1/1
じぐざぐぱずる
事梨ハルは、主人公だった。
秀逸にして唯一、聡明にして酩酊、快活にして豪傑、奔放で勇猛、愛を笑い、悪をも笑う。
その小さな背に背負った想いは星の数。
絶望を前に腕を組み、不遜に口角を吊り上げる。
私の知る彼女は誰よりも強く、誰よりも強い光を放っていた。
そう、放って、いた。
数多の物語、幾多の出会い、数えきれぬ程の涙と死闘の果て、
彼女は、事梨ハルは散った。
誰に恥じることのない、勇敢で、自由な最期だった。
さあ、物語を始めよう。
彼女のいない物語を。
英雄を欠いた寓話を。
事梨ハルの消えた、世界の続きを。
私は、そのために彼女を殺したのだから。