表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

死神さんの名前

 

「死神さん、死神さん!」


 死神と名乗った男、通称死神さんと出会って一週間がたった。


 もちろん、最初は本当に死神なのかと疑った。

 というか、頭がおかしい人なのかと思った。ほら、いわゆる『ちゅーにびょー』ってやつ。


 でも、目の前で壁をすり抜けられたり、物を浮かべさせたり、そんな超次元的なことを見せつけられちゃ信じるしかない。

 …信じるしかなかった。


 今では、死神の掟とやらに従って共に生活している。

 まあ、もともと一人暮らしだったし、人が増えて賑やかになったから素直に嬉しい。


「どうしました?」


 暗く濃い、何処か悲しさを感じさせる黒髪が風に煽られ、死神さんが振り向く。

 髪の毛は平均的な男の人より少し長め、瞳は深いアメジスト。足が長く、身長が高いのは羨ましい。


 手に持った箒までもが、神々しく見えてくる。


「あ、外掃除ありがとう」

「いえ、あまりに汚かったので」

「一人暮らしだとどうしても、掃除し切れないんだよね。…ところで、今更なんだけど」

「はい。なんですか?」


 ここで少し深呼吸。


「あの、死神さんのこと何て呼べばいいのかなって」


 そう、本当に今更なのだ。

 しかし私がこれを言ったのには、理由がある。


「私が死神さんって言うたびに、少し傷ついた顔するでしょ? 確かに私も、ずっと人間って呼ばれてたら嫌だよなあって思って」


 実は前から気づいてはいたのだが、なかなか言い出せなかったのだ。ほら、こういうこと改めて言うのって恥ずかしいじゃん?


「あーっとだから、名前とか教えて貰えないかな、と…」

「もちろん、いいですよ」

「ほんと? じゃあついでにお茶にしよう。掃除も終わりにして、ね?」

「その態度が、家が汚くなる原因じゃないんですか…?」

「あはは…」


 誤魔化しつつ、死神さんと二人で家の中に入る。

 私はお茶をいれて、死神さんはテーブルの上を片付け、二人で椅子に座った。


「で、名前でしたっけ。…でもいいんですか、そんなに僕と親しくして。僕はあなたを殺すんですよ?」


「別にいいの。言ったでしょ、私は死を恐れていないって」


 死神さんは納得出来ないのか、顔をしかめる。…イケメンって、どんな顔してもイケメンなんだなあ。


「…名前を教えるのはいいですが、僕も一つ質問をしてもいいですか」

「どうぞ」


 紅茶を一口含む。まあ、質問の内容ぐらいは想像ができた。


「僕は一ヶ月間、あなたを殺すまでの間共に過ごすと言いました。それが死神の中での掟だから。なのに、僕から逃げないのは何故ですか」


 それに、と彼は続ける。


「何故あなたは、こんな森に住んでいるのです? この森は凶暴な動物もいて危険です。それに加えて死を恐れないって…。あなたは死にたいんですか?」


 死神の僕が言うのもおかしいですけど…と彼は呟く。


 彼の疑問は正しい。でも少し違う。



「死にたいってより、もう生きるのがめんどくさいかな」


 もう私には何も残っていないんだ。



 私の答えに、また彼は顔をしかめた。


ブックマーク、宜しければお願いします


まだ登場人物2人の名前が出てないという危機…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ