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1-17:予防が肝心ですね!

キュアリーはそのまま3日間病院に通い詰めて治癒を行い続けました。

今までに行ったキュアやヒールにくらべ余りにも回復量が少ない為、途中で終了し、翌日に回した患者の容態が次の日にはまた悪化しているなどの症例が出た為、治癒を行い始めたらある一定の段階まで一気に回復しないとならない事が判って来ました。

ドズルは、村の薬士と1名しかいない村のドワーフの治癒士と協力してキュアリーの後を引き継ぎ、患者の体力回復、原因の解明へとほぼ一日病院に篭っています。


「治癒士様、休憩のご用意が出来ております。どうぞ一休みしてください」


キュアリーが更に一名の患者を治癒させ、一息付こうかと思ったときベストのタイミングで病院の看護士の女性が声を掛けました。


「あ、ミルキーさんありがとうございます」


看護士のミルキーに目配せをしたあと、キュアリーは今診ていた患者の状態を再確認し、症状が改善したのを確認した後不安そうな顔をする患者に優しく微笑みかけました。


「シラキさんもう大丈夫です。毒素は抜けましたからあとは落ちてしまった体力を回復していくだけです」


「ありがとうございます!」


喜びに顔を輝かせ、そのドワーフは慎重に起き上がり、指を動かしたり、腕を動かしたりしながら状態を確認していきます。


「ああ、動く!違和感なく動きます!」


涙を流しながら自分の状態を確認しているドワーフの傍らからそっと離れ、キュアリーは静かに部屋を後にします。そして、食堂兼休憩所へと向かいました。


「あ、こっちです!」


休憩所へと入ると、先ほどのミルキーさんが大きく手を振ってキュアリーを呼びました。そして、その声に併せて周りでそれぞれ食事や休憩をしていた人達が何事かとキュアリーの方を向きました。そして、そこにいるのが今村で一番噂をされているエルフであった為、暖かな眼差しへと変わっていきました。


「ミルキーさん声が大きいです。みなさん吃驚してますよ」


周りの注目を集めることが苦手なキュアリーは、割と本気でミルキーさんを睨み付けました。


「あ、ご、ごめんなさい~~」


そのキュアリーに気押されて縮こまったミルキーさんに苦笑を浮かべながらキュアリーは席に座りました。


「先ほどの患者さんで取り急ぎ診ていただく必要のある方は全部です。3日間もありがとうございました」


席に座ったキュアリーに、深々とミルキーは頭を下げました。

元々この病院に勤めていたミルキーは、患者の看護をしながらも一向に治療の効果が現れず衰弱していく患者を見続けてきました。どの薬士も治す事が出来ずみんな絶望の上にそれでも足掻き続けて来た事を良く知っていました。その為、治癒士であるキュアリーによって回復していく患者を見て連日喜びの涙を流していたのです。

そして、キュアリーの元でなんとか治癒スキルをマスターできないかと昨日から雛のようにキュアリーに引っ付いて回っているのです。


「治癒士様、お願いします、弟子にしてください!」


ミルキーはお礼に続き、またも机に深々と頭を下げます。そして、上目遣いにチラチラとキュアリーの表情を伺っています。


「ミルキーさん、昨日からも言ってますがドワーフだとヒーラー適正が低いのです。ですから覚えようとしても中級スキルまでしか覚えられないのです。だから製造優遇されている薬士を目指したほうが」


昨日から何度同じ説明をしただろう?っと首を傾げながらキュアリーは再度同じ説明を始めました。


「それでも覚えたいんです!」


真摯な眼差しだけにキュアリーは困惑しました。上がる限界が見えているのに、その進路へと進めて良いのだろうか、以前のMMO時代であればさまざまな課金アイテムやレアアイテムで非優遇でも無理すればある程度のスキルレベルを確保することが出来ます。キュアリーの鍛冶スキルも同様です。でも、今はそこまで簡単ではなくなっています。


「ミルキーさん、ご両親にお話をさせてもらってから判断させて貰うね」


キュアリーは辛うじてそう言ってその場の会話を終わらせました。そして、しばらく紅茶を飲みながら、なんか休憩している気がしないなぁとそんな事を思っていたキュアリーの元にドズル達がやって来ました。


「む、キュアリーさん休憩中か」


「いえ、もう終わろうと思っていたところですから」


ドズルはその言葉に申し訳なさそうな表情で会議室に来て欲しい旨を告げます。


「何かわかったんですか?」


「一応推測のようなものではあるが原因が判明した。簡単な実地検査も済ませている」


キュアリーは原因究明に対しヒントが与えられたドズル達が、寝る間も惜しんで頑張っていたのを知っています。そのドズルの表情に若干なりとも安堵の表情が見えることにホッとしました。

そして、キュアリーが会議室へと足を踏み入れると、そこにはすでに顔見知りになった4人の薬士が待っていました。そして、机の上には2匹のビッグマウスがゲージに入れられています。


「すまんな、待たせた」


「いえ、キュアリーさんも疲れているところを申し訳ありません」


「いえ、丁度区切りも付きましたので。中度の患者までは治療を終わらせました」


その言葉に会議室には明るい笑顔が広がります。

キュアリーはその中で机の上のビッグマウスに視線を向けます。


「原因が判明したのですか?」


「はい、その他の可能性も含め更なる検証は必要だと思いますが」


そういうと薬士の一人が机の上に1個の小さな水晶を取り出しました。


「キュアリーさんのおかげで病名が判明したのが大きな要因です。今回我々は病名のクリスタルに注目しました。そして、数匹のビックマウスに少量のクリスタルを食べさせたのです」


そう言って目の前のビッグマウスを見ます。しかし、目の前のマウスに特に違いは見えません。


「あの、特に違いはわかりませんけど」


「はい、普通に排泄されました」


「はぁ?」


何が言いたいのかまったく判らないキュアリーが怪訝な顔をして薬士を見ます。すると、薬士は机の上に置いてあったケースから一本の注射器を取り出して目の前にいるビッグマウスに注射しました。

すると、今まで普通に動いていたビッグマウスが突然痙攣を起こし始めます。


「あ!」


その状況にキュアリーが目を奪われていると、薬士が説明を始めました。


「今投与したのは細かく砕いた水晶の粉を栄養剤に溶かしたものです。栄養剤だけを投与した場合はもちろん一切の影響は出ませんでした。名前のとおりこの病気はクリスタルが原因だったのです」


そして、その後の説明ではこの世界に生きている生き物はすべて魔力を大なり小なり持っています。そして、その魔力が体を巡ってさまざまな恩恵を体に与えているのだそうです。

魔力が大きいものはその魔力の通り道である経脈が太く、より力の恩恵を受けやすい、そして魔力の小さいものは同様に経脈が細くあまり恩恵を受けれません。それでも、魔力が体を巡っている事は同じなのだそうです。


「キュアリーさん、水晶の主な使用方法はなんでしょうか?」


突然の質問に吃驚しながら、キュアリーは水晶の使用用途を思い浮かべました。


「えっと、結界石や護符用のペンダントとかですか?」


「はい、すなわち魔力を留める物、蓄える物です」


その言葉を聴いたキュアリーは薬士が何を言いたいのかなんとなく判って来ました。


「もしかして、水晶が流れを変えてしまうんですか?」


「はい、変える、蓄える、塞き止めるどの症状が発生してるのかはまだ特定できていませんが明らかに魔力の流れを狂わせるようです。そして、これは魔力の小さい者ほど発生率が高いようです」


「すなわち水晶が体内に蓄積するとっと言うことか」


「はい、そして発症するのは魔経脈の細いもののみ」


ドズルの問いに薬士が頷きました。そして、ドズルも大きく頷きました。


「それで、薬でなんとかなるか?」


「残念ながら、今すぐにというのは難しいですな」


薬士の中で一番高齢のドワーフがそう告げました。


「ふむ、ただ原因が判っただけでもっと言うところか」


「「「はい」」」


「重金属による水質汚染、土壌汚染などを気にして様々な検査、対策を行ってきたが、まさか水晶とはな。石英などそれこそ珍しくなかろうに」


ドズルはそんな呟きと共に机の上にある水晶を手に取りました。


「で、発表はどうする。そのまま発表すると何となくだが嫌な予感がするのだが」


ドズルが何を懸念しているのかキュアリーにも判りました。水晶、石英が病気の元、そんな事を発表したら村中パニックになってしまうかも知れません。


「問題は石英でなく経脈が細いことなんですよね・・・」


思わず呟いたキュアリーの言葉にドズルも、他の薬士も一斉にキュアリーを見ました。


「そうか!水晶を警戒するのではなく、経脈を太くする事を考えれば良いのか!」


「そうですね、それではまずどの程度の魔力量があれば安全なのかから調べます」


「だな、村人のステータス底上げを図るか」


ドワーフ達の間にワイワイと意見が出始めます。


「キュアリーさん何かアドバイスはありますか?」


じっと考え込んでいるキュアリーを見てドズルが尋ねます。


「あ、はい、根本の解決にはならないのですけど、魔力量が問題となるのでしたらそれこそ装備で底上げできませんか?」


そのキュアリーの言葉にドワーフ達はポカンっと口を開けてキュアリーを見ます。そして、爆笑が起きました。


「こ、これはミスった。そうか装備で底上げか」


「俺達はドワーフだったな、薬士なんぞばっかりやってると頭が固くなるな」


「うむ、これはいかん」


「うむうむ、早急に何か作るか」


突然の爆笑にキュアリーが驚くなかで、ドワーフ達が更に意見をぶつけ始めました。

そして、ドズルはキュアリーの横までくると静かに頭を下げました。


「キュアリーさん、貴方がこの村に来てくれたこと、本当に感謝します」


「いえ、お手伝いできて良かったです。


そのドズルにキュアリーも満面の笑みで答えました。

珍しい連日投稿です!雪が降るかも?


キュアリーは面目躍如?主人公の存在感?

それと、同行しているはずのキャサリンさんがぜんぜん出てこないのは理由があります。

別に忘れていたはずじゃはりませんからね!


逆に誰もキャサリンさんの存在を気にもしてなかったかもですけどw

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