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1-3:勧誘を受けるならは慎重にね

サブタイトルは投稿しようとした時にふっと思いついた言葉です。

もう駄目駄目にタイトルや名前を考えるのが苦手なのです。


キュアリーがコルトの採掘の村に滞在を始めて一週間が過ぎました。

その間、村へ2度ほど魔獣が襲撃をしてきましたが少しずつ連携に慣れ始めた男達によってほとんど被害がなく撃退されました。

そして、この地に拠点を築こうと動き出したキュアリーによって、村の中でもいくつかの改革が行われはじめました。


「えっと、もう少し澄んだ水晶はないのですか?」


「う~ん、あねさんの頼みだから渡したいのは山々なんだが、この鉱山であまり水晶は取れないからなぁ」


「そうですか、う~ん、それではこれとこれ、あとこの鉄鉱石を貰っていきますね」


「あいよ!流石だねぇいい所選んでくなぁ」


「慣れてますからね~」


「ルンいくよ!」


「ヴォン!」


キュアリーは村の鉱石管理所へと赴き、自分の製作用の鉱石を物色していました。


「ほんとは、もっと大き目の澄んだ水晶なら村の結界を張ったり出来そうなんですけどね、ない物はしょうがないですね」


「ヴォン!」


「それじゃぁ後であねさんの家に届けとくな」


「お願いしますね~」


鉱石の配達をお願いして鉱石管理所を出たキュアリーはそのまま村の外周部にある畑へと向かいました。


「うわ~~聞いてたけど荒れ放題だね、雑草もいっぱいだ」


キュアリーが村の畑に行くと、そこは久しく手を入れられてない荒れ放題の状態でした。

以前は、村でも自給自足のため、畑が作られ、又その収穫物を使った料理を提供する店、鉱石を買い付けに来る者を泊める宿、酒場など全盛期にはそれこそたくさんの人が行き来していた村ですが、現在はこの畑のように見る影もなくなっているのでした。


「しょうがないね、まずは雑草を抜いて、それから土を耕さないとね」


「ヴォン!」


キュアリーは畑復活のためにアイテムボックスから幾つものアイテムを取り出しました。


「えっと草取り用ヌイグルミのコッコちゃん5羽と、土掘り起こし用ヌイグルミのベアー君5匹。とりあえずこれくらいでいいかな?」


キュアリーはコルトの森の村で畑作業用に使用していたヌイグルミを取り出して畑に放ちます。


「みんな頼むね~」


キュアリーの言葉に反応して、コッコちゃんはお尻をフリフリして、ベアー君は片手を軽く上げてお返事を返します。

そして、それぞれに畑の中へと入って行きました。

キュアリーはそんなヌイグルミとは別に、現在の畑に生えている葉っぱをルンと一緒に確認して行きました。


「あ!これってお芋の葉っぱだよね?」


「ヴォン!」


キュアリーの言葉と同時にルンは葉っぱの根元を掘り返し始めました。

すると、痩せた感じではあるのですが、お芋がいくつか連なって掘り返されました。


「う~ん、ちょっと栄養不足?元々土に栄養がないのかな?」


そんな事を思いながらもキュアリーの畑探索は続きます。

結局、お芋と豆類は痩せていながらも何とか収穫できそうな状態である事がわかりました。でも、それ以外はあまり状態が良くありません。


「う~ん、ベアー君、ミミズさんとかいました?」


キュアリーの問いかけに今まさに土を掘り返し中のベアー君達が首ごと上半身をフルフルと横に振ります。


「むぅぅ、これは土が美味しくないみたいですね」


そう呟くとキュアリーが又アイテムボックスから何かの壜を数本取り出しました。

すると、今まで傍らにいたルンが慌てたようにキュアリーから遠ざかります。


「う・・・ルンはこれ苦手だものね、あたしもだけど、匂いが染みちゃうからコッコちゃんもベアー君もその辺で畑から退避してね~」


キュアリーはヌイグルミ達が畑から出るのを確認して、ポケットからハンカチを取り出しました。

そしてハンカチを口と鼻を覆うようにして結び、その壜を開けて畑に撒き始めました。


「ごほごほ、大地復活薬がこんなに臭いとは思わなかったもんなぁ」


畑に満遍なく壜の中の液体を撒いていると、村のほうから数人の男達がこっちへとやってきました。


「うわ!なんだこの匂い!すっごい臭いぞ!」


「畑の活性剤だよ!なんか畑がすっごく弱ってるの」


「まぁ荒れ放題だったからなぁ、それにしても凄い匂いだな」


「うん、一日もすれば土と反応して収まるんだけどね、ところでどうしたの?慌ててる?」


「うむ、さっき使われてない掘削地で野営してる姉ちゃんが保護されてよ、それで一応あねさんに連絡をしにきたんだ。まぁおそらく見つかりたくないだろうって思ってさ」


「ああ、ドンピシャであねさんの名前だしてたからさ」


男達が心配そうにこっちを見ています。


「あ、ありがとうございます。ちなみに、どんな人です?」


「う~~ん、なんか変な姉ちゃん?」


「うむ、話してる内容が半分も伝わらんし、理解できん」


男達の感想をそれぞれ聞いているうちに、キュアリーのなかにはその人物像にあたる人が一人しか思い浮かびませんでした。


「えっと、もしかしてその人きゅまぁって言いませんでした?」


「え?あれって名前なのか?」


「あれ、まじ名前か?」


「あんた名前はって聞くとなんか叫ぶとしか思ってなかったぞ?」


「あ、えっと、とりあえず村に行きます」


「え?大丈夫なのか?あねさんは逃げてるんじゃ?」


「ええ、でもきゅまぁさんなら大丈夫だと思います」


それぞれの感想に若干頭を抱えながら、キュアリーは村へと向かうことにしました。


◆◆◆


その頃、村の集会所ではきゅまぁがせっせとご飯を食べていました。


「うまうま、あ、このスープお変わりです~~」


せっせとすでに硬くなったパンをスープに浸して柔らかくして口の中へと運んでいます。

実際、すでに食事時間が過ぎていたため、昨日の残り物のパンと朝のスープの残りしかなかったのですが、それでもきゅまぁは喜びを顔中に表してただ只管パンを食べています。

その姿に、あまり食生活が恵まれていない男達が、思わず同情してしまうくらいのありさまで、中にはあまりに哀れさをさそうその姿に涙している男も居ます。


「おう、嬢ちゃん遠慮するな、ほれお代わりだ」


「ありがとうございます~~美味しいです!」


「わずかな塩味しかないスープにこれほど感動するとは・・・哀れな」


村の代表格のベアルは、その姿に真面目に涙していました。

そんな異様な雰囲気をたたえている集会場に来たキュアリーは思わず腰が引けてしまいました。


「えっと、何がおきてるのかな?」


「お、あねさん来てよかったんですかい?」


「うん、きゅまぁさんは良く知ってるし、それに良くも悪くも裏表ないから」


その言葉に、聞き耳を立てていた男達もその視線の先にいるきゅまぁを見て、だろうなぁっと内心激しく同意したのでした。


「ふぇ?あれ?あ~~キュアリーさんだ!」


入り口から移動したキュアリーがそのまま、きゅまぁの座る机向かい側の席に座ってはじめてきゅまぁはキュアリーの存在に気がつきました。


「お久しぶりです、あ、ご飯はそのまま食べてていいですよ?」


「あ、うん、ありがと!でも、まずこれ渡さないと!」


そう言うと、きゅまぁはアイテムボックスの中から一通の手紙を取り出してキュアリーへと手渡します。


「ん?手紙ですか?」


「はい!団長から渡されました」


「エリーティアさんから?」


キュアリーはその手紙の封を開けて、中の手紙を取り出し読み始めました。そして、読み終わった後溜息を付きました。


「ん?なんか変な内容だった?」


「いえ、予想通りといいますか、それにしてもきゅまぁさんよく此処が解りましたね?」


「え?うん、なんか歩いてたらここに来た!」


「流石です、噂通りですね、ところでこっから王都やナイガラへは帰れますか?」


「大丈夫かな?ナイガラは微妙だけど王都なら今でもだいたい方角わかってるし」


以前に他の人に聞いたきゅまぁ独自の帰巣本能を本人から聞き、キュアリーはまじめですか!っと内心驚きの声をあげていました。


「すごいですね、あ、今日はここでゆっくりしてって下さい。エリーティアさんへ返事を書きますのでそれを届けて欲しいのです」


「え!そしたら今日は宿で寝れる?」


「はい、寝れますが?なぜです?」


「最近、帰る度にすぐ何処何処行ってくれって言われて野宿ばっかりだったの!」


あまりの発言に、キュアリーはすっごく同情の念が強く沸きました。帰巣本能、天然トラブル探知機、そして、なによりありえないほどの強運!残念ながら隠密的な仕事はまったく不向きながらも探索率、事件解決率が群を抜いて高いきゅまぁは何かと重宝されてしまうのでしょう。


「あ、えっと、今日はゆっくり休んでね。ご飯も美味しいもの作ってもらおうね」


「うん!」


無邪気に微笑むきゅまぁを見ながら、もし自分がイグリアへ行ったらあの現国王と宰相に同様の扱いを受けそうな気がして、尚更イグリアへは行けないなっと思うキュアリーでした。


「さて、あたしはまだやる事があるから、きゅまぁさんはゆっくりしててね」


そう告げると、キュアリーは自分の家へと急ぎました。


◆◆◆


「はぁ、きゅまぁさん無事キュアリーさんに辿り着けるのはいつ頃かしら、まだ大事になる前なら良いのだけど」


騎士団の団長室で報告書を読みながら、エリーティアは溜息を吐いていました。

目の前に次から次へと増えていく報告書には、どれもほぼ同様の内容が書かれています。


「う~~ん、こんな事ならもっとしっかりキュアリーさんを保護してれば良かったのかしら?」


そんな、後悔先に立たずの事を思いながらも、目を通す書類には各町や村で発生している他勢力との小競り合いの報告がどんどんと増えてきています。

元々、治癒術においても、そして何より鍛冶レベルにおいてもキュアリーは他国垂涎の的となっていました。

そして、転移者が激減した今、その価値が数倍にまで跳ね上がっているのです。


「アルルさんは何か知ってるみたいなんですけどでもあのアルルさんですから、ユーナさん辺りから何とか情報をいただけないかしら?」


そんな事をぶつぶつと呟きながら、エリーティアは一枚一枚書類を確認していきます。

そして、あと少しでとりあえず今日の分の確認を終わろうとしたとき、手に書類をもったまま動きがとまりました。


「これって・・・」


そこには治癒魔法の効かない病気が発生して、更にはすでに死者までいるとの報告でした。

自分自身も治癒士であるエリーティアにとって、この世界に来てすでに60年の歳月が過ぎています。そして、その歳月の中で毒、麻痺、呪いなどの状態異常系以外の病気に関しては基本治癒魔法で治る事を経験からしっていました。


「これは、状態異常?う~ん鑑定できる人を送ったほうがいいわね」


そう呟くと、エリーティアは急ぎ王宮へと向かいました。

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