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ナイトの指紋

《登場人物》

徳永 真実(35)  警視庁刑事部捜査第一課警部

高山 朋美(30)      同 巡査部長

瀬戸 宗助(53)  東城大学教授

榊  祥子(32)   同大学准教授

宮崎 俊一(故人)   同大学准教授


加藤 啓太(35) 警視庁刑事部鑑識課係長

 6月7日午後2時 ――警視庁鑑識課――

 


 徳永は大学から戻り、高山と共に宮崎の事件の関係する事を聞きに行った。鑑識課の仕事場に行くと、そこに、徳永と幼馴染みの加藤啓太が、「おお、来たな、と・く・な・が警部」と皮肉る。

 徳永は丸眼鏡を外してレンズ拭きでゆっくりと撫でながら返した。

「加藤か。悪いが、そんなに時間がないのでなるだけ、今回の事件について、詳しく知りたいんだ」

「さすが、仕事一筋の警部さんだな、俺とは、各違いだな……こいつと一緒にいて辛くないのか? 高山くん?」

 高山は、「少し、癖はありますが、ちゃんとした方だと思います」と自分は、そう思っていないが、なんとか答えた。

「いい部下を持ったな! 徳永」と徳永に対して言ったが、徳永はずっとにこやかのまま表情を変えなかった。

 加藤は、徳永の反応の悪さに話題を変え、本題に入った。

「ゴホン……まあ、世間話はそこまでで、本題に入ろう。今日の被害者の遺留品に面白いのが見つかってな、お前は知っているだろう?」

 徳永は、単調に「チェスで使う、黒のナイトだろう?」と答えた。

「ああ、そうだ、その黒いチェスに宮崎の指紋と微量のハンドクリームに使われる成分それと、致死量以上のシアン化カリウムが検出されたんだ」

 加藤は検出された成分のリストを徳永に手渡した。

「シアン化カリウム?」

 高山は、その用語について謎で、分かっていなかった。

 鑑識課長である加藤は、刑事らしからぬ反応をした高山に呆れてしまい、ため息を漏らした後に機嫌悪そうに答えた。

「はぁ全く、だから新人刑事っつ~のは、何でこう非常識なんだ? あのなぁ、シアン化カリウムってのはなぁ、俗にいう青酸カリの事だよ。それぐらい、刑事なら分かれよ!」

「すっ、すいません」

 徳永が、加藤をなだめる。

「まあまあ、もういいじゃないかよ。彼は、まだ新人なんだからさ~まあ、大目に見てやってくれよ」

「ったく、気をつけろよ。そうそう、面白いのはこれだけじゃないぞ! 実はな、その黒のナイトに被害者とは別の人間の指紋が検出されたんだ」

 徳永は成分のリストよりその話に食らいついた。

「ほんとうか? 別の指紋が付いていたのは……」

 加藤もそれに対して冷静に答えながら、パソコンの指紋照合プログラムを表示させた。

「これを、見てくれたら、分かると思うが、被害者の指紋は、ナイトの馬の背中表面に左手の人差し指と中指の指紋がべっとり付いていた。だけど、ナイトの前の表面部分から別の人間の右手人差し指の指紋が検出されたんだ」

「確かに、付いていますね。べっとりと指紋が……」

 徳永は、指紋の映像を見て、高山に一言、言った。

「高山君。一度、あの東城大学で、宮崎教授に関係を持った人を調べた方がいいかもしれないねぇ。行こう!」

「えっ、何処に行く気ですか?」

「決まってんじゃない! 瀬戸教授のところに話を聞きに行こう。ほら、いくよ。加藤。ありがとう」

「お、じゃっ、頑張って来いよ!」

 徳永は急いで、瀬戸に会う為に加藤に手渡されたリストを返し、鑑識課から出て行った。

 高山もその後を追う。

「ちょっ……ちょっとまってくださいよ~」

「急ぐよ! 高山君」

「何で急いでるんですか? 犯人が分かっているような状況じゃないのに」

 これに対して、徳永は軽く否定した。

「ははは、何、言っているんだよ? 高山君。犯人について僕はこう言える。犯人はこの人しかないだろうね。だけど、遺留品にあった黒のナイト……これだけで事件の犯行を立証するのは難しいよ」

「そんなっ、どうしてですか?」

「だって、その人の動機がどうしても見つからないし、犯人と被害者がいたという証明には、難しすぎるんだよね。分かったかい?」

「じゃ、じゃあ、どうするんですか? どうやって、事件を解決するんですか?」

「今から、瀬戸教授に話を聞きに行こう!」

「えっ? どうしてですか?」

「被害者をよく知っている人だから!」

 高山は、徳永の考えている事がよく分からなかった。

 そういえば、警視庁に配属する前の時代に、彼女はこんな事を聞いたことがある。高山の入学した警察学校で噂になっていた事で、徳永真実という警部が警視庁にいるが、あまりの切れ者であるうえに曲者でもあるという。

 簡単に言うと変人だった……という噂だったが、この噂は事実と言っていいだろう。

 


 そう頭の中で。




 【そんな噂もあったなぁ……】




 と思っている間に徳永の距離はあいており、高山は我に戻り、追いかけていく。

「ちょっと、待ってくださいよ。早すぎですよ~」

「君が遅いだけでしょう。早く来なって……」

 2人は警視庁の地下駐車場に向かい、徳永が停車させていた愛車に乗った。

 愛車はエンジンの轟音を轟かせて発進し、警視庁の地下駐車場を出る。徳永はアクセルを踏み、急いで東城大学へと愛車を走らせていった。


第5話です。


話はまだ続きます。



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