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巡査部長と警備員

《登場人物》

 徳永 真実(35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

 高山 朋美(30)      同 巡査部長

 瀬戸 宗助(53)  東城大学教授

 榊  祥子(32)   同大学准教授

 宮崎 俊一(故人)   同大学准教授

 同日同時刻 ――東城大学――


「何で毎度毎度あの変人警部と一緒に行動せねばならないの? イライラするわ。いっそのこと本当にたこ焼きにしてやろうかしら」

 高山はブツブツと小言を吐きながら地下駐車場に向かう。

 地下駐車場は3つの出入り口と車専用の出入り口がある事を現在地の地図で知った。



①:車専用の出入り口



②:地下から8号館へとつなぐエレベーター



③:同じく8号館へとつなぐ非常用階段



④:地下駐車場から直接、大学内につながる階段


 

 高山は直接、大学内につながる階段から地下駐車場へと向かった。階段をどんどん降りて行くと薄暗くなっていく。ここまでに色々とたどり着くには時間が掛かってしまった。そう彼女は方向音痴だった。

 徳永と別れた後で案内図を見るのはいいが、最初に元の駐車場に戻ってしまい、再度、大学の案内看板に戻って確認して色々とあたふたしながら移動してやっとこ事件現場である地下駐車場につなぐ階段を下りている。

「ふう、やっとここまで……どこで道を間違えたのかしら?」 



 【ホント、この方向音痴は治したいわ】



 高山は地下駐車場に辿り着き、周りを見渡す。

 地下駐車場の様子はまるで廃墟のように静かで大学施設の換気用パイプや配管などがむき出しの天井からずっと大きな騒音をたてており、地下駐車場の独特な匂いを漂わせている。

 高山は溜息を吐いて、警備室に向かって行く。丁度、奥の方に二人程度が座れるようなボックス小屋みたいな警備室が見えた。



 【あれかしら? やれやれやっと着いたわ。さてと、警備室を目指さなきゃ】


 高山は警備室に向かうまでに1つ疑問が浮かび上がる。

 それは《何故、一度話を聞いている警備員の方にもう一度同じ話を聞かなければならないのか?》これについては自分の小言からも出ていた事。

「何で、もう一度警備員の証言を聞かなくちゃならないの? これは所轄の刑事から訊いて終わっているはずだし、しかもまた同じ事を……」

 ぶつぶつ言いながら警備室に近づいた。

 警備室で当番をしている警備員は呑気に欠伸をたれながら新聞を読んでいた。

 高山は、警備室に近づいて窓のガラスを軽くノックした。

 警備員は新聞を折りたたんでデスクに置き、怪訝そうに窓を開けた。

「はい。何でしょうか?」

 高山は少しにこやかな表情で警備員に警察手帳を見せて、言った。

「お忙しいところ失礼します。私、警視庁捜査一課の……」

 高山の自己紹介をうんざりしながら警備員が止める。

「あ~~はいはい。刑事さんね。それで事件の事ですか?」

「ええ、もう一度お話を訊きに……」

 高山は内心、いら立ちを隠していた。



 【このクソ警備員め! 警部と同じ腹が立つタイプの奴だわ!】



 警備員は高山に少々皮肉を言う。

「警察の方ってよっぽど同じ話を聞きに来るほど、暇なんですね」

 高山は苦笑いしながら「いえいえ。これも仕事の一つですので……」と返すが、内心のいら立ちは更に増す一方だった。



 【こいつもたこ焼きにして食ってやろうか!】



 警備員はそんな高山を尻目に事件当時、起きた事を話す。

「毎回ここの地下駐車場が開くのは、七時なんですが、どうも宮崎さんの車だけは昨日の夜から元々あの場所に置いてあったみたいなんです」

 高山は手帳に聞いた事を記していく。警備員はそのまま証言を続けていく。

「駐車場の止めた車の表についてはこのパソコンで表示されているんですが、宮崎さんが止めていた駐車スペースは全くセンサーの反応がなくて、後にしらべようと思ってたんです」

「なるほど、事件前日のリストについてもう一度見せてもらえませんか?」

「ええ、構いませんよ」

 警備員はふんぞり返っていた姿勢から少し猫背になりながら机のパソコンのキーボードを叩き始めた。

 高山は自分の腕時計で時間を確かめる。


 

 【この大学に来て20分か~そろそろ、瀬戸教授と話終わってしまっているはず……そろそろ連絡が来るかも。まぁ、地下だから圏外のはず】


 

 高山はそう思いながら鞄から携帯を取り出すが、圏外だった。

「これですね。事件前日の駐車リストです」と警備員は一枚の紙を高山に手渡した。

「ああ、どうもありがとうございます。これが事件前日の駐車リストですね」

 高山は軽く一礼して、リストを見る。そのあとで警備員は皮肉を言いながらパソコンを見ていた。

「所轄署の方もこのリストは持っているはずなんですがね……なんで警視庁の方が持ってないのか不思議で不思議で」

 高山の心は熱く激しい怒りがこみ上げてきそうになってきていたが、我慢、我慢と心の中で落ち着かせようとしていた。そんな中で高山はリストを眺めていくうちに1つの疑問が浮かび上がった。


リストには駐車のリストが表記されていた。


        

   6月6日  地下駐車場 利用者リスト


A-レーン    

  1       谷山 幸介

  2       真鍋 茉利奈

  3       里見 勝利

  4       大河内 康弘

  5       

  6       菅  丹歩


B-レーン 

  1       エディ ワトソン

  2       水木 敏彦

  3       榊  祥子

  4       村島 一

  5       吉田 慎太郎

  6       ドミニク グリフィン


C-レーン 

  1       石橋 安治

  2       李  朱進

  3       足立 京香

  4       E・L ハーマン

  5       沢木 涼

  6       吉野内 恵


 


 警備員はそのリストについて付け足して説明した。

「A-レーンの5番が白紙になっているでしょ? あれが丁度、宮崎さんが止めていた所に当たります」

 高山は奥の事件現場を見た。

 確かに壁には《A-5》と表記されている。

 しかし高山の疑問はそういうものではなかった。

「この駐車場には瀬戸宗助さんの車が停まっていないようですが、何かこれについて決まり事とかありますか?」

 警備員は、質問の内容を理解したのかそれについての答えを簡単にまとめて言った。

「いいえ。特には決まっていませんが?」



 【なるほどねぇ~特に決まっていないわけだ】



 高山は心のうちで理解した。

 警備員は付け足した。

「あっ、なんでしたら第二駐車場に連絡して確認してもらいましょうか?」

「本当ですか!? ありがとうございます」

 高山は警備員に礼を言った。高山の腕時計は既に10分は過ぎていた。そんな中で彼女は1つ心配していた事があった。

 


 《それは徳永がうまく瀬戸と話が出来ているか?》 



 【うまくいってるといいのだけども、あの変人警部じゃ、無理かな~?】



 なるだけ問題が起きない様にずっと心の中で徳永の事を心配している高山であった。

第9話です。


話はまだ続きます。

今回は高山巡査部長回です。

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