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入学式と保健室のVenus 3

登校と入学式がやっと終わります。実は綾が新入生代表をほのめかす箇所何個かあったのですが気づいた方はいらっしゃったでしょうか?お気づきだった方がニヤニヤして頂けたら嬉しいです。


さあさあ、遂に登場するヴィーナス

『新入生代表、白崎 綾(しらさき りょう)


「はい」


・・・響いた声を聞いて固まる。

はっ!?なに?綾!?

今新入生代表って言ったか?


唖然としてると壇上に昇る後ろ姿が見える。

見覚えのあるミディアムロングの髪、小柄な体躯と軽い足音。マイクのに向かうその横顔は、間違いなく綾だ。


「きゃー、あの子可愛い~」

「え、あれって男子?顔綺麗~」

「白崎くんだって~」

ヒソヒソと女子の小さな声が耳に届く。


「代表って、入試の成績で選ばれんだろ?」

「アイツが入学試験のトップか...」

「いや、ただ点数がいいだけじゃダメらしいぞ?」

「頭よくて美形って…詐欺だろがよぅ」

「…萌える」

様々な声が辺りを行き交っている、最後の野太い声は聞こえなかったことにしよう。


壇上で宣言を告げる声がスピーカーから響く。皆の注目なぞ物ともせず、淡々と最後まで話終えた綾は、綺麗に一礼して踵を返す。

壇上から降りる際、こっちに目を会わせて来やがった。あのやろう...すました顔してるが、目が完全に笑ってやがる。俺を驚かせて満足でもしたか、まったく。


そして閉会の辞となり、式は終了。またゾロゾロと教室へ戻ってきた訳だ。

戻る途中で生徒会長や新入生代表の話がチラホラ聞こえてきたが、まあ人間そんなもんだろう。



教室に戻ると、仏頂面(石神)が教壇に立ち話していた通り全員に自己紹介をさせHRを閉めた。

なに?クラスメイト達が気になる?それは追々な。


今日一日の行事を済ませた生徒達は、明日からの授業に備え午前中に解散。教室に残ってダラダラと過ごす理由は無いので、早々に1-4を後にした。


「さて、取りあえずは保健室か?」


自分でも確信が持てていないせいか、口からでた言葉は疑問型だったが、まあ合っているだろう。


「確か一階だったな、綾はの奴は…まあ、あっちで合流できるだろう」


それとなく廊下を見渡したが、綾の姿は見えない。クラスまで迎えに行くのも面倒だったし、保健室に向かうことにする。一組は一番端だもんなー。


 階段を下りて廊下を進む。今日は2,3年生も午前で終了なのだろう、窓から部活をしている生徒たちが遠めに見える。やる気のある1年は見学とかに向かっているのかもな。

 さて、たどり着いた『保健室』だ。

 この扉の向こうに、まだ見ぬヴィーナスが待っている。どんな美人女医だろうか、やっぱり男なら期待しちまうな。


「失礼します」


 声をかけながらガラリと扉を開ける。ふんわりと消毒液の匂いが鼻をかすめる。...人気(ひとけ)がないな?

 室内に備え付けのデスクには誰もいない。デスクの上にまだ湯気の立つコーヒーが乗っている、さっきまで人はいたと思うんだが。周りを見渡す。


「あのー、誰かいませんか」


「あらあら、はーい。居るわよー」


 デスクとは反対の、閉まっている白いカーテンの中から返事があった。

 ・・・気のせいだろうか、聞こえた声に違和感が。

 カーテンの隙間から出て来た人影に目を向ける。恐らく彼女が保健室の…ヴィーナ…ス‥!?

 


 …カーテンから出て来た人物に愕然とする。

 

白い白衣にはち切れんばかりの胸元。

タイトなスカートから覗く、スラリと引き締まった足にはストッキング。

 視線を上げると、強烈な顔はほほ笑みを浮かべ、その唇には真っ赤な口紅が光っている。

 そして…掘りの深い顔つきに剃り上げた青味の残る顎。


「今日は午前で学校が終わりよー。サボりで私に会いに来たなら、ちょっと遅かったわね」


 目の前の俺にパチリとウィンクを飛ばしてくる。ヤバい、背筋が凍りつく。

 そこには…白衣を来た、筋骨隆々の女装野郎(・・・・)がいた。


「・・・ッ」


 周囲を確認する、室内に他の人影は無し。

 今俺の位置から扉までは4歩強。振り返って脱出するまで2秒もかからんだろう。

 

 ジリリと右足を引く。


 目前の変態はこちらを見据えている。

 距離は約2メートル。あのデカい図体なら、一歩もいらずに両腕の有効半径に捕らえられるだろう。


 目を合わせて奴の動きを探る。


 「あら?どうしたの君、ケガで痛くてしゃべれないの?」


 凍っている俺から返事がないことを、痛みを堪えていると勘違いした変態は右腕をこちらに動かす。


 ヤバいヤバい、捕らえられる!!!


「ぐぅぉッ」


 その腕から逃れようと、後ろに引いていた右足に重心を移し流れるように扉へと退避。

 即刻回れ右をして足に力を込める...あと二歩強、目の前の扉をこれほど遠く感じるとは!!!


「あっ、ちょっとぉ」


 向こうも俺を追ってきている。背後からズンと重たい足音が響く、これがビハインドプレッシャーか!?

 刹那の瞬間、扉にめがけて突き出した俺の腕。

 時間は一瞬だったろうが、俺には何倍もの時間に感じられた。もしや、これが走馬灯という物なのかもしれない。


「ぐぅっ…!?」


 扉に触れようとした瞬間、突如左肩が強い力で引っ張られる。くそ!!!掴まれた!

 なんて握力だ、万力にでも挟まれたようだ。肩が軋みやがる・・・・!!!


「待ちなさいってば、も「失礼しまーす」」


 変態が俺の方を捕らえ掛けた声に被さるようにガラリと扉が開いた。綾だ!


「っ!!駄目だ、綾!!!逃げろ、これは罠だ!!」


 反射的に叫ぶ俺。せめて綾だけでも逃がさなくては!!


「え?」


 俺の叫びを聞いてパチクリと目を開く綾。俺の後ろの変態が見えねぇーのか!

 くそっ!たっぱの低い綾は、俺の後ろが影になって見えてねぇ。

 万事休すか、いつの間にやら右肩にもデカイ手のひらがガッシリと俺を掴みあげている。


「まったくもう!いきなり逃げるなんて、酷いじゃないの!傷ついちゃうわ」


 悪魔が後ろから囁いた。

ヴィーナスにビビる武を書くのが楽しくてならない。

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