プロローグ
《登場人物》
徳永 真実(35) 警視庁刑事部捜査第一課警部
高山 朋美(30) 同 巡査部長
瀬戸 宗助(53) 東城大学教授
榊 祥子(32) 同大学准教授
宮崎 俊一(34) 同大学准教授
6月6日午後2時前 ――城東大学8号館3階834教室――
「え~、この凡例からして見られるのは、危機的状況に対して人間がどう対処していくかが必要で……」
この教室では、瀬戸教授が渋い声で犯罪心理学について講義している。時計の短針が2時を指したと同時に、教室のスピーカーからチャイムが鳴りだした。瀬戸は左手の腕時計を見て講義終了時間であることに気づいた。
「では、この凡例については次回の講義としよう。教科書151ページの凡例について課題を出すから、来週までには必ずやってくるように。今日の講義はここまで」
瀬戸は、マイクをスタンドに片付け、教科書を閉じて鞄にしまった。そして、鞄を右手に持ち、教室から出ようとしたとき准教授の宮崎が瀬戸を呼び止められる。
「瀬戸教授! 少しお話したいことがありまして」
「なんだね?」
「次の研究案ですが、是非、私の提案を採用していただきたく思いまして……」
それを聞いた時、瀬戸は、3時間の講義の疲労のせいか、研究がどうのこうのとかの話にうんざりしていた。
「わかった。じゃあ、それについて、7時に私の研究室に来てくれ。色々話したいこともあるのでな。」
「分かりました」
宮崎は軽く頭を少し下げた。
瀬戸は教室を出ていき、そのまま自分の研究室がある本館へと向かって行く。
頭を上げ、どんどん姿が小さくなっていく瀬戸を見て宮崎は右手を強く握りしめていた。
6月6日午後7時前 ――瀬戸教授研究室――
研究室内では、数名の学生と榊・宮崎准教授、そして瀬戸が次のゼミの研究テーマを議題として議論している。
瀬戸は、今回、決定した研究テーマについてゼミ生達に確認した。
「では、次のゼミ会の研究テーマとして宮崎君の提案である、猟奇殺人犯の犯罪心理としよう。異論はないな?」
ゼミ生達から異論がないらしく誰も手を上げなかった。
「よし、誰もいないな。では決定だな。櫻井、他の学生に伝えといてくれ。課題も忘れないように。それでは今日は解散。お疲れ様!」
そう言って席を立ち、瀬戸はホワイトボードに書かれている研究案を消す。それと同時に学生たちは瀬戸や宮崎と榊にお礼を言った後で荷物を持って、研究室から出て行った。
「ありがとうございました」
ゼミ長の櫻井はメモを取り終わり、それを鞄に詰めて「お疲れ様でした~」と言って急ぎ足で研究室を出る。
榊もパソコンの電源を落として、瀬戸・宮崎に向かって告げた。
「すいません。今日は、どうしても出なくてはならないのでお先に失礼します」
彼女は頭を下げ、鞄を持ち研究室を出る。瀬戸はデスクに座ってパソコンでメモを打ちながら挨拶を返した。
「おつかれさん!」
「お疲れ様です」
榊が帰った後、瀬戸は宮崎に訊く。
「チェスは得意かね?」
「ええ、まぁ……」
彼はいきなりの質問に、何と答えればいいか分からず。その場しのぎで答えた。
「そうか、じゃあ、1回やってみないかね?」
瀬戸は研究棚の奥から古めのチェス盤を取り出す。
空気に押されて宮崎は教授の誘いにのることにした。
「分かりました。でも、なかなか古そうなチェス盤ですね」
いかにも高級そうなチェス盤を宮崎はじっと眺めている。
「これは、オーダーメイドってやつだよ。20年も前に作ってもらった代物でね……」
瀬戸はそう言って盤上に駒を並べた。宮崎に先手か後手か決めてもらった。
「君が先手で構わないよ。おっ、そうだ。コーヒーはいるかね?」
そう言って席を立ち、瀬戸はコーヒーメイカーでコーヒーを作ろうとした。
「頂きます」
宮崎は、瀬戸の言葉に甘えた。そして盤上の白のポーンを触る。瀬戸からコーヒーを渡された後で瀬戸が対面側に座り、コーヒーを1回飲んでからゲームが開始。
1手目……宮崎のターン、b2、白のポーンをc2に移動
後手、瀬戸……g7、黒のポーンをg5に移動
何手目になったのか分からなくなりだしたときに、瀬戸は、いきなり席を立ち、自分のデスクにあるハンドクリームを取出し両手にまんべんなく塗って席に戻る。
宮崎が黒の駒を取ったとき、瀬戸がハンドクリームを塗ったせいか少しべたべたしていた。そうこうせずに、チェックメイトになり瀬戸が勝った。
まぁ、彼にとって予想していた事だろうが……
「いや~、面白い勝負だったな。とてもよかったよ」
教授は負けた宮崎を見つめている。
「私の負けですね。参りました」
宮崎は右手の親指の爪を噛んだ後でコーヒーを飲んだ。すると宮崎はコーヒーカップを置いた。
その途端、苦しみだして両手で首や口をおさえた。
「がっ、ゴホッ」
苦しみながらその拍子でチェス盤をテーブルから床に落とし自らも床に倒れた。
手が赤い……
宮崎は最後の力を振り絞り、バラバラに床に落ち、転がっている《黒のナイト》を自分のズボンの左ポケットに入れる。
だんだん自分が映し出す映像がかすれていく。次第に苦しみが無くなっていく。かすれた映像から瀬戸が見える。何かを言っているようだ。
【しゃべれない……】
宮崎は何もできず、そのまま動かなくなってしまった。
瀬戸は、倒れている彼が動かなくなったのを確認する。
「悪いな。これも人の為でね」
あらかじめ用意したゴム手袋とゴミ袋を用意して、急いで机の上を片付ける。
片付けた後は、急いでチェス盤と駒に着いた指紋を消す工作をした後で、元の研究棚に戻して、コーヒーカップをよく洗った。そして研究室に残っているのは、死体と瀬戸だけとなった。
宮崎の血を拭き、瀬戸はそのまま担いで研究室を出た。そのまま宮崎を職員専用の駐車場まで運び、宮崎の車の運転席に乗せる。
【ここまで運ぶのに相当かかってしまったな】
そう思いながら開けたままドアの鍵をロックし、車の鍵を死体のズボンの右ポケットに戻し、ドアを閉めてそのままここを後にして研究室に戻り、急いで鞄を持って自分の車に向かう。
自分は焦っていたのか、警備員に「お疲れ様です」と言われていたのに無視して早歩きで自分の車に向かってしまった。
宮崎の車とは別の駐車場なので、また死体を拝むことはないと考えると少し安心している。
自分の車にたどり着き、鍵を開け乗り込んでルームミラーをのぞいた、自分の顔が少し青くなっているような気がした。瀬戸は見るのをやめて深く溜め息をつき、自分を落ち着かせてから車のエンジンを作動させ、アクセルを踏んだ。
新作です。
下手くそが書いています。超展開はご了承ください。
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推理ものです。