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1-4:知らない食べ物は危険です

始めてみる食べ物や飲み物はつい試してみたくなります。

幾度も失敗しているんですけど・・・

先日もスパー●リングコー●ヒー(一部伏字)を見て、思わず購入。はい、二口ほどで挫折しました。


きゅまぁと出会った翌朝、キュアリーは手紙の返信を持って宿へと向かいました。

宿へ入るとキャロがせっせと厨房で何かを作っているのが見えました。


「おはようございます」


「ヴォン!」


キュアリーとルンがキャロさんへと挨拶をすると、キャロさんもこちらに気がついて挨拶を返してきました。

そして、厨房で作っていたものを手にこちらへ来ます。


「んっと、これは何ですか?なんかのフライみたいなんですけど?」


「ああ、きゅまぁさんから教えてもらったんだ、プリプリしてて美味しいって」


「ふ~~ん、食べてみました?」


「え?う、うん」


何か視線が泳いでいるキャロさんを余所に、あたしはテーブルへと腰を落ち着けます。

そして、アイテムボックスから昨日の内に作ったいくつかの料理を取り出しました。


「あ、キュアリーさんも料理を作ってきたの?」


「はい、きゅまぁさんに食べてもらおうかなって」


「あ、なるほど、食生活寂しそうだったもんね」


キャロさんの言葉に頷きながらも、いくつかの料理をテーブルへと並べていきます。


「うわぁ、すっごいいい匂い!これキュアリーさんが作ったの?」


「はい、一応料理は趣味ですから」


そんな会話をしている内に、きゅまぁさんが二階からまだ眠そうに下りてきました。


「なんか良い匂いがします~」


鼻をヒクヒクさせているすがたはとても人族には見えませんね。

そんな姿をほのぼのとした気分で眺めながら、キュアリーとキャロはきゅまぁの世話を甲斐甲斐しく行います。


「すっごく幸せです。お誕生日が来たみたいです」


満面の笑みを浮かべてシチューや柔らかなパン、鶏のから揚げなどを食べるきゅまぁの横でキュアリーも興味津々でキャロの作ったフライを眺めます。


「これ食べてみていい?こっちで見たこと無い料理です」


「あ、それ美味しいんですよ!エビフライみたいにプリプリしてるんです」


「食べてみても?」


「あ、はい!ぜひ食べてみてください」


キュアリーはきゅまぁの目の前にある3本のフライのうち一本を口にしました。

齧った歯ごたえは正に海老です。プリッとした歯ごたえが何とも懐かしく感じます。若干口に広がる味が違うとは言え、ぜんぜん許容範囲です。


「うわぁすごいね、本当に海老みたい。これ美味しいわ」


そんなキュアリーの様子を、冷や汗を流しながらキャロが眺めています。


「あの、美味しいですか?」


「うん、美味しいよ。歯ごたえも良いし、味も悪くないし。キャロさん味見してないの?」


「え、ええ」


「食べてみてよ、美味しいって」


キュアリーの笑顔の圧力に負け、キャロはそのフライを恐る恐る一口齧りました。


「あ!美味しい!これ美味しい!タルモ虫ってこんなに美味しかったんだ!」


そのキャロの発言に、今度はキュアリーが口元を押さえます。


「う、うそ、あれってタ、タルモ虫なの?」


「ええ、きゅまぁさんが料理して欲しいって」


「うん、美味しいんだよ!よく茹でて食べるけどフライが一番美味しいもん!」


その会話を聞きながらも、キュアリーの顔色が次第に悪くなっていきます。


「ご、ごめん、ちょっとトイレ・・・」


そう告げると、キュアリーは二人の怪訝そうな顔に見られながら、駆け出すようにトイレへと向かいました。

その後、しばらくしてなぜかどっと疲れた顔をしたキュアリーが戻ってきて、おもむろに手紙を取り出しました。


「えっとおまたせ、あと、きゅまぁさんこれが返事です」


「あ、ありがとうございます。かならず渡しますね!」


嬉しそうにアイテムボックスへとその手紙を仕舞いこむきゅまぁを見ながら、キュアリーは聞いてみたかった質問をしました。


「きゅまぁさん、なんか色々大変みたいだけど辛くない?」


「ん?何がですか?」


「いえ、ゆっくり寝る事も余り出来ないみたいだし、ご飯もなんかちゃんと食べれてないみたいだし」


キュアリーの心配そうな問いかけに、きゅまぁは予想もしていない笑顔で返事をしました。


「楽しいですよ?毎日いろんな事が起きて、みんなでワイワイばたばたして。以前だったら考えられなかったですし」


「でも、きゅまぁさんは帰り損ねたって聞いてますけど」


「あ、はい、あたし爆睡しててログアウト出来た事を時間過ぎてから知ったんですよね。さすがにちょっと落ち込みました」


それでも、すでに気持ちに整理がついているのか穏やかな笑みで語るきゅまぁさんにやっぱりこの女性は強いなって思いました。


「ごめんなさい、変な事聞いて」


「いえ、キュアリーさんはどうなんですか?楽しいですか?楽しんでますか?」


「う~~、それ言われると辛いけど、ルンがいるし、まぁまぁかな?」


「辛くなければOKですって、辛くなったらいつでも言ってくださいね、あたしでよければ相談にのりますよ?」


そんなきゅまぁを見ながら、なにかこの女性には敵わないなっと改めてキュアリーは感じました。


「はい、その時は御願いしますね」


そう言って笑う二人を、キャロがちょっと羨ましそうに眺めていました。


その後、きゅまぁの出立に際し、一応ここからナイガラの街までの道を教え、道中の食事用サンドイッチをきゅまぁに渡してからキュアリーは護衛用ルーンウルフヌイグルミをきゅまぁに渡しました。


「一応、旅の護衛件慰めになればで」


「うわ~~可愛い!可愛い!モフモフです!」


そんな感じでズレズレに伸びた出発でしたが、きゅまぁは軽く手を振ってナイガラの街へと向けて旅立って行きました。


◆◆◆


キュアリーときゅまぁが別れを惜しんでいる頃、エルフの森ではイグリア王都から一通の手紙が届いていました。

そして、その手紙を読んだ長老アルルは今までののんびりした表情を一変して、厳しい表情を浮かべます。


「ユーナ、サイアスを呼んでくれ」


「はい」


アルルの召集に急ぎ訪れたサイアスに、アルルはイグリアから届いた手紙を渡します。

目を通し終わったサイアスに対し、アルルが問い掛けました。


「どう思う」


「そうですね、原因不明の治癒の効かない死亡者ですか。しかも場所はどれも南方地域に偏っていると」


「うむ、少々思い当たる事があるのだがね、発生地域を見て何か思い当たらんか?」


アルルの問いかけに、すごにサイアスも思いついたのか驚きの表情を浮かべました。


「まさか!しかし、すでに魔界はこの世界から消滅していますが!」


「さて、消滅したのか、それとも切り離されたのかは解らないが、無くなったわけではない。あくまで認識できない所に行っただけの事だ」


そのアルルの言葉に、サイアスもユーナも顔を見合わせて黙り込みました。


「魔界が復活すると思われますか?」


「解らん」


ユーナの問いかけに、アルルは端的に返事を返しました。


「いや、解らんって」


呆れた顔をするサイアスに対し、真剣な表情のアルルが答えを返しました。


「ただの1プレイヤーに解る事ではない。ただ、備えておく事は出来る。問題は魔界のプレイヤーは何人ぐらい残っているのか、そして、その残っているプレイヤーはどんなプレイヤーなのか。魔界との戦力差はどれくらいなのか、戦争になった場合の戦場は?など考えなければならない事が多すぎる」


「イグリアはそこの所は何も言って来ていませんね」


「そこまで考えていないのでしょう」


「うむ、まずいな、サイアス悪いが急いでイグリアへ向かってくれ。恐らく手紙を出すくらいだから何らかの調査をするとは思うが、下手をするといらぬ被害を出しかねん」


「了解しました!」


急ぎ長老の間を退出するサイアス。

そして、残ったユーナはアルルに対し心配事を確認しました。


「長老はキュアリーさんの居場所を判っているのでしょうか?もしこの騒動にキュアリーさんが単独で巻き込まれるような事があったら」


心配そうな顔をするユーナに対し、アルルは苦笑を浮かべました。


「まぁその心配はなかろう。ユーナ、マイシスターがどういう性格か、そして、行動範囲、行動基準を考えればおのずと今いる場所も思い当たるだろう」


「えっと・・・ナイガラの街ですか?」


「ふむ、お前がまったく理解できてない事がわかったな」


笑いながら告げるアルルに対し、ちょっとモヤモヤした気持ちが起きるユーナでした。


◆◆◆


その頃、南の小さな村にしずかに危険が訪れようとしていました。

村の人口がやっと50人に届くかのようなチロ村は、それでも気候に恵まれ村人の気質も穏やかで、魔物の強さもそれ程強くない為、今までこれと言った問題も無く過ごしてきた村でした。


その村において、つい二日前から一人、二人と体の不調を訴える者が増えてきました。

今では、ベットから起き上がることすら出来なくなる者が現れ、この村で唯一治癒の魔法を使える老婆が何度となく治癒の魔法を唱えてみても、一時的に回復はするのですが、すぐに容態が悪化してしまいます。


「これは、病気なんかじゃないね」


その老婆の言葉に、村の村長を務める男が顔を引き攣らせます。今、その老婆が治癒の魔法を掛けたのは、その村長自身の息子でした。


「病気じゃなければなんだというのだ、治す方法はないのか?!」


悲痛な響きをもった問いかけに、治癒士は淡々と告げます。


「はっきりとは言えん。ただ、わしがまだ幼い頃にこの症状をみた事があるよ」


「そ、それでその病気は!」


「だから病気じゃない、これはな、命を吸い取られているのさ」


「命を吸い取るだと?」


「ああ、魔族さね、吸血鬼、吸精鬼、何かはわからんが恐らく魔族がこの街に来ておる。今もいるのか、夜に来るのか、はては誰かに入れかわっとるのか。そこまでは解らんがね」


「馬鹿な!魔族はもうこの世界にはいないのだぞ!」


否定を続ける村長に、今までその傍らでじっと話を聞いていた村長の妻が老婆に問い掛けました。


「どうすれば良いのでしょう。息子が助かるには」


「さて、まずは村の結界の強化。王都への救援の依頼。近隣の冒険者を集めて魔族の撃退。やる事はいっぱいあるさ」


「冒険者を雇うとなると、結構な費用が」


「掛かるだろうね、それが嫌ならみんなで村を逃げ出すのも一つの手さ、まぁ逃げれるかはわからんがね」


「馬鹿な!魔族などいないのだ!お前が治癒出来ていないだけだろう!」


動揺し、ただ喚き散らすだけの夫を無視して、村長の妻は治癒士の老婆に断りを入れ、急ぎ村の住民達に指示を飛ばしました。

そして、自分もまた箪笥の奥から古びた布の包みを取り出します。


「まさかわたしがこの包みを開く事になるとは思いませんでした」


その包みの中には、古びたショートソード、篭手、皮の鎧、靴などが纏めて仕舞われていました。


「お前さん冒険者だったのかい?」


少し驚いた様子の老婆に対し、首を横に振り村長の妻は答えました。


「わたしの母が冒険者でした。でも、小さい頃はよく鍛えられたんですよ。今でもブラウンウルフくらいなら退治できます」


力瘤を作って見せるその姿は、とても魔物と戦えるようには思われませんでした。

そして、村ではこの日よりとても苦しく、長い戦いが始まりました。

ほのぼのライフを目指すキュアリーさん、でも世界では色々と事件が起き始めてますね。


あと、タルモ虫は美味しければ問題ないとの獣人達を中心にジワジワと広がっていく予定です。お話の中には出てこないですが

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