褪せた殻を
うっかり濡らした文庫本の頁が元に戻らないように
僕の毎日は少しずつ色を失っていく
安っぽいフローリングの白い傷や
千切れたクローバーの四枚目や
大理石の人形の頬に流れる涙の跡や
たとえばそういうものみたいに、少しずつ
ほんの少しがどれだけ遠いか知っている?
ほんの少しはとても遠いの
時計の針は二度と同じ時間を回らないから
僕は知らなかった
たぶん本当は今でも知らない
だって時計の針は懲りずに同じ数字を指すから
今日もまだ僕は失う
昨日は既に
明日もまだ
ずっと僕は失っていく
モノクロの写真は綺麗だけれど
褪せた空は悲しいのだと
気づく前にきっと最後はやって来て
空っぽになった僕の抜け殻を摘んでいくのだろう