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1-15:対策会議は空転中

きゅまぁとは不本意ながらもはぐれてしまったコルグ達ではありましたが、無事一団を引きつれてキルトの街へと辿り着いていました。

中間の村にいる筈のコルトバ達がいない為、若干バタバタとした状況になりましたが、魔族に意思操作をされていた村人達も正気を取り戻しており、また村人達が揃ってキルトの街へとの避難を希望した為に一団は更に膨らんで行きました。それでも、途中数回魔物と遭遇した以外は問題と為るほどの出来事は発生せず、無事にキルトヘ到着したコルグ達は街の領主館にてぐったりとしていました。


「しかし、プードルも情けない、むざむざ多くの優秀な兵士達を死なせるとは。なんとか退却は出来なかったのか」


コルグがキルトの酒場で珍しくも若干ぐったりとしながらそんな事を呟きます。そして、コルグの周りには各部隊のメンバーが囲むように座り酒を飲んでいました。


「ああ、不意を突かれてな。死んでいった奴らの事を思うと目の前が真っ赤になる」


コルトバの背後にいつの間にか来ていたプードルが、そのままコルトバの横へと座りました。


「プードル、お前らしくもないミスだな」


横を向くこともせず、ただ前を見たままグラスをチビチビと飲みながらコルトバが呟くように声を掛けました。


「は、ミスなどいつもの事、だが今回は致命的だ22名もの命が失われた」


「陛下はなんと?」


「何も、ただ良く無事に戻ったっとそれだけだ」


「そうか」


それっきり二人は黙ったまま手にしたグラスを飲み干し、なくなれば継ぎ足す。決してアルコールは弱くはない、むしろ強い方の酒をただ無言のままに飲み干していきます。


「さて、明日も任務だ。これぐらいで引き上げる」


ボトルの酒の最後の一滴がプードルのグラスに吸い込まれた後、コルトバは空になったグラスをしばらく眺めた後立ち上がりました。


「明日はキルト方面か?」


「ああ、あちらで更に情報収集だ」


「そうか・・・」


「お前は?」


「しばらくここで待機だそうだ」


「ふむ・・・無理はするなよ」


その言葉に、プードルはやっとコルトバを見つめ返しました。そして、そのプードルの目を見たコルトバは、思い詰め、狂気の炎を宿すその眼差しに思わず息を呑みます。


「死ぬなよ」


思わずそんな言葉がコルトバの口から零れました。そして、プードルは驚いた様な表情をしました。


「お前こそな」


そして、プードルはそんな言葉を残し、先に席を立ち上がったコルトバを残し静かに席を後にしました。

コルトバはそんなプードルの後姿を眺めながら、溜息をひとつ吐き自分も酒場を後にしました。


そして、この時を境にプードルの姿が王都より消えうせました。


翌日、キルトへと出立の準備を行っていたコルトバに、遙よりプードル出奔の知らせが届きました。

そして、その知らせを聞いたコルトバはただ「そうか」っと一言呟いただけでした。


◆◆◆


イグリアでは、近年初の魔族でしかも亡命者であるマチスによって魔族領の情報が次々にと齎されました。

そして、そして、この情報は瞬く間にエルフ領を含め同盟勢力へと齎されました。


「やはり魔族領は繋がっていましたか」


ビエラは、自分の報告に対して重要な報告を忘れないよう項目を一つ一つ確認しながら伝えていきます。

しかし、それぞれの報告ごとにイグリアトップ達の反応にビクビクしていました。


「以上が現状確認された報告になります」


ビエラはようやくすべての報告が終わった事でホッと安堵の溜息を吐きました。そして、早く退出したいなぁっと上目使いでお歴々の表情を覗き見ます。

ビエラの報告は、要約すると以下のようになります。


①チロ村において吸血鬼種との戦闘が発生。偶然遭遇したきゅまぁの活躍にてこれを撃退。

②キルトーチロ村間の間にある集落でコルトバ達が魔族と遭遇。戦闘にて魔族を撃退。

③コルグ部隊がチロ村より村人を引きつれキルトへと撤退。撤退途中に魔族1名を捕虜にする。

④キルトへと撤退中にチロ村にて合流していたきゅまぁが部隊を離脱。現在所在不明。

⑤捕虜とした魔族マチスよりイグリアへ亡命の申し出有り。マチスの住んでいた村ごとの亡命及び魔属領よりの脱出援助依頼あり。

⑥魔族領は現在転移者達によって統治されている。統治している転移者のギルド名はラグナロク。所属している転移者の数は不明。


「ラグナロクかぁ、あそこってPK集団だったっけ?」


「いえ、特にPK特化していた記憶はありません。ただ、ギルド対抗戦の常連ではありす」


「だね、よくランカーで名前出てたもんね」


遙とエリーティアが報告を元に意見を交わします。そして、それ以降は他のメンバーを含めての意見交換となり、魔族が進攻して来ている事は間違いのない状況、しかも転移者を中心に動きが見られることからより重要度のランクを上げる必要が出てきたのです。


「なんかすっきりしない気分だなぁ、ラグナロクかぁ、あそこのメンバーにしてはやる事が雑だよね」


「ただ、これで魔属領との行き来が可能なゲートが判りました。まずはその位置を押さえましょう」


ファリスの言葉に、他のメンバーも頷く中で遙だけが首を傾げていました。


「陛下、何か?」


「うん、なんかモヤモヤしてる気分だね、見落としてる?もしくは騙されてる?」


遙のその言葉に他のメンバーは慌てたようにビエラへと視線を向けます。


「あ、えっと、その」


ビエラは突然視線が集まった為、頭が真っ白になってしまいました。


「うん、当てにならないね」


「ですね、もう一度尋問してみますか?」


「いや、その者自体が知らない可能性が高い、わたしなら絶対そうする。改めて考えると罠の可能性が高い」


一同は再度検討を始めましたが、情報が少なすぎて判断が出来ませんでした。


「切がないね、どの道そのゲートを確認しない事には先に進まないか」


「問題は確認をどうやって行うかですか」


「うむ、とりあえずビエラ、お前は再度その魔族から情報を集めてくれ」


「わかりました!」


会議室を出る口実を必死で探していたビエラは、ファリスの指示を聞き敬礼すると意の一番に会議室を飛び出していきました。


「それにしても、プードルのフォース壊滅は痛いですね」


「うむ、イグリアでも高位の部隊だったからな、ただ転移者2名を相手ではきついだろう」


「相手の転移者の数をなんとかして知りたいですね」


エリーティアの言葉に、その場にいた全員が頷きました。そして、しばらく何とも言えない沈黙が広がった後、おもむろに遙が声をだしました。


「ところで、きゅまぁは何処いったの?早くキュアちゃんの情報がほしいのだけど」


「「「さぁ?」」」


遙の言葉に、他のメンバーがハモルように答えた瞬間、先ほどとは違った微妙な雰囲気が広がりました。

そして、みんなの頭の中にはきゅまぁがお腹を空かせて彷徨っている状況が思い浮かびます。


「はぁ、まぁきゅまぁは置いとくしかないか。で、先に指示した武具の状況はどう?」


「鍛冶師達を総動員して武具の製作に当たらしています。ただ、今まで魔物の減少にてニーズが減っていた為鍛冶師自体の数が減っており数、品質とも厳しい状況かと」


ファリスがすかさず状況を説明します。


「エルフの森でも製造はさせています。キュアリーさん指導の下技術は上がっていますが、もともとエルフですから品質面で限界はあります」


「う~ん、せめて装備面では優位に立ちたいんだけどなぁ」


「そうですね、長老も同様の考えです。コルトの森に獣人達の鉱山があるのでそちらにも人を派遣したみたいです。エルフよりは鍛冶スキルは高いと思われますので」


その言葉に遙は何かひっかかる物を感じました。


「ねぇコルトの森にそんな鉱山あったっけ?」


「はい、小さなものですが」


「なんとなくだけど、そこにキュアちゃんいない?あのキュアちゃんが目的もなく遠出して行くとは思えないし、ましてやコルトの森に避難場所があればそこに行く気がする」


「う~ん、どうですかね?」


「っていうかキュアちゃん消えたとき何でそこ調べてないの?」


「いえ、調べましたよ?」


「そっか、じゃぁいないのかなぁ。とりあえず装備の調達状況は随時連絡ちょうだい、品質とかもそっちが良ければ依頼をそっちに振り分けるから」


遙はサイモンの言葉にそう判断をしました。そして、サイモンも頷きます。ただ、この時、サイモンもまさかコルトの採掘村においてキュアリーの存在が隠されていた為、調査に訪れた者が騙されて帰って来ていたとは思ってもいませんでした。


そして、打ち合わせが終わりやっと解散という時、ビエラが慌てた様子で駆け込んできました。


「ビエラどうした?」


ファリスがその尋常じゃない様子のビエラに、緊張した面持ちで尋ねると、ビエラがやっと息を整えて叫びました。


「プードル隊長が出奔しました!」


「「「「なに~~~~!」」」」


会議室どころか、王宮全体に響く叫び声が上がりました。

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