―名前―
《登場人物》
徳永 真実(35) 警視庁刑事部捜査第一課警部
高山 朋美(30) 同 巡査部長
瀬戸 宗助(53) 東城大学教授
榊 祥子(32) 同大学准教授
宮崎 俊一(34) 同大学准教授
同日、東城大学 第二駐車場
高山は、第二駐車場に辿り着き、警備室に寄った。
警備室には、地下のとは違い、4、5人が入れるぐらいの広さで中に警備員が二人ぐらいが会話をし、一人がパソコンを見ていた。
高山は警備員に声をかける。
「すいません」
警備員が反応し、微笑みながら返した
「はい。何でしょう?」
「警視庁捜査一課の高山です。あの~地下駐車場の警備室の方に連絡してもらっているはずなんですが……」
「ああ~はいはい。あなたが高山さんですね。連絡の通り、リストですね。少々お待ちください」
「あ、はい」
ちょっとの間、待っていると何処かで聞いた音楽が流れている。そして若干の振動が鞄のポケットから震わせた。
「あ、ちょっとすいません」
警備員に断りを入れてから携帯を取出し、電話相手が誰か確認する。相手は徳永だった。
「もしもし、警部! 遅いですよ~~」
『あ、ごめん。でも連絡しようとしたら地下だったから連絡しようがないだろう? ああ、そんな事より実は君に頼みがあって、今そっち向かってるんだけど、ついでに調べて欲しいんだ』
「えっ? 調べて欲しい事って?」
『今、駐車場のリストを用意してもらっているでしょ? 実はそのリストに《向島ボード》っていう車が停まっていないか調べて欲しいんだ』
高山は確認する。
「《向島ボード》ですか?」
『うん。そう《向島ボード》っていう車、書いてあるはずだから確認してみて』
電話の中、警備員が、リストのコピーを終了して、高山に小声で知らせる
「あの~、リストコピーができましたけど?」
高山は、電話のマイク部分を手のひらで押さえて、警備員に伝える。
「ありがとうございます」
高山は、話し相手を徳永に切り替える。
「リストのコピーが丁度出来たそうです。今、どちらにいるんですか?」
徳永は、地下の階段からでて大学の西門に向かっていた。徳永は歩きながら電話越しの高山に話す。
『今、西門から出るところだよ』
「じゃあ、すぐ来てください」
『ちょっと待っててくれ』
徳永は、電話を切り、スーツの胸ポケットに携帯をしまいながら歩いていく。
高山は、電話を鞄にしまい、警備員にリストをもらった。
「ありがとうございます」
警備員は、リストの説明をする。
「いえいえ、ここのリストは、この駐車場の入口であるここで、名前をご記入頂いて駐車券を渡す事になってます。で、出る時に、駐車券をあちらの機械に通すシステムです。一応、前日のリストと今日の昼までのリストですね」
リストには、何十人ものの名前が書かれている。
6月6日 第二駐車場 駐車リスト
A01 玉木 俊介 B01 矢島 恵 C01 山村 茂
A02 JosephReese B02 太田 健太郎 C02 宮内 佑香
A03 林 涼香 B03 渡邉 竜太 C03 板倉 俊輔
A04 鴻上 琢磨 B04 瀬戸 宗助 C04 張 劉楊
A05 池田 遼 B05 小西 麻里奈 C05 渡部 雄平
A06 遠藤 友紀 B06 田中 昌幸 C06 日下部 亮
A07 市村 肇 B07 AdaGrierson C07 BrianAuenmüller
A08 山下 康弘 B08 吉村 孝文
6月7日 第二駐車場 駐車リスト
A01 山下 康弘 B01 JosephHdoson C01 李 朱進
A02 吉田 慎太郎 B02 渡邉 竜太 C02 宮内 佑香
A03 大石 康恵 B03 小西 麻里奈 C03 鴻上 琢磨
A04 山村 茂 B04 市村 肇 C04 内村 涼介
A05 田中 昌幸 B05 眞鍋 茉里奈 C05 太田 健太郎
A06 玉木 俊介 B06 大河内 康弘 C06 EdiieWatson
A07 水木 敏彦 B07 EdwardHerman C07 桑田 一郎
A08 谷山 幸介 B08 里見 勝利 C08 菅 丹歩
A09 瀬戸 宗助 B09 井田 善次 C09 川村 康恵
A10 沢木 涼 B10 熊木 たえ C10 渡邉 和樹
A11 DominicGriffin B11 田中 隆 C11 向島 重幸
A12 和田 靖典 B12 西川 希美 C12 王 進詠
A13 MollyGarfield B13 喜田 哲彦 C13 向井 佳那恵
A14 李 凛 B13 田村 真希 C14 徳永 真実
リストの中には、瀬戸の名前もあったが、《向島ボード》という名前はなかった。
高山は警備員に訊いた。
「あの、すいません。《向島ボード》さんはここにはいらしてないんでしょうか?」
「はい? ちょっと待って頂けますか? 確認しますので」
「よろしくお願いします」
そのやりとりをしている時、丁度、徳永がやってきた。高山は徳永の姿を見つけ、大きく手を振った。
徳永はそれを小さく返して、高山のところに近づいていく。高山は徳永に呆れを感じながら言った。
「何、してたんですか? 遅いですよ」
徳永は、軽く謝った。
「ごめん。ごめん。遅くなってしまって、色々と地下の警備員さんと話してたから、それより……」
徳永の眼には第二駐車場のリストが写っている。高山は徳永の視線に気付き、リストを手渡し、説明する。
「それが、ここのリストです。残念ながら、警部の探している《向島ボードは》ないみたいですよ」
「ふ~~ん。あ、そうなの?」と徳永は返しながら、リストを見た。すると徳永は軽く微笑みを浮かべていた。
高山は、徳永が変に微笑みを浮かべている事に違和感を感じた。
「警部、何を微笑んでいるんですか?」
「いや、何も。警備員さん」
警備員は徳永の呼びかけに反応した。
「はい?」
「このリストもらっていいですかね?」
「ええ、コピーですし、構いませんよ」
徳永は警備員に「ありがとうございます」と礼を言い、リストをスーツのポケットに入れ、自分の愛車へと向かう。
「あっ!? ちょっと警部!! すいません。ありがとうございました」
高山は警備員に礼を言い、徳永を追いかけ、徳永に訊いた。
「警部、もういいんですか?」
「ああ、もうこれで十分だよ」
「でも、警部が言っていた《向島ボード》はリストにも載っていなかったじゃないですか!」
「いや、載ってるよ」
徳永はリストを高山に手渡し、指でリストに記載されてある名前を指した。
「今日のリストのC11を見てごらん」
高山の目は徳永の言葉通り、C11にそこの欄にはちゃんと《向島 重幸》と記載されていた。
「あっ、もしかして、これ」
徳永は高山に微笑みながら教えた。
「《向島ボード》は店名。もし、これが誰かに呼ばれて大学に行った時、店名ではなく自分の名前を使うはずだよ。しかも、《向島ボード》は個人経営らしいしね。よっぽど知られてない限り、お店の名前は利用しないと思うんだ」
「なるほど」と高山は納得した。
二人は徳永の愛車にたどり着き、愛車に乗った。
二人はシートベルトをつけて、徳永はカーナビで目的地検索を行っている。高山はその光景を見ながら訊いた。
「ちょっと待ってください。本庁に戻らないんですか?」
徳永は即答した。
「うん」
高山もすぐ訊いた。
「じゃ、どこへ向かうんですか?」
「どこって《向島ボード》だよ」
徳永は、キーを差し込み、エンジンをかけた。
第11話です。
今回やっと徳永と高山合流です。
話は続きます!!