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1-10:主人公は私ですよ!

「あぅ!」


キュアリーが金槌を振り下ろした状況で叫び声を上げた為、周りでそれぞれ自分の作業をしていた男達が一斉にキュアリーの方向を見ました。


「おい、どうした?」


「金槌で指挟んだか?」


そんな声が聞こえてくる中、キュアリーが複雑な顔をして皆を見ます。


「えっと、なんか不等な扱いを受けたような?」


「「「なんだそれ!」」」


キュアリー以上に変な表情になる男達を余所に、とりあえず今打ち終えた武器を片手に立ち上がります。


「う~~、説明がしずらいんだけど、なんか本来あるべき立ち位置から強引に除外されたような、例えるなら主役だと思ってたら脇役だったというか、何かこのままでは拙いぞ!って気がしたの」


「「「?」」」


更に説明するキュアリーだが、その説明があまりに抽象過ぎて余計に周りに困惑を広げました。


「まぁそれは置いといて、何を鍛えたんだ?」


「う、置いておかれた・・・」


そんなキュアリーを余所に、バルがキュアリーの手に持った武器を覗き込みます。


「ふむ、メイスだな、素材がミスリルだからホーリーメイスか?」


「あ、うん。教わったアレンジをしてみた!あとは頭部分に彫金で呪紋を刻み込んで磨き上げれば完成かな?」


そう呟きながら、キュアリーは手元に彫金用の道具を用意してコツコツと刻み込み始めました。


「ふむ、変わった呪紋だな。いや、シールド系か?」


「ですです」


そんな事を言いながら早くも刻み終えたメイスを再度焼き入れの為に炉の中へと入れました。

炉の中へ自分の魔力を注ぎ込み火力を上げた状態で、汗を滴らせながらもメイスの状態を確認します。

薄着に汗が滴って若干透ける感じの服が普段はまったく0と言っていいキュアリーに魅了効果をもたらしています。でも、残念ながら魅了されるには廻りの男たちはみんな武器マニアすぎました!

誰もキュアリーなんか見もせずにただ只管手元のメイスしか見ていません。

主人公!良いのかこれでって声が何処からか聞こえてきそうな気がします。

そんなことは置いといて、キュアリーは焼入れが終わったメイスを片手に仕様を確認して満足そうな顔をしました。


ホーリーシールドメイス+2

ATC:0、DEF:+50、AIG:+10 追加効果:ホーリーシールド、HP回復小


「「「ATC0だと!!!」」」


キュアリーと一緒に武器を見ていた男達が一斉に突っ込みを入れました。

製作したキュアリーもどこか引き攣った顔でその武器?を見つめました。


「えっと、え~~、あはは、何か予定と大幅に違うような?」


「おい、試しに何かぶっ叩いてみろ」


「う、解った」


バルの言葉にキュアリーは近くにおいてあった鎧を立てるための頑丈な木組みを叩いてみました。


ブワァ~~ン


正に木組みにメイスが当たる瞬間ホーリーシールドがメイス前面に展開され、木組みにあたる衝撃をすべて吸収しました。その想像の斜め上の状況に見ていたみんなが絶句します。


「あ~~その、なんだ、それなら逆にメイスに攻撃したらどうなるんだ?」


その言葉で、次にドワーフの一人が自分の斧をメイスに叩きつけます。すると、やはりメイスの前面にホーリーシールドが展開され、攻撃の威力を吸収しました。


「これ武器じゃねぇな」

「見てくれに騙されるがこれ盾だな」

「いや~~しかしまともな物は作らんところが凄いね」

「でも、これって名前にメイスいらなくね?」

「いや、付けるならメイスモドキとかどうよ!」


周りから様々な声が聞こえてきます。

そして、その言葉が刃となってキュアリーの心を抉ります。突き刺さります。

がっくりと膝をつくキュアリーを横目にバルはキュアリーの後ろにあるキュアリー製作のアレンジ武器を眺めました。


リフレクトソード:相手の攻撃を100%相手に返す。ただし、自分の攻撃も100%自分に返ってくる剣

キュアーレイピア:攻撃した部分がすぐに回復するレイピア

爆裂ランス:爆発の威力で前方に凄まじい勢いで突き進むランス、ただ所持者は爆裂の影響で大ダメージを負う


「いや、なんか姉ちゃんよ、あんたアレンジの才能ないんじゃないか?」


「あぅ」


止めの言葉にキュアリーは更に落ち込みます。


「バル、この武器さっさとインゴットに戻した方がよくないか?はっきり言って間違って誰かが使用したら危ないぞ」


リフレクトソードを持ちながらベアルが言うと、今までの落ち込みから一気に回復したキュアリーは慌てたようにベアルの手から武器を奪い返しました。


「駄目!これはあたしが始めて作ったアレンジ武器なんだから!」


「いや、まぁ愛着を持つのは悪くは無いがそれはなぁ」


バルはキュアリーにアレンジという方法を教えた事を若干なりとも後悔しました。

これでもし怪我人が出たら自分のせいでもあるんだろうなっと思ったのです。その為、その後もヤイヤイと言い合いをしていると、何か工房の外が騒がしくなってきました。


「「「ん?」」」


キュアリー達も言いあいを止め、窓から外を覗くと完全武装したドワーフが数名こちらへと向かってきます。


「バルさんの知ってる人?」


「あ~~一応俺たちの国の兵士だわ、きっとこっちとの行き来が出来る様になったんで様子見に来たんだと思う」


「ふ~~ん」


「でもさ、なんか雰囲気悪くねぇか?殺気立ってるっていうか」


武装しているドワーフ達は、しきりに周りに視線を飛ばして辺りを警戒しています。

そして、そのせいで村にいる獣人達もちょっとピリピリした気配になってきていました。


「う~ん、まぁ普通緊張するわな、あいつらくらいの年だと経験もそんなにないだろうしな。ただ見たことの無い連中だな」


「バル達も見たこと無いの?」


「うむ、あんなヒヨッコ兵士だけでこっちに来るなんて変だな。ちと行ってくるわ、何かしでかすとヤバイしな」


「ああ、俺たちも騒動はごめんだ、頼むわ」


その言葉を受け、バルが外へと出て行きました。そして、その後にはキュアリーやベアルが続いていきます。

バルはドワーフの中では有名人だったのかドワーフの兵士たちはバルの姿を見た途端、一気に表情を緩めました。


「バル殿!ご無事でしたか!」


兵士の中で唯一マントを身に着けた男が急ぎ早にバルへと近づいてきます。


「ん~~、あんた誰だっけ?」


バルも近づいてくる兵士たちの顔を思い出そうとしながら近づきました。

そして、あと少しでバルまでといった段階で、突然その兵士たちが剣を引き抜いてバルを切りかかりました。


「死ね!」


「ぬぉ!」


バルが咄嗟に身を引きその剣先をそらそうとします。しかし、すでに攻撃範囲へと踏み入れていた為に兵士の剣はバルへと振り下ろされました。


「ぐぅぅ」


交わせないと悟ったバルが大きく身をひねり、さらには左腕を剣へ叩きつける感じで逸らそうとしますが、勢いのついた剣は軌道から外すことの出来なかった右足の太腿を大きく切り裂きました。

その為、重心を崩したバルが大きく横に崩れ落ちます。


「「「バル!」」」


バルの仲間たちと、更には獣人たちは状況が理解できずに立ちすくみました。

そして、その一瞬の空白を利用し、兵士たちはそれぞれの剣をバルへと振り下ろしました。


「グヴォ~~ン」


まさに剣が倒れたバルへと突き刺さろうとした時、立ちすくむ者達を余所にルンは兵士達の殺気に反応して兵士達に飛び掛りました。そして、その勢いと体重を利用し兵士たちを弾き飛ばしました。


「ガルルル」


「メガヒール!」


バルを守るように立ちはだかるルンを見て、キュアリーは慌ててバルに回復魔法を掛けました。


「くそ!こいつらなんだ!」

「バル!無事か!」

「お前たち仲間じゃねぇのか!」


ベアル達が思い思いに手近にあるスコップや槌などを手に駆け寄ります。


「雑魚は引っ込んでろ!」


そんな威勢のよい?事を叫び、兵士たちは立ち上がって剣で切りかかりました。

しかし、その動きは普段このコルトの森で魔獣と戦っている男たちにとってはスピードも遅く、動きも単調でした。


「なんだ?弱いぞこいつら」


ベアルが手に持った槌の柄で剣を受け、そのまま槌で兵士の足を払うとボキッっと鈍い音を立てた兵士の足が明後日の方向へと曲がりました。そして、その兵士は地面の上で剣を手放して転がりまわります。

そして、その他の兵士達も獣人たちにそれぞれ叩きのめされています。


「あ~~、あんたら強いんだな」


キュアリーの治癒魔法で怪我を治したバルは、痛みの感覚が残っているのか傷のあった場所を押さえながら立ち上がりました。


「いや、俺らが強いっていうかあの兵士が弱すぎないか?」


「だな、こんなんじゃこの村で生きていけないぞ?」


「あれじゃビッグベアにも勝てんな」


そんな男たちを余所に、キュアリーは兵士達の持っていた武器を集めていました。


「でも、武器は結構良い物を使ってますよ?ミスリルソードのAGI特化型ですね」


その言葉に周りから一斉に驚きの声が上がりました。


「おい!AGI特化であの剣速かよ!」

「すげぇ!」

「素でAGIいくつなんだ?ありえんぞ!」

「いやまて、AGI早くてもDEX遅けりゃ扱えんぞ!」

「ドワーフでDEX低いは無いだろう?」


ワイワイと獣人が騒ぐ様子をバルは苦笑を浮かべて眺め、そして言いました。


「お前たち驚くところはそれかよ!」


「まぁな、あんだけ弱けりゃな、装備で騙されたぞ。とりあえず倉庫に放り込んどけ!治癒は必要ないぞ死ぬような怪我じゃねぇ!」


そう告げると、ベアルはキュアリーに合図をしてドワーフ領との通り道になった穴へと向かいました。


「一応警戒したほうがいいですよね?」


「だなぁ、全部が全部こんな弱くねぇだろうし、何が来るかわからんしな」


バルはそんな二人を追いかけて肩を並べます。


「期待させて悪いが、今のドワーフの強さはだいたいこんなもんだぞ」


「は?あんなんじゃコボルトにも梃子摺るぞ?」


「ああ、最初に言ったと思うがドワーフ領じゃぁもう魔物はほとんど出てこない。いまや生き死にを経験してるやつなんか一握りだ」


その言葉にキュアリーの目が光りました。


「えっと、のんびり暮らせる?」


「う~~ん、無理だな。変わりに食い物がないからみんな必死で食い物つくってるな。俺たちのように未だに鍛冶に拘ってるのは少数だ」


「それって、もしかしてドワーフの鍛冶レベルは・・・」


「ああ、ほとんど技術は失われたな。マイスターレベルのやつなんか10人いるかどうかだぞ」


その言葉にキュアリーもベアルも驚きの声を上げます。


「ドワーフの存在意義がないですね」


「姉さんそこまで言うか!」


「だって、マイスターレベルじゃないドワーフってあとは壁にしかならないですよね?」


「ひでぇ!」


そんな会話をしているうちに三人は目的地へと到着しました。


「そういえばバルさんは何で狙われたんですか?」


「ああ、俺が数少ないマイスターだからな。おかげで時々勘違いした馬鹿や、偉っそうな馬鹿に狙われる」


「あ~なんとなくわかるが、結局は?」


「王位争いだな、俺は一応第二王子だからな」


その言葉を聴いたキュアリーはあまりの衝撃に膝をつきました。


「おいおい、やめてくれよ!王子っていったって別に偉いわけじゃ」


突然膝をついたキュアリーをあわてて起こそうとバルが屈んだ時、キュアリーの声が聞こえました。


「こ、こんなムサイおっさんが王子!絶えられないかも」


「ほっとけ!おっさんだろうが、ムサかろうが親が王で現役なら子は王子だ!」


「知りたくなかった、そんな酷い現実」


「なぁ、俺泣いていいよな?ここまで言われる事ないよな?」


そんな二人を通路を警戒していた獣人やドワーフ達が生暖かい眼差しで見ていました。

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