初登校と幼馴染 1
あの出来事から数ヶ月。すっかり寒さも遠退き、町の景色が淡いサクラ色で染まっている。
国立帝王学園高校からの逆推薦を受け、予定通りにこの春進学。忌々しい学校が指定する制服に袖を通した自分の姿を確認する。
短く切った髪は黒く、鋭い目付きと相まって怖い、とよく言われるが…まあ至って普通の男子学生と言った風体だろう。
中学までやっていた陸上のお陰か、肥満体計に成ることはなく、軽く引き締まっている。
これでも優等生やってた訳だ、別段そこらの人から忌避される様な外見ではないはずだ、問題ないだろう。
「じゃあ、いってくる」
まだ寝ぼけた顔して朝食を食ってる親父に話して家を出る。玄関の外には朝の静な町が広がっている。
ここから学校は電車を使ったらすぐ、歩いて行ったところで一時間も掛からない距離だ。今日は待ち合わせている奴がいるので俺は駅に足を進める。
最寄り駅に向かうと、入口付近で見知った顔を見つける。向こうもこちらに気がついたようだ。国帝校の制服姿で手を振った少年が声を上げる。袖が余ってるな。
「おはよう、武。やっと来たね」
「おう、おはよさん。「やっと」って、時間通りだろうが」
挨拶と共に、腕の時計を確認して答える。
「五分前行動って奴だよー。それに、今日は少しでも早い方が都合がいいでしょ?」
頭一つ下から響くハスキーボイス。少々不満げに俺を見上げるこいつは『白崎綾』小学からの付き合いに成る友人だ。
「さあさあ、いくよ。それに守さんとも学校で待ち合わせてるんでしょ?」
「おい、そんなに急かすなって」
綾に手を引かれながら、俺達はちょうど着た電車に乗るべく改札を進む。