死神さんの来訪
初投稿です、お手柔らかに
朝の日が眩しい。
「ん…。もう、朝か…」
周りに、人の気配はない。
いつもの事だ。
小鳥のさえずりが響き渡る森の中。
この国では侵入禁止のレッテルを貼られたその森に、私は住んでいる。
「今日もいい天気だね」
寝起きの顔を洗い、小屋の窓から顔を出した。
周りには緑しかないが、上を見上げれば、空が澄んだ青色を見せている。
「これは夜が楽しみだ」
と呟き、私は窓を閉めた。
夜でも灯りがともっている街は、この森からは遠く離れている。
そのお陰で、夜には手で掴めそうなほど近くに、星空が感じられるのだ。
その光景を想像し、薄く笑みを浮かべる。
別に、街の夜市が恋しくない訳じゃない。皆で集まり、夜中飲み明かすのも嫌いじゃない。
ただ、もう戻れない。それだけのこと。
今日も変わり映えのしない1日がやって来たと、そう思っていた。
しかし、その予想も今日ばかりは外れる。
「こんにちは」
小屋の外から、声が聞こえたのだ。
人の声。
誰も居ないはずの、この森から、人の声。
風が吹き抜ける。
私は思わず、その場にしゃがみ頭を抱えた。
そのまま、見つからないように小さく縮こまる。
声はどっちから聞こえた? 知っている人? 知らない人? あの国の人間?
それに……私はこの未来を、知らない。
様々な考えが私の中を駆け巡る。
「あの…。」
「……!」
思わず顔をあげた。
「へ…ど、どうやって家の中に…」
「……っ」
目の前には、見たことも無いほど容姿の整った人。
何故か私の顔を見たその男は、息を飲んだ。
お互い沈黙がはしる。
おかしい、私は戸締りを昨日の夜しっかりしたはず。窓も全て閉まっている。
どうやって、この男は私の家に入って来た…?
「あ、あぁ……えと、その」
私の問いかけに対し、男は視線をさ迷わせる。そして、意を決したように顔を上げて言い放った。
「じ、実は僕、死神なんです」
「は…?」
「あなたを、殺しに来ました」
これが、弱気な死神さんと私の初めての出会いだった。