残り香
合宿、大切な撮影時間。
そんな時間を寝込んでいるのはもったいないと思いつつも、ここで無理をするよりは、よ明日のことを考えて水分をとって休もうと思い、下に降りた。
そしたらなぜか、撮影に行ったはずの彼がいて不覚にも私は夏の暑さからかもしれないが、少しだけフラッと来た。
彼はこんな暑さなのに、彼が好きだというパーカーを着込んでいた。
対する私は、少しだけ薄着なのと体調不良のせいか寒気がしていた。
温度は、31度を示していた。
「飲み物欲しくて」
「ふーん。体調は?」
「ノーコメント」
そう言うと、彼は深い溜息をついて、来ていたパーカーを私に被せた。
そしてそのまま、私の頭を軽く叩いた
「早く良くなれよ」
そう言って、彼は部屋の外へと出て行った。
残されたパーカーからは、私の好きな彼の匂いがした。
(体温が上がったのは、体調不良のせいだけではないと思う)