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第32話母の過去 26年前の真実

「そうね・・・・話して置いた方が良いかもしれないわね。いつかは話そうと思っていたし・・・・」


そう言ったお母さんの顔は目に見えて辛そうだった・・・。

こんな顔のお母さんをぼくは、初めて見た気がする。

みんなもそのことを感じ取ったのか、少し顔が強張っていた。


「私は、本当の両親を2歳の時に亡くしているの。10歳まで孤児院に居たんだけど・・・・いろいろあって、それで今のあなた達から見たらお婆ちゃんとお爺ちゃんの家に引き取られたのよ。」


少しの沈黙の後、お母さんはそこまでを一気に話した。

まったく知らなかったことばかりで、ぼく達は驚きを隠せない。


「そうね・・・今から、26年ぐらい前かな?私が10歳の時から話すのがいいかな・・・家事で家が全焼して、家族がみんな亡くなったの。それで、孤児院に預けられて8年が経った頃だったわ・・・・」


ぼく達は黙って、お母さんの声に耳を傾けることを心に決めた。





回想はいりまーす。




「亜沙羽ちゃーん!院長先生がお話あるんだって、院長室まで行って来てね!!」

「はーい!先生、院長先生なんの用事かなぁ?」

「さぁ?亜沙羽ちゃんに大事なお話って言ってたよ!」

「そっかぁ・・・じゃッ!行ってくるー」


院長先生、なんのお話かなぁ?

優奈ゆな七恵ななえ晃平こうへいじゅん愁斗しゅうとのいつものメンバーで遊ぼうと思ってたのにぃ・・・・

ほんと、なんの用だろォ?



「失礼しまーす!院長先生?亜沙羽だよぉ」


ノックをして、院長室に入った。


「亜沙羽、大事な話があるからこっちにいらっしゃい。」

「うん!」


いつも優しい先生の重々しい口調に不信感を覚えたが、さほど気にすることもなく、言われたとおりに院長室のソファに座った。

ふかふかだぁ!


「亜沙羽・・・・」

「なぁに?」


言いにくそうにしている、院長先生に言葉の先を催促した。

なんだろォ?


「落ち着いて聞いてね?」

「うん?」

「亜沙羽のこと引き取りたいって言う、人が居るの・・・」

「え?」


引き取る?私を?

それって・・・・・・


「もう、ここには居られないってこと?」


そんなのヤダよ・・・・


「・・・そうよ。」


ヤダ・・・・絶対にヤダ・・・・どうしてここに居られないの?

なんで?そんなのヤダよ・・・

ここには、いっぱいいっぱい友達が居るのに・・・・小学校にだって・・・


「絶対に嫌。」

「亜沙羽、引き取りたいって言ってくれてる人はね?良い人なのよ?お金持ちのお家らしいわ・・・」

「お金なんか知らない!!私絶対に嫌!ここから離れたくない!!」


どうして知らない人の所に行かなきゃなんないの!?

そんなのおかしい!

絶対に嫌


「亜沙羽・・・・ここに居るより、幸せになれるわ・・・・だから・・・「嫌!!」


私は院長先生の言葉を遮って、振り返ることなく院長室を後にした。

ドアの閉まる音が大きく響いていた。



引き取られるなんて・・・絶対に嫌!!

だって・・・ここには・・・


「亜沙羽?どうしたんだよ?すっげぇ顔して」

「愁斗・・・・・」


俯いていた顔を上げて、声の主を見ると・・・サッカーボールを持って、

立っている、大好きな人だった。


「おわ!?なんで泣くんだよ!?俺なんかしたか?」


いつの間にか流れ落ちていた、涙を拭いながら

私はぶんぶんと首を横に振る。


「腹でも痛ぇのか?」


またも首を横に振る。


「あー!もう!!とにかくこっち来い」


私は微かに頷いた。

それを見てか、愁斗は私の腕を引いて歩き出した。



「で、どうしたんだよ?」


裏庭まで連れて行かれて、そう優しく尋ねられた。


「どうもしてない。」

「はぁ!?」

「どうもしてないもん。」


何故だか分からないけど、愁斗に言いたくなく私は口を閉ざした。

もう、涙は乾いていた。


「あのなぁ!!なんもねーのにあんな泣くのか!?お前は」


頭をがしがし掻きながら、少し大きめの声を上げた愁斗・・・

そんな大きい声で言わなくても!


「目にゴミが入っただけだもん!!」

「ふざけんな!ゴミを避けれるような奴が!!」

「なッ!うっさい、とにかく何でもないの!!」

「ほぉ!?いっつも意地でも泣かないような気の強い奴がなんでもないのに泣いてたのか!?」


うッ・・・・

ムカつくなぁ・・・


「関係ないじゃん!」

「ある!悪戯が失敗したらどうすんだ!?」


そっちかよ!!

ちょっとは心配しろよ!!


「それに・・・・元気が取り得の奴が泣いてると調子狂うんだよ!!とっとと元気になれ!!馬鹿野郎」

「誰が馬鹿だ!」


でもまぁ・・・一応心配してくれてるみたいだね・・・・一応だけど・・・

別に嬉しいとかじゃないけど!!

心配するのが当然でしょ!?幼馴染として!



「愁斗・・・・」

「なんだよ?」

「話したくなったら言うから・・・・」

「分かった。じゃッ、行くぞ!!あいつら待ってんだからな!!」

「うん!!」


短い言葉を交わして、みんなの待つグランドに向かった。

さっきよりも心が軽くなったような気がした。


お母さんの過去編入りました。

長く続きそうですけど、お付き合い下さい。

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