#2 「説明」
狩矢直樹は生きていた。それは何故か?答えは簡単。この部屋なんと!床が無いのだ!!ふざけんな!床が無いってどんな部屋だよ。まぁ、神様には床なんて必要ないのだろう。
「気に入ってくれたかい?僕の部屋は☆」
「床が無い部屋を気に入る物好きな人間なんてそうそういねぇよ」
吐き捨てるように、げっそりめな声で言ったつもりだった。ロキにもそれが伝わったのか
「なんか、疲れてるねぇ???」
なんて言ってきたが正直応えるのも億劫なくらい疲れていた。
「そろそろ説明するけど、、、ホントに大丈夫?死にそうな顔してるけど」
ほっとけ。ただ、そのくらい今は大丈夫じゃない。しかし、奴の話を聞かなければ先へ進まない、進めない。だから必要最低限の言葉で応じた。
「あぁ」
「んじゃ、まずこの異世界についてだが」
まただ。またあの真剣な声、真剣な顔だ
「この異世界、、、宇宙の銀河系って考えてくれると分かりやすいと思うが」
つまりコイツは世界、、、より正確には
星がたくさんある、と言いたいのだろうか。確かにコイツ言葉にたくさん☆つけてるしなぁ(しみじみ)
「君がいける異世界は6つあるんだ」
おぉう。SMGの数と同じでちょっと驚いちまったじゃねーか。あ、あれは星じゃなくてギャラクシーの数か。
、、、ただ、今の話の「君がいける」って部分が気になるな。なに?俺だけ選択肢少なかったりすんの?
「んで、その6つある世界にはそれぞれ世界名っていうのがあるんだよ。今はA、B、C、D、E、Fと置いとこうか」
なんか数学の証明みたいな説明だな。最後につまりA≡B、とか言い出すのだろうか。
「Aが一番つまらなくてFが一番面白い。君は、、、面白い方が好きだろう?Fを選んだらどうだ?」
なるほど。やはりそれぞれの世界ごとに特色、特徴があるのか。つかコイツ明らかにFに誘導してるよな。、、、ちょっとカマかけてみるか。
「なぁ、世界ごとの治安ってのはどんな感じなんだ?」
「あー、、、気付いた?」
「あぁ」
気付いた。気づいてしまった。つまり、面白い、つまらない、なんてのは神様から見た基準、価値観でしかない。例えば、喧嘩している人がいるとしよう。その時、当事者達は痛かった、嫌だった、傷つけてしまった、などと抱くものは悪印象ばかりで決して良く思ったりなどしないだろう。しかし、当事者じゃなく、傍観者からしたらどう思うだろう?関係のない人達同士の喧嘩だ。恐らく見ていて面白いと感じる部分もあったりするだろう。つまりは認識の違い、立場の違いだ。まして、上、下の関係が分かりきってるこの世界だ。下のもの達の喧嘩など、面白くてたまらないだろう。
ただ、それだけで面白いというのには些か説得力に欠ける。今のは1VS1という小規模な話だったが、それがもし国VS国という世界単位の話しになったら、、、確かに傍観者、ましてや楽観者からすればもの凄く面白い話だろう。
ただし、俺自身が当事者になるなんてまっぴらごめんだ。
だからそのための治安の確認。これでFの世界が一番治安が悪ければFの世界で戦争が起こっている、ということになる。
「気付いたんなら今、君が考えてる通りだよ。Aが一番治安が良くて、Fが一番治安が悪い」
確定した。戦争が起きてる。怖いなー!Fとか絶対!1度も!1度たりとも!!行きたくないなー。
しかし、これで俺の行く世界は決まった。
「Aの世界に、、、行かせてくれ」
「ならー、、、はい!」
「?」
本?が渡された。なんだこれ?と訝しみながら中身をめくってみると日本語とどこかの世界の言語が書かれていた。
「なぁ、まさかとは思うが、、、」
「異世界なんだから言語も異なってるに決まってんだろ。なに?言語一緒だとかおもってたの?馬鹿じゃねーの?バーカバーカwww」
取り敢えずこのウザイのは置いといて、やはり異世界の言語だった。今からこれ覚えなくちゃいけないのか、、、
「発音は日本語と一緒だからまぁ、問題ないとは思うよ」
つまり文字は読めないわけか。おいおい、本が読めねぇじゃねーか!!
「今から君には異世界の言語を1時間でマスターしてもらうよ」
1時間か、、、それだけあれば覚えるのに
問題はなさそうだ。だが
「なんで1時間?今すぐには行けないのか?」
「当たり前だろ。準備とかあるんだし」
準備、、、何のだろうか?
「異世界で違和感なく暮らしていくためには色んな人物に狩矢直樹は昔からこの世界に存在していました、って記憶を捏造る必要があるんだよ。まぁ、言い換えるとすると戸籍作りだな」
記憶を作るか、、、さすが神様やりたい放題だな。ドラえもんよりすげぇじゃねーか。
「その間に覚えてろ、と?」
「うん。そうだね。ちなみにあともう一つあるんだけど」
何がだよ。は、はやくぅ、焦らさないでぇ(クソボイス)
「現実世界での記憶は一部を除いてほぼ全て消えるんだ」
「、、、は?」
「ではでは!!楽しい楽しい異世界生活!!いってらっしゃ~い」
「ちょ!待っ!!」
その叫びも届かず、直後。意識が暗転し、意識が彼方へと消え去っていった。