの日であった。僕は部屋でせっせと学校の勉強をしていた。
そんなんところに、父さんが申し訳なさそうに入って来た。
「宙、母さんと話し合ったんだけどな…父さん、東京に転勤になったんだ。それで、もし宙がよければ、母さんと一緒に来てほしいんだ」
僕には、二つの選択肢があった。一つは、おばあちゃんの家に住むと言うこと。でも、結局学校は転校しないといけないのに加えて、広島でもかなりの田舎に住んでいる。
もう一つは、父さんと東京に行くことであった。便利で、みんなが行きたがっている東京だ。こんな経験はなかなかできないのも、百も承知だった。
「父さん、いきなりだから、ちょっと時間もらえる?」
僕は何をすればいいかわからなかった。父さんは東京のいいところをたくさん挙げたと思うと、部屋を去って行った。
スマホを買ってもらえる。僕は、柄系の携帯と、古いタブレットをもらって使っていたけど、友達も持っているスマホには興味があった。
勉強の方も、良い環境らしい。今は公立にいっているけど、父さんの会社が私立でも学費を出してもらえるそうだ。今の所、別に勉強には困っていない。あと、制服がない私立には惹かれる。
そんなこんなで、僕の夏休みは過ぎていった。そして、夏休みの最終日三日前に父さんは再び聞いて来た。
「宙?決まったか?一緒に来たか?」
まだ決まっていなかった。
「母さんと残ることはできないの?」
そう、そんな子供っぽい質問しかできなかった。
「そうだな、母さんにはついてきてほしんだ。あとな、宙にとっても絶対損はさせないぞ」
父さんは僕にもきてほしいらしかった。それもそうだ。僕の反抗期はまだ、父さんとも良く話したり、勉強を教えてもらうこともあったんだ。
そして、僕はついに決めた。多少投げやりだったけど、言ったんだ。
「父さん!僕、行くよ。行きたい」
「本当か!?」
父さんはとても嬉しそうに微笑んで、スキップしながら母さんの元に行ってしまった。あの時の、父さんの笑顔は忘れられない思い出だ。
その後に、編入試験もあったが、難なく合格してしまった。
〜二学期〜
そして、夏休みも終わってしまった。宿題という宿題は全てこなしたし、多少の予習復習もした。父さんはまだいつ転校するかは決まっていないと行っていたため、僕は普通に学校にも通った。
久しぶりの学校は嬉しかった。部活も僕が入っていたのはサッカー部。うまくはなかったけど、長距離がそこそこできたからか、ベンチには入れてもらえていた。そして、もちろん朝練はあった。
「宙!おはよう」
この声は、ソフト部の佐藤ゆかりだ。彼女は、細くすらっとしていて、肌が白い。後、笑った時にできるえくぼが僕は好きだった。
「さ、佐藤、おはよう」
彼女は誰にでも馴れ馴れしく、男子としては嬉しい限りだけど、流石にゆかりとは呼び返せなかった。そう、彼女はとても可愛かった。僕は、167センチ程度だったのに対して、小柄な彼女は150センチぐらい、他の男子にも大人気だった。
「佐藤って可愛いよな」
「胸でかいしな」
「お前、胸ばっかり見てんじゃねーよ」
「いいじゃねか」
こんな会話がチームメイトからよく聞こえたものだった。
そんな、佐藤が挨拶してくれるようになったのは、中学校に入ってすぐのことだった。学校には、合計6クラスあり、佐藤は同じクラスだった。そして、僕らは学級委員長だった。
そうだ、その時のことをちょっと話そう。中学校に入った初日だった。担任の鈴木先生が、自己紹介を終えた後に聞いた言葉であった。
「誰か学級委員長になりたい生徒はいるか?」
「はい」
佐藤ゆかりが手を挙げた。すらっと、小さいながらも、高く上がったのを覚えている。皆は彼女に注目した。
「えっと…」
「はい、私は佐藤ゆかりです。この坂小学校からきました」
ちなみに、僕の行っていた中学校は坂の上中学校で、この中学校には、三つの学校から生徒が集まった。一つは、彼女のきた、この坂小学校、もう一つは、その坂小学校。そして、僕が通っていたのは、あの坂小学校であった。
鈴木先生は男子生徒に聞いた。
「それじゃあ、佐藤さんにお願いしようかな。それじゃあ、男子の方は?」
誰も手を挙げなかった。クラスには同じ小学校にいた目立ちたがり屋の生徒もいたのに、手を挙げなかった。
そこで僕は手を挙げた。まず、早く終わらせたかったこともあるが、せっかく中学生なんだからという思い出、勇気を出した。
「はい」
鈴木先生は嬉しそうに僕を見た。
「君は…」
「僕は、松田宙です。あの坂小学校からきました」
「ありがとう。じゃあ、佐藤さんと、松田くんに学級委員長をお願いしよう」
これが、僕らの出会いであった。
それからも、一緒に度々仕事もすることがあったため、友達というよりは、仕事仲間に近い関係だったんだ。
好きというよりも、好きになることに諦めていたんじゃないのかな。だって、見た目からして、絶対に彼氏いそうだし、何人もいるって噂もあったしな。
それじゃあ、二学期に戻ろう。
朝練を終えると、久しぶりの教室に向かった。学級委員長は半年間らしく、二学期の中旬までだ。
「起立。礼。着席」
僕の二学期初めての言葉だった。
すると、すぐ後に鈴木先生は話し始めた。
「それじゃあ、まず、みんなおかえり。そして、今学期も頑張ろう。ってことなんだけど、もう二つ重要なお知らせがあるんだ」
僕はもしかしたら、僕の転校のことじゃないのかとドキドキした。
すると、教室の扉が開いた。皆は新入生じゃないのかと騒ついた。
「皆も気づいているかもしれないけど、新入生だ。みんな仲良くしてくださいね」
教室に入ってきたのは男子生徒であった。しかもとてもかっこよかったんだ。女子がざわつく様子からもそのかっこよさはお墨付きだろう。
彼は自己紹介を始めた。
「こんにちは、私は足利明です。東京の私立中学校からきました。サッカーやってました。仲良くしてください」
普通の自己紹介だったが、僕には驚きであった。東京。私立。サッカー。そして、イケメン。完璧な要素が全て揃っている。これで頭がいいときたら困るんだが、すぐにわかったけど、天才だった。
そして、鈴木先生は足利に佐藤の隣の席に座らせた。
佐藤は足利に微笑みながら挨拶をしていた。嫉妬ではなかったけど、なにか、虚しかった。
「そして、二つ目のお知らせは、松田くんの転校だ。偶然かもしれないが、彼は東京の私立中学校に行くことになっていている。そこでなんだが、学級委員長を残りの数ヶ月松田くんの代わりにできる男子はいるか?」
僕はとっさに、席を立った。
「でも、先生。転校するまでは、できます」
しかし、鈴木先生は僕がいうことをわかっていたのかのような顔をした。
「だけどね、今このキリがいい時がいいと思うんだ。後、佐藤さんのこともあるし、今のうちの方がね」
すると、足利が手を挙げた。
「先生。転校早々なんですがいいですか、私がやって。一様、前の学校でもやってましたし」
すると、鈴木先生は驚きながらも、微笑んで言った。
「いいとも。じゃあ、女子の学級委員長の佐藤さんと頑張ってね」
僕は、悲しかった。この学期の初日からだった。佐藤さんのことが好きであったか訳ではないと思うが、どこかから悲しみが湧いてきた。
しかし、これで終わらなかったんだ。
サッカー部へ行くと、またも足利を目にした。
顧問が足利に質問をしていた。
「どれぐらい、サッカーをしていたんだ?」
足利は自信満々に言った。
「幼稚園のころからだからです」
顧問の佐々木先生は質問を続けた。
「それでポジションはどこだったんだ?」
足利は少し考えるようにして言った。
「幼稚園の頃はずっとストライカーだったのですが、守ってみたいとゴールキーパー、ディフェンダーもしました。そして、前の学校ではミッドフィールダーをやってましたが、試合の時は、空いた場所に入れてもらえましたね」
顧問は多少驚いたようにして、三年生の先輩たち、ストライカーの工藤先輩のゴールキーパー高野先輩を呼んだ。
「じゃあ、試して見てもいいかな?工藤!高野!」
そして、工藤先輩に対して、足利はゴールキーパーになった。
他の部活の生徒も見にきてて、その中に佐藤もいた。
そして、工藤先輩は5回PKの状態からのシュートをした。そして、驚くべきか、4回防いだのだった。でも、これで終わらなかった。
次に、高野先輩がゴールキーパーを足利はPKの位置についた。こちらも、5回、そして、3回決めてしまった。
僕もこれをしたのを覚えているが、ゴールは1回しか、シュートは一回も入らなかったのだ。
僕は自分情けなさに失望して、それを目を輝かせて見ていた佐藤を見て、なぜか落胆した。
〜次の日〜
そして、次の日、朝練に行くと、足利がいた。
そして、佐藤がやってきた。
「おはよう、足利君」
足利は戸惑い気味に返した。
「えっと…」
佐藤は微笑みながら言った。
「ゆかりだよ。えっと、明って呼んでいいかな?」
足利は思い出したように言った。
「おはよう、ゆかり。別にかまわないよ」
そんな光景を僕は見ていることしかできなかった。
そして、そのまま時は過ぎていき、父さんは詳しい日にちを僕に教えてくれた。
「宙、父さんは明日から行くことに急になったんだけどな、母さんと宙は十月の中旬に来ることになったぞ。宙、東京だぞ!」
僕はなんだがどうでも良くなった。別に佐藤のことを好きでもなかったし、たまに考えちゃうぐらいだったと思ってた。その頃は何が好きで何が嫌いなのかも知らなかったんだ。
〜引越しの日〜
そして、あっという間にその時は来たんだった。最終日ぐらい学校に行こうと思っていたけども、引越しの手伝いのために行くのを諦めた。
そして、学校が終わる時間になると、家のチャイムが鳴った。
「ピンポーン!」
「すいません、松田君と同じクラスの佐藤なのですが…」
僕は二階から佐藤と足利を見た。
「宙!」
僕は母さんに呼ばれて、すぐに一階に降りた。
外へ出ると、足利に大きい袋を渡された。
「これクラスからね、今日本当は渡す予定だったんだけど、来なかったからな」
僕は少しぼっとしていたけど、すぐにお礼を言った。
「あ、ありがとう。みんなにも言っておいて」
そして、手を振って二人はさっていった。
僕は家に戻って、片付けをしようと思ったら、母さんが話して来た。
「何もらったの?ちゃんとお礼言った?」
「言ったよ」
僕は子供扱いされるのが嫌だった。
「それじゃあ、この前買ったあれ、あげた?」
僕は思い出した。僕と母さんはみんなにお返しにと、お菓子を買ったんだ。そんなことを頭に忘れていたことを思い出して、僕は部屋に戻ってお菓子を手に取ると、走って、家を出た。
すると、二人の人影が見えた。僕は、足利と佐藤だと思って走って言ったのを覚えている。
そして、その二人だった。
僕がそこで目にしたのは二人が手をつないでいる姿であった。俗にいう、恋人繋ぎだっただろうか。
僕はもう、嫌になった。もちろん、父さんを恨むこともできないし、おばあちゃんの家に行っても結局は転校だ。だけど、虚しさ、悲しさ、そして淋しさがどっとと僕に押し寄せた。
そのお菓子はどうしたんたっけ。それも覚えてない。そこに落としたのか。捨てたのか。忘れたのか。だけど、一つ覚えているのは、泣いている自分自身だった。
家に帰ると、母さんは友達と離れて悲しんでいるのだと思い込んでいたようで、僕をそっとほっておいてくれた。僕はそのあとすぐに寝て、朝に起きたら、片付けが済んでいた。
そして、引越し。そう、新幹線に乗って東京に出発!そんなハイテンションではなかったにしろ、何かから抜け出せる、そんなおもいだった。
〜新幹線の中で〜
僕はクラスの人からもらった袋をここで始めて開けた。中には、小さな本のようなもの、そして、手作りっぽいお菓子。そして、みんなであるとき撮った写真が入っていた。
もちろん、まずは本から読み始めようと、取り出すとそこには、四組から松田へと書かれていたのを覚えている。
その本には、クラスのみんなからのメッセージが入っていた。どれも学級委員長として、サッカー部として、なんていうコメントが多かった。先生からも、学級委員長としての、お礼なんていうのは誇りに思えた。
しかし、一人とても長いメッセージを書いた人物がいた。それはもちろん佐藤ゆかりからだった。
「宙へ
学級委員長楽しかったね。色々思い出できたよ。男子が誰もしたがらなかったあの委員長の役目をすっと受けたのはかっこよかったよ。
いつもサッカー部でも、朝練から頑張ってて、私見てたんだよ!勉強もできるし、クラスにも宙の事好きだった子たくさんいたこと知ってた?
私二学期の始め、転校のこと聞いてすごい驚いたんだから。同じ学級委員長じゃなくなって、宙と話すきっかけがなくなっちゃってね…だから、明がきてから一緒に話すようになったんだ。実はね、私、明と付き合ってるの。そんなことはどうでもいいって?これ私初めての彼氏なんだよ!
この内容は誰にも見られてないから安心してね。私がこれを受けよったからこんなことができるのよ。後、私が手作りで焼いたクッキーが入ってるからよかったら食べて。
ゆかりより」
僕はまた涙をポロポロと流した。多分、悲しかったんだ。そして、今なら言える。
僕はゆかり、佐藤ゆかりが好きだったんだ。
〜十月の下旬〜
僕は引っ越しを終えて多少落ち着いてから、学校に行くことになった。
それは十月の下旬のことだった。
学校へ行ってみると、小さな校舎ではあったものの整備された様子は一目を置けるものだった。まさにこれぞ私立といった見た目であった。
僕は心が弾むような思いで私服で登校し、そして先生に連れられ教室に着いた。この学校にはひと学年ひとクラスまでしか受け付けない定員制らしく、たまたま一人減ったために、僕が転校できるのだと聞いていた。
そんな特別優遇感がある学校の教室に入った。誰もが勉強をしていた。僕の入ったのをみると、皆揃って手を止め片付けた。すると、先生は僕の自己紹介を始めた。
「それじゃあ、今日から転校生がいるぞ。自己紹介を」
僕は今までにこのような経験はしたことがないため、どうすれば良いか戸惑ったんだ。でも、その時、足利の自己紹介を思い出した。
「こんにちは、僕は松田宙です。広島の公立中学校からきました。サッカーやってました。仲良くしてください」
まさに、そのままのテンプレートを使った、平凡な感じだった。
僕はその後、席に着くと、普通に授業が始まった。
確かに先生の説明はわかりやすく、塾に行っていた時のような詳しい説明であった。
そして、あっという間に初日が終わった。あれってと思ったのは、部活が存在しなかったことだった。担任の先生に確認してみると、サッカーのクラブは土日に学校にあるらしいが、平日は授業が終わると、それっきりと言われた。
そして、僕は電車に乗って家に帰った。
母さんはもちろん学校のことを聞いてきた。
「宙?学校どうだった?」
しかし、どうって言われてもという終えなかった。そう、ただ学校に行っただけなんだから。部活もない、特別な役割もない、ただの学校。それは確かに学校の本義だとは思ったけど、やっぱり人との関わりを淋しく思っていた僕は欲していた。
そんな学校生活は流れるように過ぎて行った。
その中で僕の生活は大きく変わっていた。母さんと父さんにはサッカークラブに入るように言われたが、学校に行く気分にならなかった。学校だけじゃない、外にも行きたくなかった。
スマホを買ってもらったものの、前の学校には特につながりもない。そう、本当の孤独を感じていたのはあの頃だったのかな。
そうそう、あの頃、ゲームにハマり始めたんだっけ?僕は家に帰れば、ゲーム、宿題をすませて、ゲーム、外にも出ず、運動もせず、ゲームをしていた。母さんと父さんには心配をかけたくなかったから、隠れて、トイレだったり、二人がいないときなんかにゲームをしていた。
人によってはこういうのを暗黒時代とかっていうのかな?
それでも、勉強は頑張っていた。人数が少ないだけもあり、競争という意識がみんな強かったんだ。それが、僕を勉強しろって命令しているようでもあったかな。
学校に馴染んでくると、
その子はクラスで2番目に頭がいい子で、僕は3番か4番といったところであった。その女の子と近くなったのは、父さんの仕事関係で会うことがあったからだった。
父さんの仕事が多少関連性があるみたいで、その子だけは僕が行く前から行くことを知っていた。
僕らは軽く挨拶するぐらいの関係だったこともあってか、たまに話す程度であった。
そして、一年生の残りの期間はあっという間にすぎていった。
〜中学二年生〜
僕は中学二年生になって、何も変わることを期待していなかった。でも、期待の逆を行くのが人生なんだな。そう思うようになった。
「宙、二年生になるんだから、サッカーまた始めたら?」
そう、母さんに言われた。
でも、僕は怠惰っていうのかな、面倒だった。長い間運動もろくにしてなかったからか、体育の運動で十分、わざわざしたいという気もなかった。
「母さん、勉強があるからいいよ」
そう、言ったのはしっかり覚えている。この言葉が母さんの次の言葉を言わせたんだから。
母さんは次にこう言ってきた。
「だったら、塾に入ったら?私色々聞いたけど、行ったほうが良いんじゃない?クラスで一番の子だって行ってるんだから」
そこで僕はドッキとした。今まで塾に行く必要もない、ばかのための場所だとそれまで考えていた。でも、クラスのトップがそうだと、聞いてしまったときに、僕はどう断るのかわからなかった。
「えっと…」
母さんは微笑んで言った。
「そうよ、入ると良いわ。家にばかりちゃ良くないしね。今日聞いてくるわね」
塾のことを学校で話すと友達数人と話していると、ほとんどの人が塾に行っていたことを知った。逆に、僕が行っていなかったことに驚いて際もいて、多少の優越感はあったな。
そして、家に帰ると母さんにひきづられる様にして、塾に行った。入塾テストの様なものを受けさせられ、それが終わったと思うと、授業を受けるとのことだった。
入塾テストの点数とかは知らないけど、一番頭のいいクラスに入れた。別のクラスには、学校で見かけたことのある生徒もいたけど、入ったクラスには一人しか知っている生徒はいなかった。それも、それがたまに父さんに連れられあっていた女の子だった。
塾の先生は僕とその女の子の学校が同じことを知ると、隣に座らした。特に、仲良くもないのに、なんで隣にするんだよって怒りたくなる気持ちを抑えた。
「こんにちは」
「こんにちは」
僕らは気まずい挨拶を終えた。
僕は決して嫌いというわけではなかった。頭いいのはおいといても、体育では女の子の中では突飛つしていたらしいし、顔も綺麗っていうのかな。笑顔はほとんど見たことがなかったけど、おそらく可愛いだろうと思ってた。
塾も終わり、僕の生活には、学校、そして塾のループの生活に変わった。
そして、僕の成績は上がるほど余地はなかったにしても、2番、悪くて3番といったところだった。やっぱり、1番の男の子には敵わなかったけど、塾の同じその女の子を抜いたり、抜かれたりと切磋琢磨していた。
本当に時間は早い。
あっという間に二年生が終わった。友達もできたし、外には一緒に行くことはなかったけど、よく話すようにもなった。充実した日々まではいかなくても、学校生活としては十分だった。でも、ある日、塾の女の子に勉強を教えてくれないかと頼まれた。それは、春休みの始めのことだった。
〜中学二年 春休み〜
実は彼女の成績は落ちているらしかった。最終試験は5位だったらしい。対して、僕は2番、1番に聞けばいいのにとも思ったが、1番の男子がこの女の子のことが好きだという噂が流れていた。
だからなんだっていうのはごもっともだと思っていた。
僕は図書館に行って、彼女の勉強をたまに見た。別に頭が悪いわけじゃないからか、聞くと言っても数回、ほとんどはそれぞれが自学を進めていた。
僕は母さんが毎日僕が外に行くのを嬉しそうにしていたのは、いまでも情けなく思っている。
だけど、僕は勉強に集中ができていないことに気がついた。
気がつけば、彼女の方を見ていたのだ。
自分ではおかしいと思って、何度も自分を抑えよう、抑えようと頑張る。だけど、考えてしまう。もう、好きなんだと気づかずにはいられなかった。
そう、この時、僕は他人が好きなんだと初めて気がついた。今までは、恋なんていうのも、なんて否定的だったのに気づけば恋愛相談について検索していたり、自分で自分がわからなくなっていた。
僕はその時自分が嫌いだった。いうことを聞かない自分をどうすればいいかわからなかった。
告白しろよ、なんて簡単にはいかないのには一つ理由がある。それは、父さんが知り合いだってことだった。もし、振られたりなんてして、父さんの関係が…なんて余計な心配をして、そんな自分から逃げてた。
そんな日から僕は彼女とは合わなくなった。それっきり、春休みもあっていない。
〜中学三年〜
僕はできる限り彼女を避けた。塾もサボるようになったし、学校でも遠回りなんかして、とことん避けた。
しかし、そう人生はうまくいかない。そう、僕はまだ子供だった。一つのことに夢中、気をとられると、授業も全く聞かず、塾もいかず、成績はどんどん落ちていった。
塾の先生にも言われた。
「三年生になってからどうしたんだ?もう、このクラスは難しすぎるんじゃないのか」
そう言っていた。
母さんはある日泣いていた。学校から連絡があったそうだ。そう、僕が勉強をできてないことを。家にいれば、もう堂々とゲームもして、勉強なんてと思い始めた。
これこれが本当の暗黒時代だったのだ。
気付いた時には遅かった。完全に引きこもりに近い生活を送り始めたのだ。価値のない生活を僕は続けていた。でも、恋というものを恐れていた僕はもう忘れた。
今頃だけど、なぜ女の子の名前を挙げないのかと思うんだけども。
思い出せなかったんだ。顔をうる覚え、情報だけがかすかに残っている。
僕は学校を辞めた。母さんは僕を公立校に入れたいと父さんに言ったそうだ。
母さんは僕が公立中学に行けば変わると信じていたのだ。
〜公立中学への編入 中学三年二学期〜
僕は流石にダメだと思った。流石に心配はかけられなかった。そう、ここで僕は恋の恐ろしさを、自分自身の情けなさを実感したんだ。
遅れた勉強を取り戻すべく、絶え間なく勉強を続けた。
母さんも僕に外に行けやら、塾に入る?なんて言わなくなった。
僕は母さんが自分を信じてくれているんだと、やる気に変えた。
そこで僕は気付いた。勉強に埋まることでも、恋は防げたのだと。そう、僕には他の誰もが目に入っていなかった。順位なんていうのもまともに気にしたこともないし、ただ自分のするべきこと続けた。
そこでもう一つ気づいたことがあった。それは、勉強の楽しさであった。努力は答えてくれる。そんな言葉も理解ができるようになり、自分を信じることもできた。
そして、そんなこともあってか、無事高校に推薦合格した。それも、地元では一番有名な高校だ。
母さんも父さんも僕を誇りに思っているなんて言ってる。
今その高校に通っているわけなんだけど、今は恋と勉強について自分なりにわかっているつもりだ。彼女も初めてできたし、勉強も続けている。父さんと母さんの会話から、あの女の子はどこかもっといい高校に入ったらしいが、もう後悔もしない。あの時、告白して入れば、なんて高校に入って思っていたこともあったけど、僕にはいまの彼女がいる。
そして、いまの彼女が好きで好きでたまらない。
そんな中学校時代恋に惑わされ、奮闘していた僕自信を褒めたい。
よくやった、そしてありがとう。今の僕がいるのは、あの時の僕がいたからなんだってことを。
すぐ前を後悔するな。今にわかるさ。
そして、なんかの手違いで別の人が読むことになったとしても、ここで伝えておきたい。
中学はわからないぐらいでいい。そして、悩め!励め!そして勉強しろ!って。高校、もしかしたら大学、そんな時に自分の恋を切なかってって笑える時に初めて、恋っていうものを理解したって言えるんじゃないのかな?
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