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1-7:何か忘れてないですか?

誤字訂正しました。ご指摘ありがとうございます。

イグリア南端の都市キルトの転移門の前には次々に転移して来た兵士達が現れました。

そして、兵士達は現れた順番に広場で整列をしていきます。


真っ先に転移して来たプードルは、広場中央に佇むキルト領主タッカートを前にして国王からの指示書を手渡しました。


「お待たせしました。それでタッカート殿、状況はどうなっておりますか?」


この魔族領と接するイグリア南部における重要な中継都市であるキルトを、代々統治する武闘派貴族であるキルト一族総領であるタッカートは、その肩書きを感じさせない小柄な体と温和な笑顔でプードルに答えました。


「プードル殿、お久しぶりですな。できればこんな形でお会いしたくは無いものでしたが」


「は!されど今は危急のとき、陛下も情報を欲してみえます」


「ふむ情報ですか、この都市は昔から対魔族用の仕掛けを十二分に行っております。街のいたる所に聖銀も使用されております。だてに長期に渡って魔族との最前線に位置してはおりませんぞ。そのおかげでキルトにおいては今の所問題となる病人は発生しておりませんな。ただ、領内の村々においては特に南へ行けば行くほど被害が発生しております」


内容を報告するタッカートの表情が次第に厳しいものへと変化していきました。


「現在、その病気の調査は進んでおりますか?原因などを含めてですが」


「残念ながら、当初は懸念すら抱いておりませんでしたが、ここまで状況が進むとやはり魔族ではないかとの確信は強まっております。あとまだ真偽の確認は出来ておりませんが、死んだ者が生き返って人を襲ったという情報もあります」


「ふむ」


「プードル殿は陛下からどのようにお聞きになっておられますか?」


「は、お気に召されるかは別ですが、まず情報を集めろ、無理をするな、必ず2PT以上で行動しろ。以上です」


直立不動のまま、周りに聞こえるのを一切考慮していないプードルの様子に、タッカートはこの場で問い合わせた事を後悔しました。プードルの発言は、住民達に対して考慮といった事をまったく考えていない内容でした。


「そうですか、それで陛下は我々にはいかように対処せよと?」


「は、転移門を死守せよとの事です」


なるほど、間違った判断ではない。この転移門さえ無事であれば援軍の早期投入も可能だ。タッカートはそう判断しキルト守備隊に対して結界石を使用した防壁の作成を指示しました。


「キルト警邏隊から2PTを転移門の警護につけよ。そして、3交代で24時間の警護体制を構築せよ」


タッカートはキルトの兵士へと指示を出し、その間に整列したプードル他2フォース計48名を見ました。そして、その兵士達に深々と頭を下げます。


「何卒、村々を宜しくお願い致します」


「「「「は!」」」」


そのタッカートに対し48名が一斉に剣を胸の前に掲げ敬礼を行いました。


◆◆◆


宴会から一夜が過ぎたコルトの森鉱窟村では、昨夜の二日酔いにて倒れている面々がいつの間にかアンデッドのような動きで復活し、その後鍛冶談義が始まっていました。


「むぅ、そうすると鋼では限界があるか」


「だな、今以上に腕を磨くには最低でもミスリルの鍛造を始めんと腕はあがらんぞ」


「ミスリルか、こっちではもう殆ど採掘されないな」


ベアルとバルが顔を合わせて話し込んでいます。

そして、その後ろの席ではドワーフが各々鍛えた武器の自慢大会が始まっていました。


「ほれ、これがわしの鍛えたツーハンドアックスじゃ」


「おお!見事な輝きだ!」


「ふ、俺も負けてないぞ、これが俺の鍛えたポールアックスだ!」


「おお~~これも見事だ!」


机の上に並べられた斧、斧、斧、まさにどこかの武器屋の店先のような光景が広がっています。


「えっと、さっきから斧系の武器しかないんだけど」


先程まで、鍛えられた武器を手に取り、こっそりとスペックを確認していたキュアリーは目の前に広げられた武器をみながら首を傾げました。


「「「「あたりまえではないか!斧こそ男の武器だ!!」」」」


集会所にいたすべてのドワーフが一斉にキュアリーを見て叫びました。


「えぅ、そ、そうなんですか」


「「「「おぅ!」」」」


あまりの勢いにキュアリーと、ベアル達が思わず仰け反りました。


「それで、ミスリル鉱石は分けてもらえるの?」


「ああ、わしらは代りに酒と食料と酒を分けてもらえればよい」


「もしかして、大事だからお酒を2回言いました?」


「おう!」


胸を張るバルの様子に溜息を吐きながら、キュアリーはアイテムフォルダーに格納してあった果実酒を取り出しました。


「このお酒はどう?」


「む?」


バルはキュアリーが出した果実酒を、自分のグラスへと注ぎ慎重に口をつけました。


「ちと甘いが美味いな、ただ俺には物足りないが」


「甘い?ちょっとこっちに頂戴!」


唯一今回の集団にいた女性のドワーフが興味深々といった様子で果実酒に口をつけました。


「美味しい!これいいよ!」


そして、勢いのまま果実酒を壜ごとゴクゴクと飲み干して行きます。


「えっと、そうやって飲むものじゃないんだけど」


又も溜息を吐きながらキュアリーは改めてバルと鉱石との交換交渉を始めました。

そして、だいたいの条件が出揃ったところで、バルがキュアリーへと尋ねます。


「ところで、あんた何をつくるんだ?ミスリル鉱石をそんなに使うなんて」


「はい、ミスリルは軽いですからルンの戦闘用装備でも作ろうかと」


「ルン?」


訝しそうにバルが尋ねると、呼ばれたと思ったのか集会所の済みで寝ていたルンが起き上がってこちらの様子を見ています。


「もしかして、あの狼か?」


「ええ、戦闘で少しでも助けになればと思って、鉄だと重いので最初はチェーンで作ろうかと悩んでた所でした」


「ほう、良ければ見学させて頂いてもいいかな?」


「はい、それならさっそく行きます?」


「うむ」


キュアリーはバルと共に鍛冶場へと行こうと移動を始めます。

すると、今までワイワイガヤガヤ騒いでいた者達も合わせて立ち上がりました。


「え?もしかして皆さんも見に来るんですか?」


「鍛冶に関してならば見に行かざる得ないだろう」


「だな、俺達との違いがあるかもしれん、新たな発見もな」


それぞれに何か理由を述べながらも好奇心満々の様子にキュアリーもその気持ちがわからない事も無い為苦笑を浮かべながらも返事をしました。


「あたしの後でみなさんの作業もみせてくださいね」


そして、人数の関係で、ベアルからの提案もあり皆揃って村で一番大きな鍛冶場へと案内されました。

そこでドワーフ達が持ってきたミスリル鉱石をまずミスリルのインゴットへと精錬していきます。


「む、良い道具を使っているな」


「昔から使ってる道具ですけどね」


ミスリルの金床、金槌を使うキュアリーを見ながら、ドワーフ達がなにやら囁きあっています。

ベアルが竈の火を落とさないように管理する為、キュアリーは精錬に集中しインゴットはどんどんと形作られていきました。そして、今度はそのインゴットを小さなプレートにしていきます。


「ほう、熟練の腕だな。全てに置いて作業が早いな」


「あれは何を作ってるんだ?」


「さて?」


周りの雑音を一切気にする事無くキュアリーが作業を続けていると、いつの間にか廻りの炉も火を灯してドワーフ達が何かを作り始めました。


「見ているうちに自分達でも何か作りたくなったんですよ。それで、いつの間にか製作合戦になってしまいましてね」


自分の作業がまず一段楽した為、キュアリーが物問いたそうに周りを見ると作業を見守っていた年若いドワーフの一人が答えます。


「貴方はいいの?」


「ええ、わたしは鍛冶士ではなく商人ですから」


確かにそのドワーフは、他に比べ線が細い感じがしました。それでも、そのドワーフの手を見ると太い指と分厚いごつごつした手の為言葉通りに商人と思っていいのか疑問に感じました。


「ほんとに商人?とてもそうは見えない」


「まぁこれでもドワーフですから」


そんな会話をしながら、キュアリーは小さなプレートを繋ぎ合わせていきます。そして、他よりも大きなプレートを金槌で打ち、少しずつ反りを入れながらもチラチラとルンを見ました。

そして、ある程度形が出来たルンを呼びます。


「ルンおいで」


「ヴォン!」


そして、キュアリーは傍らにきたルンの首にプレートを合わせながら微調整の箇所を確認していきます。


「なるほど、ネックガードという訳ですね」


「ですね、動物同士だとまず相手の首を噛み千切ろうとするって聞いた事がありますから。あとはお腹を守る為の装備とか腕の保護とか色々と作らないとですし」


「なるほど、ただニーズは少なそうですね」


「うん、たぶん?」


そして、出来たプレートに焼き入れを行い、さらに魔法強化や保護を付加していきました。


ミスリルネックガード(ルン用ネックガード)(+2)

物理防御+15(+5)、魔法防御+10(+5)、AIG+5(+2)、DEX+3(+2)


「うん、こんなものかな」


「おお、見せていただいても?」


バルは、キュアリーから渡されたネックガード前面のプレートに刻印を刻み込んで完成したネックガードを、真剣な顔付きで確認します。


「むぅ、中々の物ですな。強化付とはこれまた、しかし、この部分は何ゆえ聖銀を使われたので?」


そして、バルは止め具の装飾に聖銀を使っている部分を指差して尋ねました。


「えっと、そう教えられたから?」


キュアリーはレシピ通りに作った為、そういう物だという意識しかなく中途半端な回答しか出来ません。


「いや、どうせ聖銀を使うなら装飾をもっと前面に入れ、聖銀の効果も付与する方が良いと思われますが、それに、止め具に聖銀では若干耐久が不安ですな」


「えっと、そういう物?」


「もし宜しければアレンジさせて頂いてもよろしいですか?」


そして、キュアリーの許可を受け、バルはネックガードの改造を行い始めました。


「ここは、聖銀で、ここはミスリルで、この部分は擦れるといかんな、ビッグベアの皮を使うか」


キュアリーの目の前でネックガードが更にアレンジされていきます。そして、その作業はMMO時代にはなかった作業の為、キュアリーは食い入るように眺めていました。


「ほれ、こんな感じでどうだ?」


ミスリルネックガード改(ルン用ネックガード)(+2)

物理防御+15(+5)、魔法防御+20(+5)、AIG+6(+2)、DEX+3(+2)

追加効果:HP回復(小)、魔族戦闘時物理、魔法防御+3%


完成したネックガードを見ると魔法防御とAGIの数値が上がっています。そして、更には追加効果まで付与されていました。


「バルさんすごい!」


「ふ、ドワーフをなめるなよ?」


ニヤリと笑いながらも完成したネックガードをキュアリーに渡してくれました。


「バルさん、アレンジの仕方を教えてください!」


「ふむ、まぁ構わんぞ、そこそこ腕もあるようだしな。面白いものが作れそうだ」


そんな二人の遣り取りを作業しながらも聞きつけたベアル達は、こぞってバルに弟子入りを申し込むなど一層騒ぎは大きくなっていきました。


「ドワーフが現れたって王都に報告しなくていいのかなぁ?」


ただキャロだけはドワーフが現れた衝撃を未だに引きずりながらもっともな疑問を口にしたのですが、残念な事に誰一人その言葉を聞きとめた人はいませんでした。


チロ村は次回に分割されてしまいました。

ちょっと投稿間隔が空いてしまったのでとりあえずチロ村は次回に!

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