第33話母の過去 つかの間の幸せと決意
「亜沙羽と愁斗おっそーい!!」
「優奈ゴマーン!!」
「ゴマーンって何!?私の値段5万!?」
「優奈やっすー」
「純うっさい!!」
「まぁ、まぁ、落ち着けよ!」
「晃平は落ち着きすぎて、子供とは思えんぞ?おじんかお前は?」
「どういう意味だよ!?」
「もう!みんな落ち着こうよ・・・・」
「七恵声ちっさい!」
「しょーがないじゃん!ってか、みんながでかいんじゃない!!」
ぎゃーぎゃー五月蠅いなぁ。
そんな子としか、ツルんでない私も私だけど・・・・
「ってかさー、もう遊ぶ時間ないよな?」
愁斗がもっともなことを言った。
もう、日が沈みかけていた。
あーあ
「亜沙羽と愁斗が遅いからじゃん!!」
「優奈ゴッマーン!!」
「そのネタもういいわ!!」
もうよかった?
やっぱ5万は安かったかな?
「ご飯だから、戻ろうぜ!」
「晃平って、ご飯の時間は正確だよなぁ・・・」
「純!晃平はそぉいう奴なんだよ!!おじんだからなぁ」
「そうか、おじんかぁ!!」
「おじん関係ないだろ!?」
3人とも何やってんだか・・・・
完璧馬鹿じゃん・・・
「まッ!晃平の言うことももっともじゃん?戻ろうよー」
「お腹すいたしね・・・」
「だねー」
男どもとは違い、落ち着いてるだろぉ!?
さすがだ!!
「あッ!」
院長室に帽子忘れた・・・・
「亜沙羽?どしたの、急に大きい声出して・・・」
「忘れ物しちゃった!みんなに先行っててって言っといて?」
「うん。分かった!!早くね?」
「うん!!」
七恵にそう告げて、急いで院長室に向かった。
院長先生が居ませんように!!
院長室の裏の窓のところから、そーっと部屋の中を覗く・・・期待とは裏腹に中には院長先生が居た。
何か話し声が聞こえる・・・・お客さんかな?
そう思いながら、部屋に入るチャンスを窺がう。
窓が開いていたから、話し声がはっきりと聞こえてきた。
「確か・・・相原 亜沙羽ちゃんだったですわよね?お答えは頂けたのかしら?」
えっ?
私の話?もしかして・・・・この人が!?
こっそり、窓から中を見てみる。
おそらく夫婦であろう人達が居た。
女の人は、高級そうな服を着ていて、宝石をこれ以上付けられないぐらい付けている。
確かに・・・・かなりお金持ちそう・・・・
でも、意地の悪そうっていうか・・・ツンツンしてる感じの顔だった。
男の人は、スーツを着ていて、バリバリに働いているような感じだった。
でも・・・なんか冷酷そうっていうか・・・冷たい目をしていた。
好きになれそうにないな・・・
直感でそう悟った。
「・・・・亜沙羽は・・・・嫌だと言っておりましたわ・・・」
院長先生は言いにくそうにしていた。
「まぁ、聞き分けのない子には見えませんでしたけど?あの事を言ったのならば」
あの事?
それ、なんの事?私は今まで以上に聞き耳を立てた。
「あの事は言っておりません。そのような事で子供を惑わしたくありませんので」
「そうですの。私どもも惑わすつもりはございませんけど」
「では、院長先生・・・・孤児院への寄付はなかったことでよろしいですね?」
「えぇ。子供を売るような真似までして、寄付など欲しいとは思いません」
寄付?何のこと?
この話からすると・・・・私を引き取ることが出来たら・・・・寄付してもらえたってこと?
「孤児院を潰すことになりますよ?子供たった1人の為に」
「子供1人守れない大人になどなりたくないもので」
院長先生・・・・
孤児院が潰れる?
じゃぁ・・・ここに居るみんなは!?みんなは・・・どうなるの?
ここには50人も居るのに・・・
私が、私が・・・・あの人達の所に行けば・・・・
済むことなんだよね?
「では、また伺いますが・・・・次を最後にしましょう。我々もあまり暇ではないので」
「失礼いたします。」
「何の持て成しもしませんで」
バタン
あの人達は帰ったようだ・・・・
次で最後・・・・これで私がいかなかったら・・・・みんなが・・・
愁斗だって・・・・
私が行けば・・・みんなはこのまま暮らしていける・・・・
みんなは今のままでいられる・・・
だったら・・・・私は
行かなくちゃいけないと思う。