①風呂め お父さんが黒人ボクサー(ヘビー級チャンピオン)にボコボコにされる。
どーも!
RYOです!
ついに最新作が書けました!(まだ一話でしかもプロローグ笑)
書いていて面白いのでたぶん読者の方もおもしろいとおもいます!(調子のりすぎましたすいません)
では読んでみてください!
「レディィィィィ……ス! エンドゥゥゥ! ジェントルマァァァンっ!!!!! おまたせいたしましたぁ!!! 男のプライドと代々守り続けてきた老舗銭湯を懸けた世紀の一戦!!!!!!!! そのゴングがまもなく鳴らされようとしています!!!!!!」
鈴の音通りにあるベルベル商店街、の中にある松の湯。その目の前に急遽、設置された場違いな特設リング。それに隣接された実況席でカンフル剤をうたれたかのようにテンションマックスのアナウンサーが怒声にも似たような声を張り上げていた。上空に目をやればヘリコプターが二、三機飛び回っていてスポットライトのようにリング周辺を照らしている。映画の撮影か何かかよ。
「おい息子よ」
しかもよく見れば地井ベーカリーが焼きたてのパンを今日の日に集まってきた観客に売りさばいてやがるではないかよ。あの野郎ども、三日前にベルベルを見捨てて寝返りやがったくせに! 情もかけらもないやつだ。
「有馬君? もしもーし」
あっ! クラスの女子も見に来てるじゃん。嫌だな……絶対に休み明けネタにされるだろこれ。っていうか今日一度もオンラインゲームにインしてないじゃねーかよ。朝から逃走した父さん捕獲するので忙しかったから仕方ないか、後でゆっくりダンジョン行こっと。
「優れた我が遺伝子を受け継がれし息子よ……父さんの言葉が聞こえぬか……」
爪伸びてきたな……休みだからって伸ばしすぎた、後で切ろう。爪が伸びすぎてると童貞だと見抜かれるって都市伝説をクラスのやつが言ってたな。ま、俺、童貞なんだけどね♪
「自分の父親が戦場に行くのに、シカトかこのクソ息子がぁぁぁぁぁ!」
「ごっふ!!!!!!!!!!!」
赤いグローブをつけた親父にボディーブローをきめられた。相手にすると面倒だからと、無視しすぎた報いがきちゃったよ。腹にきれいなのをもらっちまったぜ。
「息子よ! 俺が今どんな気持ちだと思う? わからん! わからんだろうな! たかが銭湯を守るためだけに、なんで世界ヘビー級チャンピオンと殴り合いをしなきゃならんのだ! しかも黒人だよ黒人! お父さん死んじゃう!」
「ゴホっ! ゴホ……父さん……違うよ……殴り合いじゃない……ボクシングだよ」
「一緒だ! そしてもっと正確に言えば俺は今からサンドバックになりにいく!」
はは、おもしろいぐらいに父さんの顔から血の気が失せていくのがわかる。スマホで撮っとこう。
「ぬぁあにが! たかが銭湯じゃ! こんの道楽息子がぁ!」
「くぬっふ!」
俺の次は父さんが父さんに痛恨の一撃を股間におみまいされていた。親子三代でなにしてるんだか……。ロンギヌスの槍、神の杖、怒りの一撃を老人ステッキで決めたのは三代目番頭を務める俺のじいちゃんだ。急所にあたったので父さんはひどく悶絶している。今から試合なのにかわいそうだ。ほんとうにかわいそう。
「ずべこべ言わずにリングにあがれ! 貴様にご先祖様から代々伝わる由緒正しい銭湯の看板がかかっておるのじゃからな! もし負けるようなことがあれば貴様を打ち首にしてやるわ!」
「……はぁ……はぁ……痛くない……大丈夫……。ふ~……、よし。……試合前に大事なとこやりやがって!だ! か! ら! 勝てると思ってんのか親父! 相手のごっついゴリラみたいなやつみてみろよ! 黒人だぞ? しかもヘビー級の本物のボクサーだ! 専門の職業だぞ! ってかせめて階級ぐらいあわせろよ!」
自分の父親ながらいさぎの悪い大人だ。もう決まってしまったことなのだから気のすむまで殴られればいいものを……。ベルベル商店街、そして超老舗銭湯であるうちの松の湯、その立ち退きを守るために残された手段という手段はすべて惨敗。この土地を買収しようとしてるのが相手のゴリラボクサーのセコンドのところに立っているスーツ姿の嫌味な野郎、上須賀コーポレーション社長の息子にして御曹司の上須賀春鳩だ。上須賀は見た目もそうだが、まだ若い経営者からなのか立ち退きを断った俺ら商店街に高額な立ち退き金ではなく今回のようにゲーム感覚でいろいろと勝負を挑んできた。野球から始まりサッカー、バスケ、水泳、男子四百メートルリレー、砲丸投げ、オセロ、人生ゲーム、スマブラ……。それは上須賀のビジネスに肩を貸した形となりスポンサーやら宣伝の出汁に使われ、今日のようにテレビ中継も何度かされた。そしてそのどれもに我が商店街チームは惨敗して、今日、最後のチャンスがやってきた。もはや俺ら松の湯しか商店街の命運をあきらめていないやつはいなくて、あきらめムードが商店街中に漂っていた。
「申し訳ないですけど、ちゃっちゃとやりますよ松の湯さん。こちらもスポンサーとかテレビ関係者の尺の関係であまり時間がないんです。早く殺され……試合される選手をリングにあげてください」
上須賀はパンパンと手を叩きながらせかすように言い放った。
「わかっておるわい! 若造が! せかすな!」
「ちょっ! あいつ今殺されるって言ったよな! 言ったよな親父! あのゴリラーマンのグローブの中に石とかいれてんじゃねーだろな! おい!」
「黙れドラ息子が! そんなことせんでもおまえは殺されるわい! さあ! 松の湯を命に代えても守ってこい! ドラ息子ぉ!」
なにか矛盾してるような気がするぞじいちゃん……勝つのか殺されるのかわからん。父さんは最後までこちらを見ていたが俺は静かに敬礼をしてその勇士を見送った。
どこからともなくロッ○ーのテーマ曲が場内を包み込んだ。
「大変長らくお待たせいたしました……本日のビッグタイトル! 青コーナー! 未だかつて負けを知らない無敗の男! 世界ヘビー級王者! ビリー・バートンンンンンンンンン!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」とベルベル特設リングは大歓声に揺れる。
「えっと……赤コーナー! 趣味はスナックで働きだした十八~二十の水商売を覚えたばかりの女の子を自分の過去の武勇伝自慢話を交えてたぶらかすのが好きな男! 松の湯四代目! 炎の四十五歳! 松野道後!」
「ひっこめ!」「ブゥゥゥゥゥゥ!」 とベルベル特設リングは大ブーイングに包まれた。あたりまえだ。
「なんで? なんでそんなこと知ってんだ? 個人情報保護法はどうなったんだよ!」
最低な趣味を暴露されたばかりの父さんがリング上であたふたしていると、公開処刑が始まったことを知らせるゴングが鳴り響いた。
いざ始まってみると俺はすぐにリングから目をそらした。父さんがボッコボコにされる姿は見たいけど、血とか流血シーンは苦手だからだ。
「いけえ! ドラ息子! そこじゃ! ふぉっ? 土下座しとる場合か! 立て! 立つんじゃ! こりゃ! ボクシングに足払いは無しじゃ! あ! あ~……タオル! タオル投げとるじゃろが! 降参じゃ! 試合を止めてやってくれ!」
見ていなくても隣にいたセコンドのじいちゃんの反応とセリフでリング上でどんな惨劇が行われていたか察しがついた。それにしても、いくらなんでも……開始直後に土下座すんなよ父さん………。
カンカンカンっ! 軽快にゴングが鳴り響き試合終了を告げた。
「ただいまの試合! 一ラウンド十秒テクニカルノックアウト! 勝者……ビリー! バートン!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」ベルベル特設リング周辺は湧きに沸いた。そしてゴリラボクサーはそのまま実況者からマイクを取り上げてお約束なのか英語で十八番を歌いだした。
「ドラ息子! 大丈夫か! ケガはないか!?」
「きょのやりょう、ほくそんにゃこといえたなくそおやじ」
俺もリングに駆けあがり父さんの顔面を覗き込んだ。口はタコになっていて目は消滅していた。おっと、スマホ、スマホっと、こんな時でも思い出の一枚を俺は忘れない。
「いやあ、松の湯さん。いい戦いでした。これはテレビ局もいい数字が出ますよ」
手をたたきながらにっこり笑顔の上須賀が近づいてきた。
「若造! よくもわしの大切な息子を」
「おみゃいが、やれっていちゃんだろうが!」
もう喋るな父さん。ってかどこから声がでてるんだ?
「そこの顔面が無残な四代目さんのおっしゃるとおりです。これが最後のチャンスだったのに非常に残念です。この契約書覚えてますよね? この書類に記載されているゲームのどれかひとつでもあなたがたベルベル商店街さんが勝てば立ち退きの件、すなわち巨大ショッピングモール建設の話は無かったことにしますと、そしてさきほどのボクシングがこれでバツになりましたので……」
黒い油性マジックでボクシングの欄に大きくバツをつけられた。
「よし、っと……これで事実上、ベルベル商店街は今日今現在をもって加盟店の全営業を強制的に終了させていただきます。いいですね松の湯三代目の松野熱海さん」
「ま、まってくれい! 松の湯だけは移転させんといてくれ! 後生じゃ!」
「申し訳ありませんがそれは不可能な話です。お年寄りの頼みとビジネスでは価値が違いすぎます。あなたの道楽で年商億の金を生み出せますか? 答えは完全にノーです。……では引っ越しなどの立ち退き期間を設けますので一週間以内にここから出て行ってください。移転先を記載した書類は後日自宅にお送りいたしますのでよろしくお願いします。そうそう、時期がよく今はちょうど夏休みですからね、そこの五代目の息子さんにも手伝っていただけば一週間もいらないぐらい早期に引っ越しも終わることでしょう。たしか……松野有馬君だったね。おじいちゃんとお父さんのお手伝いお願いしますよ」
さすがビジネスマン。俺の名前もしっかり調べてあるとは恐れ入ったね。はあ~、引っ越しか……、オンラインゲームの配線とかいろいろめんどうだ~、あとフィギュアとかケースから出して箱に入れなおすとかないわ~。って、こんな時になんてこと考えてんだ俺は。じいちゃんごめん。
上須賀は俺に引っ越し手伝い命令(てめぇらが立ち退きとか言わなければ引っ越しもしなくていいんじゃねーかクソ野郎)を告げてから礼をしてゴリラボクサーが歌っているほうへ歩いて行った。
「わしの……ご先祖様から守り続けてきた松の湯が……」
「おじいちゃん、ショックなのはわかるけどさ、父さんの顔面がどんどん腫れ上がっていってるからとりあえず何かで冷やすかしないと……一生このままの顔面の可能性もあるんじゃない」
「松の湯が……」
よほどショックなのか俺の声にも反応(たぶん父さんのボッコボコに腫れた顔面を気にしてない)しないじいちゃんは膝からリングに崩れ落ちたままその後一時間ぐらい動かなかった。(なので父さんには俺が家から持ってきた氷をビニール袋に入れて顔面に押し当ててアイシングしておいた)
かくして、ベルベル商店街そして松の湯は現在の場所から撤退を余儀なくされた。
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