1-22:お風呂ではしっかりと体を洗いましょう
部屋いっぱいに熱気が立ち込めています。鉄鉱石を溶かす為の溶鉱炉の熱、水蒸気を利用して作られた共同浴場では、昼間の時間ながらすでに数人のお客がお湯を楽しんでいました。
「プハ~~」
「ゴクゴク、ふわ~~」
共同テーブルでキュアリー、きゅまぁ、エリーティアは寛いだ様子でコーヒー牛乳を飲んでいました。
「う~~~、こんなにノンビリしたのは久しぶりです~」
「ほんとにね、王都では何かと気ぜわしくバタバタしているから、いっそのことここに住もうかしら」
きゅまぁと、エリーティアさんがそんな事を話していました。ふたりは、まだお風呂で温まった体に共同浴場で購入した薄手のローブを身に着けています。白い肌がほんのりと赤くなって色気をかもし出しています。その為同性でありながら、自分達とは明らかに違う姿にドワーフの女性達がチラチラと視線を投げかけています。
そして、じ~~~~っと何か黒いオーラを出しながら二人の真正面から視線を送っている人がいました。
「えっと、キュアリーさん?なんかすっごい怖い視線を感じるんですけど~~」
最初スルーしていたきゅまぁがついに耐え切れずにキュアリーへと声を掛けました。
「・・・・・捥げろ」
「怖!」
抑揚の無い声でボソリと呟くキュアリーにきゅまぁはドン引きしました。
自分も視線に晒されながらもそんな二人をほのぼのと見つめていたエリーティアもキュアリーへと声を掛けます。
「わたしはきゅまぁほど胸ないわよ?」
「・・・・リア充め・・・」
「あらあら」
まったく話が通じない様子のキュアリーの横へとエリーティアは移動します。そして、キュアリーをバスローブのまま抱きしめました。
「キュアリーさん、勘違いしちゃ駄目ですよ?敵はあれだけですから」
そう言ってきゅまぁの胸を指差しました。
「あの欠食児童のくせに、どこに栄養が貯まるのですかしら?それとも、欠食児童だから貯まるのかしら?」
そんな事を言いながら指差した指でそのままきゅまぁの胸をつんつんとつっつきます。
「え、エリーティアさん、やめてください~~~」
その指攻撃を避けるように胸を両腕で庇いながら身をよじりました。
「ほら、何気なくって振りしてああやって胸を強調するなんて、嫌ねぇ」
エリーティアの言葉に、キュアリーは只管きゅまぁの胸をみながらコクコク頷くだけです。
「エリーティアさん酷!エリーティアさんだってそんなに変わらないじゃないですか!」
「あら、CとDでは全然違うのよ?ましてやEとなんて」
そう言って更にきゅまぁを孤立させようとしたエリーティアは、具体的な数字を出したことによって逆にきゅまぁに掛けた惑乱を解除してしまいます。そして、更には
「キュアリーさん、胸の幸不幸の法則ってしってます?誰もが本来は一定の大きさなんですって、それなのに余分に取っていく人がいて、その為に少なくなる人もいるの。ほら、あそこに泥棒がいるわ」
などと更なる混乱に拍車を掛けます。
「な!エリーティアさんなにとんでも理論を当たり前に言ってるんですか!ちょ、キュアリーさん、目が尋常じゃなくなってますよ!」
「泥棒・・・」
真横にある豊かな二つの果実を見ながらキュアリーはボソリと呟きました。そして、じっと自分の胸を眺めます。その様子にきゅまぁは慌ててフォローを入れました。
「ほ、ほら、キャラ作成時にちょっと数値弄ったりしますよね?現実ではこんなにあるとは「・・・」え?」
きゅまぁが必死に弁解をしている時、キュアリーが何かぶつぶつと呟きました。そして、何を言ったのか聞えなかったきゅまぁが再度聞き返します。
「弄った・・・」
「え?え?」
「あたしも良心の呵責に耐えれるくらいは弄った・・・」
そう言ってじっと自分の胸を見つめます。
「あ、え~~~っと、その」
「ま、まだ成長期ですし、大きくなればまだ希望がありますよ!」
思わず口ごもるきゅまぁと、流石に不味いと急いでフォローをするエリーティアは、二人揃ってキュアリーの胸元を見ます。そして、同時に思いました。
か、加算してこれだったんだ
三人の間に微妙な空気が流れます。そして、その空気を開放してくれたのはやはりルンとウルでした。
ブルブルブル
「うわ!」「きゃ!」「冷たい!」
ウルが3人の傍まで来て全身のお湯を振るい落とします。そして、その時の雫が三人ほぼ平等に降り注ぎました。
3人がそれぞれ慌てたようにその雫をふき取り始めました。そしてウル自身はそのウルの後から来たルンが口で咥えて部屋の隅に移動します。その際にきゅまぁの傍で数回鼻をスンスンさせました。
「う~~ウル酷いよ~」
「喧嘩はするなってことかしら?」
沈黙が途切れてホッとしながらきゅまぁとエリーティアはウルを軽く睨みます。しかし、ウル自身は気にした様子もなくルンへとじゃれ付きます。ルンも何事もなかったようにウルを構い始めました。
「そういえば、ルンがちょっときゅまぁさんを避けてたよね?」
キュアリーもウルとルンを見ていて、今のルンの動作からふっと思いつきました。
「え?そうですか?」
きょとんっとした顔をして、きゅまぁがルンを見ます。そして、ルンに近づいていきますがルンはただ見るだけで特に何も嫌がる素振りは見せません。その様子を見ていたキュアリーとエリーティアは首を傾げました。
「キュアリーさん、特になにもありませんね?」
「さっきはすっごく汚れてたからかなぁ?ちょっと匂ったし」
その言葉でエリーティアはきゅまぁに問いただします。
「きゅまぁ?そういえばここにどうやって来たの?よくここのゲートが判ったわね」
「え?ゲート?あたしジュエリーワームにペッされただけだよ?」
「「???」」
きゅまぁの説明に二人して首を傾げます。二人の様子で理解されていないと判断したきゅまぁは再度細かく説明を始めました。
「えっと、最初は穴に落っこったんです。そしたら、その穴にジュエルワームがいて、ぱっくりと食べられちゃったんです」
「「え?」」
「ジュエルワームのお腹の中でもごもごされてたら、周りの壁?からなんか液が出てきて、ジワジワ来るので一生懸命回復と防御の魔法を使って、なんとか出ようとしたんですよ!メイスも振りかぶるスペース無くて、魔法使おうにもスペースなくて・・・」
きゅまぁは次第にその時の事を思い出したのか、目に涙が溢れて来ています。その様子にキュアリーとエリーティアが慰めようと声を掛けようとした時、きゅまぁが変な事をいいました。
「で、で、齧ったんです」
「「へ?」」
「武器も使えないし、攻撃魔法も使えないし、で、もうどうしようもないので齧ったんです。どれくらい時間がたったか判んないけど、そうやって中で動きながら戦ってたんですよ!そしたら最後にペイッってされたんです」
涙混じりの迫力に、キュアリーは何も言い返せませんでした。そして、エリーティアも同様に、ただ言葉を繰り返しただけでした。
「そ、そう、ペイッって吐き出されたのね、よかったね、ほんとによかった」
そう言ってエリーティアがきゅまぁの顔を見ながら優しく微笑みを浮かべてその頭を撫でようとしました。ただ、キュアリーも、エリーティアもきゅまぁの顔が一瞬引きつった事に気がつきました。
「ん?きゅまぁさんどうしたの?」
キュアリーが声を掛けた時、その横でエリーティアがボソリと呟きます。
「吐き出された?」
その瞬間、きゅまぁの顔がまた引きつりました。
「ん?ん?きゅまぁ?もしかして吐き出されたんじゃないのかな?もしかして、ペイっじゃなくて」
そこまでエリーティアさんが言ったとき、きゅまぁさんが叫びました。
「うわ~~ん、酷いよ!エリーティアさん酷い!気がついてもだまっててくれてもいいじゃない」
顔を真っ赤にしてきゅまぁが叫びます。そして、その言葉の先に思いをはせたキュアリーと、どうようにエリーティアが一歩きゅまぁから遠ざかりました。
ま、まさか・・・ジュエリーワームのお
心の中で二人が同時に同じ事を思ったとき、キュアリーが更に叫びました。
「ジュエリーワームのお腹を食い破ったなんて恥ずかしくて言えないじゃない!」
「「ほへ?」」
顔を両手で押さえてう~う~唸っているきゅまぁさんを見て、ジュエリーワームのお腹を食い破って出てくる姿を想像しました。
「あ~、その~きゅまぁさんもっかいお風呂行こう、背中や頭洗ってあげるから」
「あ、わたしとっておきのシャンプーとトリートメントもってるの、すっごい香りもいいのよ」
そう言ってあたし達はきゅまぁさんの手を取って再度お風呂へと向かいました。
その後、きゅまぁの背中を洗ううちに、キュアリーの手の力がだんだんと強くなっていってきゅまぁの悲鳴が聞えたのはきっと仕様なのでしょう。
え~っと、期待された方、ごめんなさい。万里が書くお話ですから・・・
うん、頑張りましたよ!(どこが?)
とにかくきゅまぁさんがどんどん汚れ役になっていくような?
がんばれきゅまぁさん!きっと明るい未来が・・・あるかなぁ・・・