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1-1:住む所を確保しよう

集会所へと移動した一同は、現在微妙な空気を漂わせながらも会話を成り立たせていました。


「それだと、この場所の鉄鉱石はもうじき掘り尽されちゃうの?」


「うむ、この一年でより一層採掘量が低下している」


複雑な表情を浮かべる村人達をみながらキュアリーは思案に暮れます。

もともと、この場所にはのんびり暮らす為の場所確保にきた為、別に鉱石が採取できなくてもそれ程問題ない気はする。それでも、鉱石が採取出来ないと物作りが間々ならなくなる可能性は高かった。


「う~ん、採掘量かぁ、でもねぇ」


そう言って窓の外に広がる巨大な穴を眺めます。


「そもそも掘る所もうないよね?これだと」


「うむ、その為年々村人が減り続けている。このままだと村を維持するのも厳しくなるだろう」


定期的に先程のような魔物の襲撃があるこの村では、魔物を撃退する為にも一定数の人員が必要となっている。でも、優秀な者ほど早々と村に見切りをつけて旅立ってしまったそうです。


「まぁここに残っている連中は不器用な者、掘るしか脳の無い者、何も考えていない馬鹿、そんな連中だな」


そう話しながらも嬉しそうな顔をするベアルを見て、あぁこの人は馬鹿なのかな?っとキュアリーは妙に納得してしまいました。


「それで治癒士も人数が少ないのですね」


先程の怪我の治療を思い出して質問すると、予想外の答えが返ってきました。


「いや、治癒士はもう一人も残ってないな。残ってるのはちょっとした傷を治すくらいの力しかもたん者が二人いるだけだな。そいつらも本職は採掘士だな」


「えっと、すでに治癒士がいない段階で終わってないですか?定期的に襲撃もあるようですし」


「うむ、俺たちも最近そう思っていた」


否定の言葉がくるかと思っていたキュアリーは、意外にすんなりと同意の言葉がにちょっと吃驚していた。

そして、周りからも


「やっぱりなぁ」


「俺もそう思ってたんだよな~そろそろヤバイよな」


「今日だって結構やばかったよね?」


などの声が聞こえてくる。

ただ、問題なのは恐らくその後なんだろう。


「でもさぁ、この村から出てどうする?」


「俺、鉱石掘るしかできないぞ?」


「鍛冶関係の仕事くらい覚えとくんだったあ~~」


恐らく、採掘以外に何かしらの仕事が出来るものは早々にこの村に見切りをつけたのだと思われた。

そして、やっぱりこの村に残るしか選択肢のない者達だけが最後までここにしがみついていたようだった。


「なぁ勝手な御願いだと解ってるんだがあんた治癒士だろ?俺たちに手を貸しちゃくれないか?」


ベアルは深々と頭を下げてキュアリーに頼み込んできた。そして、それを見たほかの面々も慌てたように頭を下げるのだった。


う~ん、もともとこの場所に住もうかなって思ってたんだから、問題は・・・・


しばらく考え込むキュアリーを心配そうに見詰める面々に対し、最終的に幾つかの要望を飲むのならという条件でキュアリーはこの村に残る事を決断したのだった。

その条件とは


・他の村や町から来た人にはキュアリーとルンの事は教えない。

・採掘された鉄鉱石を定期的にキュアリーへも融通する。

・鉱山でのキュアリーの採掘を認める。

・村の中に畑を作る。


特に、キュアリーは自分がここにいることを他に知られる事を一番恐れていた為、1番目の項目は絶対事項としたのだった。


そして、村の一番奥にある作業場付の家を一軒譲ってもらいそこへと住む事になった。


「さて、まずは畑作りかな?」


そんな事をルンと話しながら案内された家の扉を空けた瞬間、キュアリーは予定を大幅に変更しなければならなくなったのだった。


「駄目だ、これは駄目だわ」


「ヴォン!」


「いや、まぁ男所帯だったからよ、まぁ綺麗な方さ」


ありえないベアルの言葉にキュアリーはまじまじとベアルを見詰めました。その視線にソワソワしだしたベアルを放置し改めて家の中を眺めます。

つい先日まで人が暮らしていた家との事で、人が暮らしてたんだからまぁ多少は汚れてるだろうな、などと甘く考えていたキュアリーは、眼前の光景に家の中へと入る事も出来ません。

家の中、そこには様々なものが転がり、食べた後の食器もそのまま放置!更には部屋の隅々まで覆い尽くす埃やゴミ。


「ま、まずは掃除だね、ルンは綺麗になるまで家に入っちゃ駄目だよ」


キュアリーはそうルンに告げると、家の材質を確認し始めました。


「うん、壁は石で出来てる、屋根もこれなら大丈夫かな?木で出来てるのは窓枠かぁ」


ぶつぶつと呟きながら家を調べるキュアリーに怪訝な顔をしてベアル達は見詰めます。


「なぁ、あれ何してるんだ?掃除だろ?」


「さぁ?でも掃除だし井戸の位置教えないと」


獣人の紅一点であるキャロが恐る恐るキュアリーへと声を掛けようとした時、扉の入口に立ちふさがったキュアリーが家の中へと向けて魔法を唱えました。


「サンダーレイン!」


その瞬間、家の中には正に無数の稲妻が輝き、その密度によってゴミなど家の中にあるあらゆる物を砕き、焼き、消滅させていきます。


「サンダーレイン!サンダーレイン!フォアウインド!」


次々に唱えられる魔法と、それに伴う輝きと破壊音、そして、その煙が破壊された窓から風によってそとへ押出されていきます。

ルンは、ある意味慣れているのか、その光景に目を瞬かせ、大人しくキュアリーの足元に伏せています。

そして、そのキュアリーの後ろでは、今正に声を掛けようとしていたキャロが腰を抜かせて地面に座り込んでいました。


更に数回魔法で家の中を浄化し、灰へと変えたキュアリーは、最後は入念に換気を行った後ようやく足元のルンへと声を掛けます。


「こんなものかな?どう?綺麗になった?」


キュアリーの問いかけにルンはムクリと起き上がって家の中を覗き込み、鼻をヒクヒクとさせました。


「ヴォン!」


「うん、綺麗になったね!間違っても黒いGなんていないよね?」


「ヴォン!」


「うん」


結局キュアリーがあまりのゴミ屋敷的な家の中で最大限警戒したのは、Gの存在だったようです。

そして、キュアリーがいざ家の中へ入ろうとして、そのとき後ろで座り込んでいるキャロと呆然としていたベアル他の面々に気がつきました。


「あれ?みなさんどうしたんですか?」


「い、いまのは?」


「え?掃除?ほら、稲妻はマイナスイオン効果あるし」


「へ?マイナス?」


「うん、家の中も綺麗になったし、一石二鳥?」


「???」


今ひとつ会話が噛み合わないまま、キュアリーは一人家の中へと入っていきました。

家の中に入ったキュアリーは部屋のカスタム画面を立ち上げます。そして、この場所をまず自分の家として拠点登録できるか確認し、無事拠点登録できる事にホッとしました。


「うん、これで道具箱をこっちに移せるね」


今回、キュアリーにとって自分のマイホームにのみ設置できる道具箱を移動出来るかは、今後の生活に大きく関与してくる為それが可能である事が生活場所確保の大前提だったのです。

そして、カスタム画面によって部屋の隅に道具箱を設置しました。


「「「「!」」」」


扉から恐る恐る家の中とキュアリーを見ていたベアル達は、突然現れた大きな道具箱に揃って息を飲みました。

そして、道具箱から更にソファー、机、ベットなど様々な物が取り出される光景を見て、開いた口が塞がっていませんでした。


「な、なんだこの光景・・・」


部屋のセットに必死だったキュアリーは後ろで呟かれた言葉を聞き、ベアル達がいた事を思い出しました。


「あ、どうぞ家の中にはいってください。お茶でもだしますね」


キュアリーの言葉にゾロゾロと家の中へと入り、思い思いに椅子に座ろうとします。そして、あまりに高級そうな椅子やソファーに座る事が出来ずに尻込みしてしまいます。


「あ、汚れ防止加工してあるので、気にしなくて大丈夫ですよ?」


そう言いながら、アイテムボックスから紅茶などを取り出し机の上にならべはじめるキュアリーを見て、ベアルが声を掛けます。


「そうか、あんたがなんで他人にここにいるか知られたくないのかわかったわ、あんた転移者だったんだな」


現在の転移者の状況を思い出し、ベアル達はキュアリーが国に狙われてこの場所まで逃げてきたのだと勘違いしました。そして、国が必死で確保し様としている転移者の非常識さを実感しました。


「うん、騒がしいのは好きじゃなくって、だから黙っててくださいね」


「わ、わかった!」


ニッコリと笑いかけながら話すキュアリーの姿を、なぜかベアル達は顔を引き攣らせて激しく頷いていました。

そして、とりあえずキュアリーは予定通りに生活の場所を確保しました。

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