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1-19:吉報はバルーンに乗って

プードル失踪の報を受けたイグリアでは、急遽部隊長以上を集めた会議が行われていた。

すでに、魔族がこのイグリアへ侵入を開始している事は公式に発表されていた。その為、どの部隊長も厳しい表情を浮かべて会議室へと集まっていました。


「それで、魔族の侵入経路となるゲートをとっとと破壊するのに何が問題になるんですか?」


身にまとった騎士服を真っ赤に染めた女性、黒姫が棘を隠すことのない口調で発言をしました。

それは、会議の進行にしたがって最終的にはゲートを破壊するか、破壊しないかで意見が分かれて一向に進まない会議に苛立っての発言です。


「だから先ほどから言っている。壊すのは容易だ、しかし一度破壊すれば次はないかもしれない」


「そうだな、安易な選択はするべきではない」


「はっ容易、容易ねぇ」


反対意見を言うその部隊長達を見て、黒姫が馬鹿にするように鼻を鳴らしました。

馬鹿にされた部隊長が黒姫を睨み付けますが、そんな物をまったく気にせずに黒姫は意見を続けます。


「もうすでに多数の兵士達が死んでるんだ、しかもプードルの時は精鋭と言って良いほどの連中が22名死んでる。しかも相手はたったの2名だったそうだ。それを容易とはね」


「それは油断したからだ、現にコルトバは相手を返り討ちにしている」


「相性がよかったのさ、プードル達と同様に問答無用で強襲されてれば結果はどうなったか」


「その通りだ」


今までじっと黙って話を聞いていたコルトバが相槌を打ちました。そのコルトバに会議室のみんなの視線が集中します。


「転移者なしでは危険すぎるな、そうでなければ参加などとても出来ん」


静かに淡々と語るコルトバの言葉が、会議室の熱を一気に冷やしていきました。


「コルトバ、もしそこで負ければ我々は全てを失うぞ?賭けに出るには準備が足らない」


一切の発言を控えてきた遙が、ここで初めて発言しました。それも普段とは違う真剣な眼差しで。


「どう考えてもそのゲートを破壊しなければ勝ちはない、違いますか?」


「さて、お前達を鍛えてきたのは無駄になったと?」


「格が違います、それは陛下が一番ご存知かと」


コルトバがそう言ったとき、会議室の扉のほうが騒がしくなりました。


「何事だ?」


「さて?」


遙を含め一同が怪訝な顔をして見つめる中、会議室の扉が大きく開かれ真ん円で巨大エルフが入ってきました。


「よお!吉報を持ってきたぞ!」


そして、その真ん円エルフであるアルルに続いて入ってきた者を見て遙が驚きの声をあげました。


「ムラマサ!ムラマサじゃない!」


「よ!ギルマスお久しぶり」


そう言って入ってきたのは一人のドワーフでした。


「あんたいつこっちに来たのよ!」


驚きの為に素の言葉遣いになっているのにも気がつかず、遙はムラマサの元へと駆け寄りました。


「いやぁ、こっちっていうなら20年くらい前に来てたんですよ、ただドワーフ領以外に移動が出来なかっただけで」


ファリスはその言葉にいち早く反応しました。


「移動できなかったって事は」


「うむ、今コルトの森に移動できるゲートが出来たそうだ」


アルルの言葉に驚きの声が上がります。


「まぁとりあえずこれだけ持ってきたわ」


そう言うとムラマサは会議室の机の上に、次々と真新しい装備を置き始めました。


「「「おお!」」」


周りから今度はどよめきの声が上がります。そして、遙は積み上げられる装備を見ながら呟きました。


「いける、これはいける!」


「ん?何がいけるん?」


装備を積み上げる手を一旦止め、ムラマサがその言葉に反応しました。


「パワーレベリングだ!」


「え?この世界ってスキル重視だから難しいんじゃ?」


「いや!装備の質が問題で行っていなかったが、これだけの装備が作成可能であれば問題ない。部隊長クラスの底上げだな」


その言葉に部隊長達が顔を引きつらせます。ただ、いまひとつ何が不安なのかは判っていないようです。


「パワーレベリングですか?」


「うむ、只管魔物を狩る、スキルを使う、装備が壊れたら交換しながらそれを繰り返す」


「えっと、どこでそれをっていうか最近増えてきたとはいえそんなに魔物はいないのでは?」


遙の言葉に疑問を浮かべながら部隊長の一人が質問をしました。確かに、かつては殆んど見なくなった魔物が次第に姿を見せるようになって来ました。そして、その為被害が発生し、度々軍隊を出し討伐もしています。

それでも、魔物を狩り続けるなど不可能でした。


「大丈夫だ、これがある」


そう言って遙は机の上に多数のメダルを取り出しました。


「これは?」


目の前に出されたメダルを不思議そうに眺める者が殆んどの中、ムラマサ他転移組とコルトバは顔を引きつらせました。


「なんとなくやりたい事はわかった」


「しかし、銅はともかく金は不味いぞ、普通に死ねる」


「鉄でも物によっては不味くないですか?これ何が出るか判りませんよ?」


「そこは私達がフォローすれば問題ない!まずは底上げが必要なんだ!」


確かに現状戦力の底上げは必須です。その思いは誰もが持っている為最終的に遙の意見に押し切られる事になりました。そして、部隊長達の受難が確定した時でもあります。


「なぁ結局どうなるんだ?」


「さて、わたしも良く判っていないのですが、確かこのメダルは魔物を呼び出せるメダルだったかと」


「おお!」


「確かプードルがそのメダルで助かったと聞いた」


「おおお!」


そんな感じで盛り上がる部隊長達を尻目に、転移組一同はこれから訪れる彼らの受難に心の中で合掌しました。


「ねぇムラマサ、メダル量産できる?」


そんな彼らそっちのけで今後の展開へと思考を飛ばしていた遙が、ムラマサへと向き直り問いかけます。


「ん?ドロップ品をいくらかは持っていますよ、でもあんなネタスキルを取る余裕なんかないです、よね?」


「へ?鍛冶で普通に作れるんじゃないの?」


キョトンとした顔で答える遙に、ムラマサはメダル作成スキルについて事細かに説明を始めました。


「メダル作成には鍛冶、細工、錬金スキルがいるんです。ここまではいい?」


「えっと、良くない、錬金だけで良いんじゃないの?」


「いえ、最終的には錬金ですが、そのスキル所得条件では鍛冶、細工士限定のクエストを消化しないとならないです。しかも両スキルともある程度スキルLvが高くないと請けれません。そして、メダルスキルを所得する頃にはそこそこ戦闘スキルも上がっていますので、はっきり言って所得する意味が無くなっています。はっきり言ってネタスキル以外に言いようのないスキルですね」


「うそ!そうなの?!」


「はい、メダル自体はドロップでも出ますし、作る為の手間、時間、スキル枠考えたら余程の酔狂な人か変人、若しくはテロマニアくらいしか取りません」


そう断言したムラマサを見て、遙はぼそりと呟きました。


「キュアちゃんはやはり変人だったか」


「あれ?誰かお知り合いで持ってるんですか?」


そして、ムラマサがその呟きを聞いて尋ねます。


「うん、キュアリーっていうエルフの子がね。かの王都テロ事件の主犯らしいよ。で、こっちでそれが発覚した時にユパが没収したのがこのメダル」


「え~~、ユパさんもいるんですか!やった!これは勝てる!」


そう喜ぶムラマサに、周りの雰囲気が一気に微妙になりました。


「ん?あれ?ユパさんいるんですよね?」


みんなの様子が変な事に気がつき、ムラマサは戸惑った顔をします。そして、突然思い詰めた表情で遙の顔を見ました。


「まさか、あのユパさんが死んだんですか?」


「いや、ユパはリアルの世界に帰った」


「はっ?帰った?」


「うむ、帰った」


「あの、帰れるんですか?」


「うむ、帰れた」


「え~~~~、マジですか!帰れるんですか!すげ~~~、俺帰れないって思ってましたよ。マジ帰れるんだ、うわ~~」


予想もしていなかった回答に、驚き続けるムラマサに対し、周りは更に微妙な雰囲気になっていきます。


「すげ~~、すげ~~~」


「五月蠅い!」


「痛い!」


遙は思わずムラマサの頭を拳骨で殴りつけました。

そして、頭を押さえてしゃがみ込むムラマサに対して問いかけました。


「ねぇムラマサ、あんたあっちに帰りたい?」


「え?そりゃぁ・・・」


帰りたいと返そうとしたムラマサは、遙の真剣な表情を見て簡単に答えてはならない場面なんだと気がつきました。そして、しばらく考えた後、遙に答えました。


「俺は別にあっちに帰らなくてもいいですね、ただ、あっちに帰りたい、どうしても帰らないとって思ってる奴を知ってます。そいつは帰してやりたいですね」


「そう」


ムラマサの答えを聞き、遙は静かに目を閉じて考え込み始めました。


「そうね、どの道こっちに来れば自然と伝わるんだろうから話とくわ。ユパはあっちの世界に帰った。ユパ以外にも結構多くの人が帰った。でも、また帰れるかは不明、もしかしたらっていうのはあるけどね」


「マジ帰ったんですか?死んだんじゃなく」


「うん、ログアウトした。ログアウトボタンが一時的に復活したし、あたしもそれを確認してる。押さなかったけどね」


ムラマサは遙の表情と、そして、今この場所にいる面々の表情を見て、遙が嘘を言っていないと確信しました。そして、その上で問いかけました。


「で、またログアウトボタンを復活させる方法はあるんですか?」


「わかんない、けどあるとしたら鍵はキュアちゃんだと思う」


「さっき言ってた人ですね、って、キュアリー?」


「うん、キュアリー」


「もしかしてでっかいルーンウルフ連れてます?」


「「「なんで知ってるの!」」」


遙と、それ以外の者達も一斉に叫びました。そして、その勢いに押されるように顔を引きつらせてムラマサが答えました。


「え?なんでって俺達の村にゲートの事教えてくれたのがそのキュアリーさんですよ」


「へ?」

「は?」

「え?」


周り中から呆然とした声が聞こえました。

はい、バルーンです、でも、そのバルーンは登場だけで影が薄い!

あんなに存在感は太いのにw


キュアリーの所在地が発覚してしまいましたね~でも鍛冶スキルはもうドワーフで事足りる?


あと、なぜプードルがメダルを所持してたのかが発覚!

常識人のユパさん、なんでメダルを遙さんに渡しちゃったんでしょう・・・

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