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第34話母の過去 辛い日々

「亜沙羽?本当に何も言わなくていいのね?」

「うん・・・いいの!」


私が引き取られることを決意してから、1週間が経った。あの後、私があの人達の所に行くと言ったら、話しがスムーズに進み、

決意の揺らぐ時間さえなかった。

私は、それでよかったと思う。

あれ以上みんなと居れば・・・・行きたくない思いが強まるに決まっているから。

これでいい。


「亜沙羽さん、お迎えにまいりましたわ。さぁ、行きましょう」

「はい・・・」


これから私の母親となる人が向かえに来た。

すっごい高級車に乗って・・・・運転手居るし・・・・


「じゃッ!院長先生・・・・今までありがと!!ばいばい」


精一杯の笑顔で院長先生に最後の言葉をかけた。

少しでも気が緩んだら、泣いてしまいそうだった・・・・


「亜沙羽・・・・ごめんね?」


そんな言葉が聞こえてきたと思ったら、私は院長先生の暖かい腕の中に居た。

本当の母親の温もりは覚えていないけど、院長先生の温もりは母親以上のものだとこの時思った。


「私がもっとしっかりしていれば・・・・こんな事には・・・」


涙声で続けられる院長先生の言葉・・・・その言葉に私はただ首を横に振ることしかできなかった。


「院長先生・・・・ありがとう。楽しかったよ・・・」


私も半ば涙声で、そう告げた。


「私も、楽しかったわ・・・ありがとう」


そう言われて一気に涙腺が緩んだ・・・ぼろぼろぼろぼろ流れ落ちる涙に私はもう、何も言えなかった。


「亜沙羽さん、時間ですわ。参りましょう」

「はい・・・」


私は院長先生から離れ、母親となるであろう人の所に向かった。

車に乗り込んで、孤児院が見えなくなるまでの間、私はずっと手を振り続けた。


さよなら・・・・


さよなら・・・・・



         愁斗・・・・





「亜沙羽さん?着きましたわよ」


孤児院を出て、3時間ぐらい経った頃だった。大きいお城のような家の前に着いた。

今日からここで暮らすのか・・・・憂鬱だけが心を支配した。

車のドアが開けられて、車から降りた。

母親になった人は1人先を進んでいた。まるで、私の存在など知らぬように

表札には、ローマ字で‘天城院てんじょういん’と書かれていた。

ニュースで聞いたことのある名前だな・・・・と思った。



「あなた!あなた!亜沙羽さんがいらしたわよ!!」


少し大きめの声を上げられて、顔を顰めた。

どでかい階段から、あの時来ていた男の人が現れた。

相変わらず、スーツを着ている。


「そうか・・・来たのか・・・・・じゃぁ、亜沙羽だったかな?こっちへ来なさい」

「はい。」


言われたとおり、その男の人に着いて行った。

すると、映画にでも出てきそうなリビングにたどり着いた。


「亜沙羽さん、まず2,3説明したいことがありますから、お父様のお話をよく聞いて下さいね。」

「はい」


お父様と言う単語に嫌悪感を覚えた。

こんな人がお父さんなわけないじゃない・・・・


「君は今日から天城院 亜沙羽だ。我々のことは好きに呼んでくれ。知っていると思うが、私は天城院財閥の社長だ。君には跡取りになって貰おうと思っている。我々に子供はいないからね。そのために1番才能に溢れていた君を貰ったわけだが、才能があると言ってもまだまだ跡取りとしては、力不足だ。だから、我々の言うとおりに動いて貰う。君は感情など持たなくていい。我々の言うとおりに動くロボットでいいんだ。」


どういうこと?

そんなの・・・・人間じゃない・・・・ロボットって・・・・


「ふざけないで・・・・私を何だと思ってんのよ!!」

「高性能ロボットの軸になる物だ。」

「人を何だと思ってるの!?いい加減にして!!」


私は荒々しい声でそう言った。

この人達が許せなかった・・・・・


「君は、そのにお金で売買されたんじゃないのかね?君にこの家で口答えする権利はない。孤児院への寄付がなくなるだけだからね。」


きたない人達・・・・醜い・・・・

私は売買なんてされてない。自分でこの道を選んだんだから・・・

そう自分に強く言い聞かせた。


「ふぅ、この子は牢屋に閉じ込めておけ。拷問器具がある方にな。」

「畏まりました。ご主人様」


牢屋?拷問?どういうこと?

私は考える間もなく、2人の使用人であろう人に地下室に連れて行かれた。


薄暗い所だった。靴の音が大きく響いていた。

刑務者の牢獄のような所に入れられた。拷問器具の意味がやっと理解出来た。

そして、自分がこれからどういう目に合うのかも・・・・




それからは・・・・口が裂けても人に言いたくない生活だった。


勉強で1問でも間違えれば爪を剥れた。

小5、6で東大の入試問題なんか出来るわけないじゃない・・・・

運動は、ありとあらゆるスポーツの大会に出された。

優勝でなければ、叩かれ、蹴られ、刃物で刺されたりした。それがたとえ・・・世界大会でも

フォークやナイフの位置が1ミリでも違えば・・・・ご飯抜きで、手を鞭で打たれた。

大きな失敗をすると、首を吊られた。拳銃で撃たれた。


辛い、辛い毎日だった。

それでも、従ったのは・・・・孤児院のためだった・・・・

みんなのためだと思うと頑張れた。


だけど・・・・体には無数の傷、血を流しながら暮らす毎日、食べることすら出来なくなっていった。

笑うことすら・・・・・出来なくなった。

本当にロボットみたいになっていった。

当然のことながら、体は皮と骨しかないぐらいに痩せ細っていた。

中1の体ではなかった。

昔の面影などなかったかもしれない・・・・鏡すらなかったから、自分で姿を確かめることは出来なかった。

が、何度もお見合いをさせられ、見合い相手は気持ち悪いほどニヤニヤしながらこちらを見ていたところを見ると・・・・

そんなにヒドイ顔ということはなさそうだった。


そんな日々が3年続いた、中1のある日・・・



いつもどうり私は、午前中のお稽古を全て終えて、牢屋に入れられている時だった。

靴の音が聞こえてきた。

まだ、休憩なはずだけど・・・・?


「亜沙羽!久しぶり・・・・」


えっ?

この人は・・・・まさか・・・・


「愁斗?」


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