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1-20:お腹空かせてどこから来たの?

ドワーフの村の中に、いつの間にか真新しい小屋が完成していました。

そして、その小屋の前には”イグリア商会ドワーフ村支店”という名前が書かれた看板が掛けられています。

そして、その小屋の中にはベアルやキュアリー達が机や椅子をせっせと配置しています。


「これでどうですか?」


「そうだなぁ、カウンターをもう少し中央に寄せたほうがよくないか?」


「でも、そうするとなんか部屋全体が狭く感じない?」


「う~ん、根本的に小屋自体が狭いからなぁ」


「ドズルさん達がせっかく建ててくれたのに文句言わないの!」


ワイワイガヤガヤ騒ぎながらも小屋の中は事務所の様相を整えていきます。


「う~ん、しかしこの村に名前が無いとは思わなかったですね。ドワーフ村は無いですよねぇ」


一人の獣人の言葉にキュアリー達が頷きます。そして、ドズルは苦笑を浮かべて答えました。


「まぁな、普段俺達も村っとしか言わないからな。必要なかったんだよ」


こっちの世界に来てから、ドズル達は次第に転移者達で集まり共同で家を作ったそうです。そして、次第にそこに人が集まり家が増え、家族が増え、次第に村になっていったそうです。ただ、転移者達のもつ技術を求め、友好、非友好を含めさまざまなアプローチが外部から行われました。その為、村は次第により一層閉鎖的になっていき、今では数組の商人と、外部へ出て行った村の住人関係者が訪れるのみとなっているそうです。

そして、これが原因のひとつとして、あえて村の名前をつける必要がなかったんです。


「でも紛らわしいですよ?ドワーフ村ってドワーフ領の村の事?って感じで」


「そうだなぁ、まぁ今度みんなで考えてみるさ」


そんな事をキュアリーとドズルが話していると、小屋の入り口からキャロが入ってきました。


「外のテントは大体出来上がったよ、で、まずは何をうるの?」


「おお、ご苦労さん、ただ結構時間がかかったな」


キャロの言葉にベアルはそう返事をすると、中にいた全員でテントの様子を確認に行きます。

すると、テントの横にある小さな、それでいれそこそこの大きさの小屋に気がつきました。そして、その小屋の上にも大きな看板が掛けられていました。


「え~っと・・・キャロちょいまてや、お前達これ作るのに時間掛かってたんだな」


「えへへ」


キャロがそう誤魔化し笑いをすると、周りにいて手伝っていたドワーフの女性・・達も同様にクスクスと笑い始めました。看板には大きな文字で”ルンの愛の巣”っと書かれていたのです。そして、その小屋からはルンと子ウルフが顔をちょこんっと出していました。


「ルン、ウル、お家を作ってもらったんだ、よかったね」


「ヴォン!」


「クヴォン!」


キュアリーの言葉に嬉しそうにルンとウル(命名者キュアリー)が答えます。

キュアリーは露天そっちのけでルンとウルへと駆け寄り頭を撫でながらも小屋の様子を確認しています。そして、その状況を溜息を吐きながらベアルはキュアリーそっちのけで露天の商品の打合せを始めました。

基本的に露天の出し物はイグリア方面の食べ物が中心となる為、キュアリーは必要なかったんです。


「う~ん、だいたい出し物は決まったが問題は通貨単位の違いだな、まぁそれだけ時間が過ぎちまってるからな」


「なんだ、貨幣がちがったのか」


ドズルの問いにベアルは手のひらにあるドワーフ領の貨幣である金貨、銀貨、銅貨を手にしながら答えました。


「ああ、こっちと違ってイグリアでは鉱山が少ないからな。もう30年も前に貨幣を新たに作り変えている。単純に言うと今まであった金貨や銀貨を潰して銅など他の金属を混ぜ、新たに作り直した。だから等価での貨幣取引は難しいな」


「ふむ」


ベアルはそう言いながらイグリアの貨幣を取り出してドズルに渡しました。


「む、確かに純度が低いな」


「ああ、当面の取引は物々交換が主体としないとならんな」


物々交換が主体となれば交易量が増えれば増えるほど問題が発生してくるのは目に見えています。又、交易の限界も自ずと決まってくる為商売的にはとても歓迎されるものではありません。この為、二人はやや重たい溜息を吐きました。


「まぁ急ぐ必要はないさ」


「うむ、まぁこちらも食物が無いというわけではないしな、ただ米や味噌、醤油は早く欲しいがね」


お互い笑いながらもテントのテーブルの上に並べられる食べ物を主体とした商品を眺めていました。ただ、二人の更に後ろの方ではドワーフの主婦達が爛々とした眼差しで並べられる商品を見つめている事に気がついていませんでした。実際に商品を並べているキャロ他の数名は自分達の背中に焼けるように感じる視線に冷や汗を流しています。そして、並べながら絶対売り子はやらない!っと怯えながら心の中で誓っていた事もしりませんでした。


ルンとウルとの交流を堪能したキュアリーは2匹をお供にして村の中を散歩に出かけます。その頃にはテントの商品はほぼ並べられ、まもなく開店といった状態になっていたのですが、ウルがなぜか次第に怯え始め、この場所から離れる事にしたのでした。


「ルン、ウル、ちょっと武器屋へ向かうね、どんなものが置いてあるか見てみたいから」


「「ヴォン!」」


そんな声を聞きながら村の商店街を通ると、そこかしこから声が掛かりました。


「治癒士さん、丁度いいこれ持ってってくれ!」


「あら、治癒士様じゃない、これ美味しいよ、たべとくれ!」


そんな言葉があちらこちらから聞こえてきます。そして、その中には何人か病院で見かけた人たちもいました。


「あれ?モスさんもう働いているんですか!」


その中で一人重度のクリスタル障害で入院していたドワーフがいました。


「おお、まぁうちのかかあが遊んでないで働けってよ、以前のように鉱山で働けるようになるには時間が掛かりそうだしな」


そう言いながらも働ける事が嬉しそうに笑います。そして、モスの後ろのほうではドワーフの女性が小さく頭を下げました。おそらく奥さんなんだと思います。


「そっか、無理しないでね」


「おう!ありがとな」


そう言うと、店先にあった果物の袋をキュアリーの荷物の上に乗っけました。


「まぁお礼だ、ここらの特産ザクロだ、暇なときにでもくってくれ」


「あ、ありがとうございます」


キュアリーは荷物を崩さないようにフラフラしながらも小さくモスとその奥さんへ会釈をして立ち去りました。


「う~~ん、どっかで荷物整理しないと偉い事になりそう」


武器屋へ行くどころか手荷物でいっぱいいっぱいになってしまい、まず荷物をアイテム枠へ収納しないとこれ以上は何も出来ない状況に回りをキョロキョロと見回しました。すると、視界の端で何か見たことのある人影が夢遊病のようにフラフラと歩いていました。


「う~~、お腹がすいたよ~~、お金ないよ~~~」


そんな事をぶつぶつ呟いて歩く薄汚れて髪も、顔も、服もすべて埃塗れ、しかも人相すら汚れて良く判らない、はっきり言って怪しい、危ないとしか思えない姿に、周りにいるドワーフ達も怪訝、怯えた、警戒した表情で見詰めています。

キュアリーがそちらの方へと近づくと、周りからは


「危ないよ!」


「治癒士さん危険だ!」


「今衛兵呼んだから待つんだ!」


そんな声が聞こえてきます。そんな声に引きつった笑顔で小さく頷きながらもキュアリーはその不審者に声を掛けました。


「あの~~きゅまぁさんだよね、でもなんでこんな場所に?」


「んぁ?」


キュアリーが声を掛けると、疲れ果てた顔をあげてきゅまぁはキュアリーを見ました。

そして、キュアリーをまじまじと見詰めた後、ウルウルと目に涙を溢れさせてその場で崩れ落ちました。


「え?え?大丈夫ですか?」


慌てて傍らに荷物を置いてきゅまぁを抱き起こしたキュアリーにきゅまぁは


「あぅ、お腹がペコペコで死にそうなんです~~」


っと溢れさせた涙をそのまま決壊させて子供のように泣き始めました。ただ、泣きながらもその視線はしっかりとキュアリーが傍らに置いた袋の食べ物へと向けられていました。

きゅまぁさんはどうやってドワーフの村へ来たんでしょう?

そもそもこんなに怪しい風体でどうやって村の中に入ってきたんでしょう?


とにかく、少しずつ人が集まり始めたような?

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