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初登校と幼馴染 3

 駅から歩いて○○分、というか目前にもう校門が見えている。

 

 外界からの視線を塞ぐ為か、はたまた何かの設計ミスでそのまま建てたのか。そう疑ってしまう程に馬鹿デカイ建物が眼前に広がっている。大きく開いた門の横には警備員であろう、制服姿の大人が直立姿勢で待機している。


 さてこの学校、『国立帝王学園高校』だが。情報規制の観点からか、セキュリティーが面倒くさい。入学説明会で渡された生徒手帳にICチップとやらが組み込まれており、校門に設置されているゲートを通過するときは必ずかざす必要がある。

 数日前、事前の学校入学説明会が開かれ、その会場では全国の合格者が一様に集められた。教頭だか副校長だかの職階を自称していたハゲが声高らかに説明していたのを覚えている。

 

 他にも、「最先端を常に意識して~」とか、「我が校の生徒となる諸君は~」とかとか。眠くなる様な話をダラダラと同伴した保護者に口角泡飛ばして説明する中年を思い出したら胸やけがしてきやがった。

 さっさと翳してゲートをくぐる。警備の兄さん等もご苦労なこって。


「この生徒手帳、無くしたら大変だね」


 目の前の少年はゲートを通過し、振り返るとあえて、分かっている事をこちらに問いかける。

俺が苦い顔してたのに気が付いたのか?はたまた禿を思い出して気分を変えたくなったか。


「ああ、そうだな。それより、早いとこ兄貴を見つけよ…居たな」


 綾にそう返して周りを見渡すと、開けた校庭に兄貴の姿を発見する。こちら気が付いているようで、小走りで近づいてくる。


「おはよう、武。おはよう、白崎君。時間よりも少し早かったか」


 前に来ると俺達にそう話始める。


「ああ、おはよさん。まあ、五分前行動って奴さ」

「おはようございます、楯付(たてつき)先輩」


 俺達も短く返す。軽口を添えて。


「訳あって携帯での連絡が不用意にできなくてな。入学日早々にすまなかった。」


 そう言って兄貴は周囲に視線を移す。何だ、えらく挙動不審だな。

 周りに警戒している物は無かったのか、俺に向き直ると右手を差し出して来た。


「要点はこの紙に書いてある。本来はゆっくり学校の案内でもしてやりたかったが、入学式という行事があるせいで俺も余り時間が作れなくてな。とりあえずはその紙の指示にっ」


 兄貴が紙を渡して話終える前に着信メロディが流れる。未来から来た殺人ロボがアレする曲だ。


「・・・予定より早いな。すまん武、白崎君、後は紙を見てくれ」


 そういって携帯を片手にこの場から去っていく兄貴。顔が青く見えたのはブルーアワーのせいではないだろう。もうすっかり日は昇っている。


「あっという間にいっちゃったね、お兄さん」


 兄貴の慌てた様子を見てか、綾が俺に気を使うように聞いてくる。今日のこの時間帯を指定して、学校前

に呼び出したのは他ならぬ兄貴だ。ゆっくり話たかったのは俺も同意するが、まあ仕方がない。


「なに、問題ないさ。折角速く着いて人気も少ねぇんだ、軽く学校を見て回るか」


 綾にそう提案しながら、まだ静かな校庭を眺める。少々遠くに見えるのが校舎入口だな。


「それもそうだね。あっ、それよりも先に先輩から貰った紙の中身を確認しておこうよ。きっと重要なことなんでしょ?」


 気を取り直した綾にそう指摘され、握っていた右手の紙切れに目が行く。携帯メールではなく紙媒体で伝えてきた事だ、とっとと確認しておこう。


「わかった、じゃあ開くぞ」


 小さな紙切れには、几帳面な字で短くこう記されていた。


『入学式後、「保健室のヴィーナス」に会え。協力者だ』


 読み終えて内容を頭の中で反芻する。・・・保健室のヴィーナス。

 綾も紙から視線を上げる、目が会う。


「「保健室のヴィーナス」」


 二人の声がハモる。

まだ誰もいない校庭に、そんな音が響いた。





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