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1-8:MPKはマナー違反ですよ

途切れていた文を直しました。ご指摘ありがとうございます。

「うみゃ~~~なぜ追いかけてくるの~~~」


聞こえてくる叫び声に吸血鬼だけではなく、村人たちも視線をその声の方向へと向けました。

時々、火炎系の魔法が使われているのか明るくなる為、そちらの方向から何かが押し寄せてくる事が感じられはするのですが、まだその全体像を見定める事ができず戸惑いが広がりました。


「ふん、なにか解らないが消えとけ!ダークアロー」


戸惑いの状況からいち早く復帰した吸血鬼は、向かってくる者へと攻撃を放ちました。

その時、闇の向こうからドテッっという何かが派手に転んだような音が響きました。


「ん?」


疑問に思いながらも闇の奥で自らの攻撃が着弾した手応えを感じることが出来たため、状況を見極めようと目を凝らしました。

闇が不利に働く事が無い吸血鬼は、自らの攻撃が近づいてくる者にそれ程影響を与えた気配が無い事に気がつき、更なる攻撃を加え始めました。


「ダークアロー!なんだ!何が!ダークアロー!」


自らの攻撃が確実に何かを倒している手応えを感じながら、それでも近づいてくる者に焦りを感じた時、漸く目の前に迫りつつある者の姿が確認できました。


「な!魔獣の群れだと!」


ブラウンウルフからはじまり、グレーウルフ、ビッグベアなどこの近隣に現れる魔獣の中でも高ランクの魔獣が集まって向かってくる姿に、咄嗟に退却に移ろうとした吸血鬼に対し、いつの間にか空から現れたブラッドバットが攻撃を開始しました。そして、咄嗟にそのブラッドバットを撃退した吸血鬼は、その為に逃走のタイミングを失っていました。

魔獣の群れから逸早く飛び出したグレーウルフが吸血鬼に圧し掛かろうと飛び掛ります。そして、その間にもブラウンウルフなどが其々に攻撃を開始しました。


「くそっ!なんだこいつら!」


自分の攻撃によって魔獣たちから敵性認定を受けてしまったと思いつかない吸血鬼は、吸血鬼本来の怪力を使い、次々と魔物を撃退していきます。しかし、撃退する合い間にも遅れてきた魔獣が次々と攻撃を開始します。


「な、数がおお」


「ギャイン!」


眼前のブラウンウルフを切り裂き、その横をすり抜けて飛び掛って来たもう一匹のブラウンウルフを切り裂いた腕を引き戻しざまに殴り飛ばします。そして、更に追加で現れたシルバーウルフを切り裂こうとした時、死角へと回り込んでいた二匹のシルバーウルフが飛び掛りました。


「邪魔だ!」


左右の腕の20センチ程伸びた爪を使いそれぞれの喉を串刺しにした瞬間、延びきっていた左腕に中央真下から先ほど殴り飛ばしたブラウンウルフが瀕死の状態から噛み付きました。


「ぐわぁ~~~~」


吸血鬼の叫び声が辺りに響き渡る中、チル村の住民は目の前で始まった魔獣と吸血鬼の戦いをただ呆然と眺めていました。

その中において、唯一村長の妻は吸血鬼の攻撃が止まったこの猶予をなんとか活用しようと支持を飛ばし始めました。


「銀を集めて!聖銀があればいう事が無いわ!あと聖水があればそれも!このチャンスで撃退できなければ私達は全滅する、急いで!」


「結界石は残っているなら持って来い!足止めに使う!」


「吸血鬼とて火でダメージは出るはずだ!火矢を用意しろ!」


村長の妻の叫び声で我に返った男たちは自分達が思いつく限りの指示を飛ばし、そして自分達も走り出します。


「これでも、勝てないでしょうけどね・・・」


村長の妻は指示を出した後、愛剣を強く握り締めながらも先程見た吸血鬼の力を思い浮かべ呟きました。



吸血鬼と魔獣の戦闘は、ついに最終局面を迎えようとしていました。

当初は数で押していた魔獣たちも、戦闘に参加する魔獣がいなくなった後は一匹一匹と屠られ、ついにはオーガが1匹になっていました。そして、比較的動きの遅いオーガは吸血鬼にとっては相性の良い相手であり、今までの苦労を感じさせることの無いスピードとパワーによってあっさりと魔獣を引き裂き戦闘を終了させました。


「ちくしょう」


それでも、この魔獣との戦いにおいて、吸血鬼は左腕を失い、さらには体の到る所にダメージを負っていて、更には限界に近い魔力を使用しており、極度の飢餓状態へと陥ろうとしていました。

そして、その視線を村へと向けます。戦いによって村から若干離れた為、闇の中へと沈んでいる吸血鬼の赤い目が、暗闇の中で赤く光りました。そして、その光を見てしまった住民達は、拙いと意識した時には闇へと沈んでいきました。


「はぁ、はぁ、、梃子摺らせやがって」


「うわ~~、ごめんね、モンスター擦り付けちゃった~~」


ダメージを引きずりながらゆっくりと村へと近づこうとした吸血鬼は、突然後ろから掛けられた声に驚き振り向きました。

そして、振り向いた先には一人の年若い少女が、所々薄汚れながらも怪我一つ無く立っていました。そして、その腕に持たれたメイスに気が付き吸血鬼は慌てて距離を取ろうとしました。


「うわぁ、ごめんなさい、怪我だらけだね急いで回復するね!」


「貴様何を言って、「リカバリー!」ぐぎゃぁ!」


吸血鬼は、飢餓状態によって自動発動しているはずのチャームに対し一切反応の無い少女に違和感を感じ、相手を確認しようとしました。しかし、その時きゅまぁは自分が巻き込んでしまったと勘違いし慌てて部位復元も可能なリカバリーを吸血鬼に対し唱えました。


元来殴りと呼ばれる邪道ではありますがプリーストであるきゅまぁの神聖魔法、しかも上位回復系魔法であるリカバリーによって、魔獣との戦いによって元々瀕死に近いダメージを受けていた吸血鬼はまともなレジストさえ出来ずに大ダメージを被りました。


「うわ、怪我が酷いのかな、もしかして痛感がもどった?メガヒール!メガヒール!」


中途半端な回復が、逆に痛みを復元したと勘違いしたきゅまぁは、急ぎ回復魔法を連発します。

そして、その為にアンデット系の魔物である吸血鬼は絶叫を上げ倒れ込みました。


「ば、ばかな、こんな情けない死に方を」


「え?あれ?」


最後まで告げる事無くその体を灰へと換え消えていく吸血鬼に、きゅまぁはただ首を傾げました。


「「「「うおおおお~~~~」」」」


すると突然村の方から大歓声が響き渡りました。


「へ?」


慌ててそちらへと顔を向けると、手に手を取り合って喜ぶ住民達が煌々燃える松明によって、まるで舞台の上のように照らし出されています。そして、きゅまぁは今灰になった吸血鬼の場所にコロンっと落ちている魔石に気がつきました。


「えっと、もしかして今のは魔物だったのかな?」


その魔石を拾い村へと歩きながらそんな事を呟きながら、きゅまぁは村の中へと立ち入りました。

そして、住民の中から村長の妻がきゅまぁの前へと歩いてきます。


「村をお救いいただきありがとうございます」


「あ、はい。ただ、申し訳ないんですけど何が何やら解ってないんです。何があったんですか?」


「え?あの、村を救助に来ていただいたんでは?」


「あ~~その~~、ごめんなさいあたし迷子なんです。ほんとはナイガラの街に行こうとしてて」


きゅまぁのその言葉に、村長の妻はそのあまりの方向と距離の違いに戸惑いと疑問を感じました。


「わたくしはこの村の村長を務めてますジルの妻メアリーと申します。失礼ですがお名前をお聞かせ願えますでしょうか?」


「ラビットラブリー所属のきゅまぁです」


「え!王都の!」


メアリーは目の前の少女と、イグリア精鋭と言われる騎士団がうまく繋がらず困惑をさらに強めます。

すると、そこに老婆が現れメアリーへと助言をしました。


「こんな所で立ち話もあるまい」


「そ、そうですね、きゅまぁ様こちらへおこしください」


まだ動揺を残しながらもメアリーはひとまず自分の家へときゅまぁを案内しました。

書いてて思いました。村長はどこ?

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