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第35話母の過去 取り戻した幸せ

「よく俺だって分かったな!!」

「愁斗もね・・・よく私だって分かったね・・・」


愁斗は昔と全然変わっていなかった。

背はすごい伸びてるけど・・・・・私伸びてないのに・・・

当然だけど


「愁斗、どうやってここまで来たの?」


疑問に思ったことを愁斗に訊ねた。孤児院からだと3時間かかるのに・・・

車を出すにも、先生達が許すわけないし・・・


「歩いて来た。」


そんな普通じゃないこと、普通に言われても・・・

てか、何やってんの?


「ダメじゃん・・・・」

「先生の許可は貰った。ってか、お前なぁ〜!何急にいなくなってんだよ!!みんな、すっげぇ寂しがってんだぞ!?」


しょうがないじゃない・・・みんなのためなんだから・・・・

孤児院が潰れたら、みんな行く所がないんだから


「しょうがないこと。ってか、よくここに入れたね?」


見張りがそこら中に居るはずだけど・・・

私が逃げないための・・・


「んー・・・なんか、秘密の出入り口っぽいとこあったから♪」


見つけて入ったわけ?

すごいな、おい


「それにしても・・・・」


愁斗は私をじっと見ていた。

私は慌てて目を逸らす。


「お前、何されてんだ・・・・?こんなに痩せて・・・傷だらけだし」


私は慌てて傷を隠した。

1番・・・・見られたくなかったのに・・・・


「関係ないでしょ?」


とにかく早く帰ってほしかった。


「関係あるから。」

「何で?」

「俺・・・・寄付の話聞ぃちまったんだ。」

「・・・・・・」


だから、こんなとこまで来たって言うの?

馬鹿じゃない・・・・


「亜沙羽・・・・お前だけがこんな辛い思いしなくてもいいんだぞ?俺も新聞配達とか他にも働いてるし、純と晃平だって」

「中学生が働いて良いの?」

「許可貰ってる。」


ほんと馬鹿だね・・・・そんなお金で孤児院を救えるわけないでしょ?

こういう汚い、お金関連のことなら3年間でよく勉強したから分かる・・・・

汚い世界に慣れてしまったから分かる。


「優奈と七恵もお前のこと心配してるから!」

「だから?」

「はッ!?」

「だから何なの?私はここで暮らして行かなきゃならないの。もう・・・みんなとは・・・・住む世界が違うの・・・・」


こんなこと言いたくなかったけど、このままじゃ愁斗まで危険になる・・・・


「嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ?」

「え?」

「2歳の時からお前と居るんだ、嘘か本当かぐらい分かるだろ?普通」


・・・・何言っても無駄なような気がしてきた。

何故か笑いがこみ上げてきた。

すごく・・・久しぶりに


笑った。



「昔と一緒の顔だな・・・・」

「こんなに酷い姿でも、昔の面影あるんだ?」

「ってか、あんま変わってない。」

「そう?」


愁斗の言葉1つ1つで、汚れていた心が洗われるような気がした。

この時、気づいた。

愁斗への思いも・・・変わってないことに


「もうすぐ・・・午後のお稽古始まるから・・・ここに居ると見つかるよ?」

「マジ!?じゃッ、また来るから・・・」


そう言って、愁斗は出入り口があるのであろう方に走って、向かって行った。



それからは、ずっと愁斗が来てくれた。

3年ぶりに人並に幸せの時間があった。愁斗と居る時間は・・・幸せだった。

こんな汚い世界の中でも・・・

こそこそと愁斗と会う日が1年続いた。中2になっていた。

この頃から、お互いに恋愛感情の好きを持ち始めていた。



「亜沙羽ー・・・・」

「何?」

「俺と付き合わない?」

「いいよー・・・・ってえぇ!?」


今、さらっとすごいこと言わなかった?愁斗・・・

聞き間違いかなぁ?


「だから、俺と付き合わない?」

「どしたの?急に・・・」


こんなこと言うなんて珍しいっていうか・・・ありえない。

私は5年片思いしてるから・・・嬉しいけど・・・・この世界で付き合って行くなんて・・・


「んー・・・だってさ、亜沙羽って俺以外と恋愛出来ねぇじゃん?」

「まぁ・・・ね」


ここから出して貰えないから・・・・当然だけど・・・

お見合いは何回もしてるけどね


「優しい優しい俺が、そんな亜沙羽の為に!付き合ってあげようって言ってんの」

「ムカつく・・・上から目線・・・」


ほんとにムカつくなぁ〜・・・・

ってか、同情かよ・・・


「まッ!それは冗談、俺・・・亜沙羽のこと好きだから・・・・」


マジで?

いやいやいやちょっと待とう!!

真剣な顔して言うの止めよう!!

おーっと!顔赤らめるのも止めよう!!


「ってか、俺も亜沙羽以外と恋愛出来ねぇし!」

「そっちかよ!」


って感じで、まぁ付き合うことになった・・・って言っても今までと何も変わらない毎日だったけど・・・・

けど、関係がはっきりしたことで少しすっきりした。

相変わらず・・・・傷の絶えない毎日だったけど・・・それでも、愁斗の存在1つで頑張れた。


だけど・・・・また、1年が経ったある雨の日・・・それは起こった。



午後のマナー講座の時・・・飲み物を口に含んだ瞬間・・・


「うっ・・・・」


急いで席を立ち、洗面所へと走った。

吐いた。

まさか・・・これって・・・・


「亜沙羽さん・・・・あなた・・・妊娠してるの?それって、つわりじゃなくて?」

「ち、違います!!」


すごい剣幕のあの人に、必死で否定した。


「どなたの子?あなた、いったい何を考えてるの!?まだ、あなたは15歳よ?世間に知れたらどうなるか・・・・

天城院家の跡取りとしての自覚を持ちなさい!!」

「申し訳ありません。」


謝る気など本当はなかった。

私は嬉しさでいっぱいだったから・・・・愁斗との子供が出来た・・・それだけで嬉しかった。


「仕方ありませんわね・・・下ろしなさい。」

「え!?」


静かにそう言われ、私の頭は真っ白になった。


「まだ、知られてない内に・・・・」

「嫌です。」

「何を言っているの?」

「絶対に嫌。」


そういい残し、私は始めて無断で部屋を出た。

走って、地下室に向かった。

そっと・・・お腹を擦りながら・・・・



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