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初登校と幼馴染 2

 まだ通学通勤時間には早いせいか、電車の乗客は疎らだ。

端の座席に二人で座ると、鞄を膝に置いて(りょう)が話始める。


「今日から晴れて国帝高の生徒かぁ…噂は沢山聞いているけど、実際どんな感じなんだろうね?(たける)


 流れる景色を眺めながら、これから始まる学校生活に期待を膨らませる新入生。

そんな風体を醸し出す綾は、楽し気に俺にそう尋ねてくる。


「お前なぁ…」


チラリと横目に視線を会わせる。随分とまあ、気楽な顔してやがる。


「当然、噂通りのとんでも高校だろうよ。キラキラと誰もが羨むエリート高校。学業優秀のインテリや、スポーツ神経万能の脳筋予備軍、馬鹿と紙一重の天才がウヨウヨしてるだろうよ」


・・・そんでもって実際は、これまたとんでもねぇドロドロな、嘘を塗りかためてメッキで覆い被せた様な、見たくもねぇ不細工の素っぴんみたいな所だろう。


勿論、後半を口には出さないが。


「ふふふっ、そうだねぇ~」


そんな俺の目を真っ直ぐ見つめる綾は、満足げに頷きながらまた小さく笑う。


こいつ、どこまで俺から本心を聞きたかったのか、わかりゃしねぇな。


 誤解の無い様に言うならば、俺はこの腐れ縁の友人に国帝高の真実…兄貴の持ち物から見つかったブツの件などを包み隠さず伝えてある。

 更には、俺が国帝高の推薦を受ける事や、俺が送ろうとしている高校生活に関しても話してあったりする。


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 ある日、俺が国帝高を受けると話した。それを聞いた時に綾が言った言葉はこうだ。


「そっかー、それなら僕もそこにしよっかな。やっぱり高校でも武と居た方が楽しそうだしねー」


そんな風にサラッといいやがる綾、俺は驚きつつも国帝高は腐ってるからやめておけと忠告した、勿論、兄貴のから聞いた学園の腐敗体制も説明しつつ・・・だが。


「なら尚更僕も居た方がいいよー。あー、でも一般入試で入らないといけないのか。僕、推薦とかの話は来てないし・・・」


既に聞く耳は持たず、よくいる高校受験生みたいなことを呟いている綾。


「まあ、倍率とか高いらしいけどなんとかなるよ。よっし、頑張ろっと」


 国帝高は学校推薦やスポーツ推薦で入る学生が大半だが、一般試験を受けて入学する生徒も居る。

ただ、とんでもなく難題だというのが世間の評価だ。

 全国から受験生が殺到し、三次まである試験を受ける。そして全ての試験をパスした選りすぐりの生徒のみが門をくぐることを許される。


入学するのは簡単ではないのだ。そう、簡単では。


しかし其から数ヵ月後、綾は俺の心配をよそにあっさりと合格した。


「これで春から僕も同じ学校だね。よろしく、武」


合格発表日に付き添って見に行ったから間違いない。何だかんだでコイツはハイスペックなのだ。

いつもホワホワしているくせに、やると言ったことはすんなりこなし、時折俺でも引くような事を冷淡に実行したりする。

小さい頃はまるで気弱な弟みたいで可愛かったのにな…後ろをチョコチョコ着いてきてよ。


きっと、近くに変な影響を及ぼす輩が居たに違いない。生憎

俺の交遊関係は狭く、結構な頻度で綾とつるんで居たが、怪しい人間に覚えは無い。


未だ見ぬ人物Aに怒りを覚える俺は、背中に冬の冷たい風を感じながら、合格者番号の並ぶ掲示板から平然と、離れていく友人を眺めていた。

----------------------------------------------------------------------------------


「なあ、綾。わかってはいると思うが、俺は学校で面倒な事に首を突っ込んで行くつもりだ。当然、近くにいるお前も少なくない被害が及ぶことになるぞ?厄介事に巻き込まれるかもしれない。」


 隣で足をパタパタさせている奴に俺は言う。


「心配ないよ、これでも武との付き合いも長いからね。それに、もし何かあっても頼りになる相棒がいると武だって安心でしょ?」


 キリリッした表情を見せつつ腕を曲げ、力こぶを見せる格好を取る綾。男らしさを表現したいのだろうが、その細腕と幼さ残る顔つきじゃ背伸びしてるだけだ。

 ついつい頬が緩む、全くこいつは。


「へいへい、仰る通り。頼りにしてるぜ相棒さんよ」


「あー!それ本気にしてないなー?全く、素直じゃないんだから」


 不満をあらわにする綾を見て笑う俺。向こうは少々膨れてるか?

そうこうしている間に。


「おっと、そろそろだね」


大した時間は経っていないが、いつの間にやら電車は目的地に近づいていたようだ。綾が鞄を持って俺に声をかける。


『国立帝王学園前~国立帝王学園前~…お降りの際は足元にご注意下さい…』


自動音声が目的地を告げる。電車が止まって扉が開くと、綾が席を立つ。俺も出口に向かう。

待ち合わせている兄貴が居るのは、学校前だったな。





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