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1-12:期待が裏切られるとダメージは倍増?

「そろそろチロ村が見える頃だね、辺りの状況はどう?」


ビエラが傍らにいる副官に確認を取ると、副官は問題なしとの報告を返しました。

3PTで周囲を警戒しながらの行軍の為、必要以上に時間が掛かっていることに苛立ちを感じながらも、それでも逸る気持ちを抑えながら武器を構えて進んでいきます。


「隊長、前方に村が見えました。煙突から煙も確認できます」


ビエラは、望遠鏡を取り出して前方を確認しました。


「人の動きが見えるね。あれは篝火かがりびの跡かな?まだなんとも言えないけど無事っぽいね」


その言葉にみんなホッとしたような表情を浮かべました。


「村で確認するまでは油断するんじゃないよ!」


そう声を掛けながらも自然と急ぎ足になりながらチロの村へと向かいます。

そして、自分たちの両翼にいるPTへと視線を向けると、どのPTも同様に行軍速度を上げていました。


ビエラのPTと同じようにその両翼でも似たようなやり取りが行われていたのです。


「なぁ魔族が出たなんて間違いじゃね?期待してたのに普通じゃん!」


クインがそんな事を呟くと、それを聞いていた副官が苦笑を浮かべます。そして、PTへと進軍速度を上げるように指示を出しました。


「今のところエネミーサーチには反応がありません。ただ、村の周辺に手を加えた形跡がありますから丸々間違いという事もないかと」


「ああ、篝火の数も多いしな。しかし、ただの村人が魔族から防衛できるとは思えんけどな。とりあえず一番乗りでも目指すか?」


「いえ、安全に行きましょう」


片方でそんなやり取りが行われている中で、もう一方のコルグのPTでは


「無事なようだな」


「ですな」


「なら急ぐか」


「ですな」


実にシンプルなやり取りが行われていただけでした。


◆◆◆


その頃、吸血鬼を撃退し一夜が明けたチロ村では、今まさにせっせと村人総出で引越しの用意が始まっていました。実際に魔族が確認された村では、夜通し集会が行われた末に夜明け前になんとか村人総出でキルトの街へ避難する事が決められたのです。

生活の基盤が失われることに不安や不満が多数上げられましたが、最後には命を重視しての村長決断が行われ、村人もその決断に従うことにしたのです。


「向こうに行けば日常品は何とかなるんだから余分な物は持って行くんじゃありませんよ!」


メアリーは村所有の2台の荷馬車にそれぞれ村人が荷物を積む様子を監督しながら、併せて移動するグループの編成にと七面六背の活躍で移民の準備を進めていました。

村の人達は、少しでも自分の財産を持っていこうと荷馬車の場所取りで朝からすでに数回の喧嘩も起きています。


「なぁ、このままで本当に昼には出発できるのか?」


「出来るのかじゃなくするんです!あなたも村中を見回ってください!」


村長は普段は温厚なメアリーがカリカリしている様子の為恐る恐る尋ねたのですがそれでも叱られてしまいました。


「う、うむ、村の様子を見てこよう」


「ただ見るんでなく急がせてくださいね」


そんな言葉を背に受けて村を巡回し始めす。

すると、村の中央広場で子供たちが群がっているのが見えました。なんだ?なにかあったのか?そんな事を思い急ぎ足で向かうと、きゅまぁが子供たちに囲まれていました。


「それでね、ほらこことここを摘んでこうすると、箒になるんだよ」


「あ、ほんとだ~~」


「おねぇちゃんすごい~~、教えて!」


8歳くらいの女の子と綾取りをするきゅまぁを周りを囲んで他の子供たちが熱心に見つめています。

そのほのぼのとした光景に先ほどのバツの悪い気持ちも拭い去られ、村長はきゅまぁ達の方へと近づいていきました。


「あ、村長さんだ!」


「村長さんこんにちは~」


「こんにちは~」


子供達が近づいてくる村長に気がついて次々に挨拶をしました。そして、綾取りの糸を女の子へと渡したきゅまぁが村長へと振り返りました。


「村長さん今日は、準備の進み具合はいかがですか?」


「ははは、完全に遅れ気味でして、妻から村を巡回してみんなを急がせろと言われました」


きゅまぁの問いかけに苦笑いで答えながら、村長は子供たちの頭を一人一人撫でていきます。

きゅまぁはその姿を眺めながら、平和な時代であれば子供思い、村民思いの良い村長さんなんだろうなっと感じました。


「なにが問題になっているんですか?」


「村民たちも今までのすべてを捨てて移住する訳ですから、なんとか少しでも財産を持ち出そうとします。ですが、残念ながら老いた者や子供などを荷馬車に乗せればもう空きが無いのです。それで少々揉めておりまして」


「う~ん、荷馬車は増やせないのですか?」


「ええ、うちの村にある荷馬車は3台限りですから」


そんな事を話している二人の周りでは子供たちがキャッキャと遊びまわっていました。

その時、村の北の方角から甲高い笛の音が響き渡りました。


「子供たちは急いで集会所に入りなさい!」

「ソル君、みんなを集会所に集めておいて、危ないから出ちゃだめだよ!」


きゅまぁと村長はその音が聞こえた瞬間、子供たちに急いで指示を出し北門へと走り出します。そして、子供たちは急いで集会場の中へと走り出しました。

きゅまぁが北門へとたどり着くと、村の男たちが厳しい視線を浮かべ前方へと視線を向けています。

そして、その視線の先には村を取り囲むかの用に3方からこちらに向かってくる男達の姿が見えました。


「参ったね、まさか北から来るとはね」


「味方じゃないのか?」


「楽観するよりは警戒したほうがまだマシさ」


同じくこの場に駆けつけていたメアリーの言葉に、村長がすがるように言葉を返しました。でも、メアリーの視線は厳しいままでした。


◆◆◆


その頃、ドワーフ領へと向かったキュアリー、ベアル他獣人達の一団は前方に立ちはだかる一際大柄なドワーフと、その取り巻きたちの前で大地に崩れ落ちていました。

ある者は絶望を顔面に浮かべ、ある者はすでに意識を手放し、ある者は思考を自分の世界へと旅立たせ、唯一意識をはっきりとし立っているのはギル他ドワーフの面々とルンだけという状況です。


「あ、ありえない、ありえない」


「ま、魔物だ、あいつらは人じゃない」


そんな呟きがキュアリー達を中心に広がっていました。


「おかしいよね、ドワーフって、ドワーフって、こんなのばっかりなの?」


力無く呟き、怯えたように先頭のドワーフへ視線を向け、そして、慌ててキュアリーはまた視線を地面へと落とします。そんなキュアリー達を眺めながら先頭にいるドワーフが声をだしました。


「ねぇ、あなた達なにを突然倒れこんでいるの?何か病気?それなら近寄って欲しくないんだけど」


まさに鈴を転がすような声を響かせるドワーフに、倒れていた一団は更なるダメージを追います。そして、仲間であるギルによって更なるダメージを追う事になりました。


「おお、キャサリンではないか!なぜこんな所に!後ろにいるのは乙女騎士団か!」


「キャ、キャサリン・・・・乙女・・・・」

「ガフッ・・・」

「ダイル!死ぬな!死ぬんじゃない!」

「え、衛生兵はどこだ!」


騒然となる獣人達を一瞥して、ギルは呆れたような顔をさらには意味不明っといった顔つきに換え眺めます。


「お前達なに遊んでるんだ?ベアルやキュアリーまで」


その言葉にようやくキュアリーとベアルが立ち上がりますが、その視線はまだ虚ろに彷徨っていますが。


「ちょっちょっとインパクトが強すぎちゃって、ゲシュタルト崩壊しそうでした」


「うむ、この結果は想像してなかった。ドワーフはまさに最強だな」


「???」


意味がわからないギルは、そっちはほっといてキャサリンへと声を掛けます。


「キャサリン、相変わらず美しいな、美貌にまさに磨きがかかったな」


「バル様、そんなお世辞を!」


そんな言葉に頬に手を当ててキャサリンが照れます。そして、その言葉と動作に倒れ伏した獣人達は更に崩れ落ちました。


「お、俺達はもう駄目だ、あ、後を頼む・・・」


そんな言葉があちらこちらで聞こえる中、キュアリーも再度崩れ落ちそうな膝をなんとか踏ん張り改めて目の前にいるドワーフの女性・・に視線を向けました。

その姿は正にドワーフです。腰にはバトルアックスを吊るし、胸にはプレートアーマー、腕にはバトルシールドを持ち、勇壮にして無敵、鉄壁・・を感じさせる姿は存在感を感じさせました。ただ、目の前にいるドワーフの女性達は総じて男のバル達ドワーフより一回り大きく、キュアリー達の思う女性らしいスタイルからは逸脱したドッカン・ドン・ドンといった正に最凶のスタイルです。首も、腕も、太腿も、すべてが丸太のように太く、腰も見劣りしないくらいの太さです。唯一の女性を感じさせるのはダイナマイト級の胸のみです。顔付きもすべてが大柄で、がっしりしています。


「で、伝説のロリっ子ドワーフはどこに」


「ドワーフってオーガだったのか・・・」


「いや、美人ってどこが?」


そんな呟きが響く中、若干顔を引きつらせながらキャサリンは失礼な獣人達を睨み付けます。


「バル様、ご無事でなによりです。ギル様に刺客が送られたとの情報が入り急いで駆けつけた所でした。ほんとにご無事でよかったです」


「うむ、この者達に助けられてな」


ギルはそう言うと獣人達へと視線を向けます。なんかまったく頼りにならなさそうな獣人達の姿がそこにありました。


「この者達に助けられたんですか?」


「うむ、頼りになる者達だ、今はなんか訳がわからん状態だが」


「バルさん、紹介していただけますか?」


ようやく気を取り直したキュアリーがギルへと声を掛けます。


「おお、すまん。こちらはイグリアのエルフで治癒士のキュアリー殿、で、こっちは乙女騎士団の団長キャサリンだ」


「キュアリーです、よろしくお願いします」


「キャサリンです、お初に御目にかかります」


キャサリンの静かに腰を落とすような優雅な挨拶にキュアリーはまたも眩暈を感じましたが踏ん張ります。


「とりあえず行政府へと移動するか」


ギルの言葉にキュアリーが不思議な顔をします。すると、ギルはそれを察して説明してくれました。


「ああ、この鉱山は規模がでかいからな、行政府が設置されているんだ。代表は一応俺だ」


ニヤリと笑いながらギルは先頭に立って歩き始めます。そして、それを守るように乙女騎士団の面々が囲むようにして着いていきました。キュアリー達はその後ろからぞろぞろと歩き始めます。その姿はまるでアンデットのようだったとあとでドワーフ達に言われるのは別の話ですね。


何かと忙しく、思いのほか感覚が開いてしまいました。申し訳ありません。

書きたい内容は日々いろいろと考えていて、文章にしていくだけなのですけど書く時間がなかなか取れませんでした。

少しでも文章にしていけるようにがんばります。


更新を待っていただいているありがたい読者の方に見捨てられないようにがんばらないとです!

これからもよろしくお願いします。


あと、美醜の感覚はやっぱり種族で違いますよね、地球でも首長族とかいますし・・・

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