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1-3 荒廃のむら

少女らはある村を訪れていた。

 この世界から見捨てられた忘却の村へと。

 なぜ、この村を訪れたかというと、話は少し前までさかのぼることになる。

 少女が黒の魔道書を譲り受けたあとの話だ。


「なあ、スフィア、お前これからどうする?本は見つかったけど記憶戻らないんだろ」

(め、迷惑じゃなければ、もう少しレムさんと一緒にいてもいいですか?)

「ああ、俺はかまわないぞ。というかむしろその方がいいかもな。1人でいると危険だし」

「ありがとうございます」



「なあレム、その本を譲ってやったんだから、俺のお願いも1つ聞いてくれよ」

「また、ろくでもないお願いか?そうなのなら聞かないぞ」

「違う、違うって。まともなお願いだよ。実はさ俺この後もう一件依頼あるんだけどさ、その依頼手伝ってくんないかな?」


「依頼か、俺はかまわないがスフィアもいるからな。1人にするわけにもいかないしな。スフィアはどうしたい?」


(私はライルさんを手伝ってあげたい。本も譲って貰ったお礼もしたいし。私にできることはこれくらいしかできないし……)


「スフィアがそういうなら手伝ってやるよ。それでどんな依頼なんだ?」

「手伝ってくれるか、さすがレムだな。それで依頼の内容なんだが……」


 今回の依頼はある村の解放だ。その村はある一団に占領されておりそいつらを倒せば依頼は完了となる。依頼の難易度はそんなに高いわけではないが何しろその一団は数が多く1人でやるこなすには少々骨は折れるらしい。



 そんなわけで、この村を訪れえている。


 この村に踏み入れると、人影は見えなかった。

 辺りの家々は所々崩れており、やはり人の姿はない。

 まるでもともと人など住んでいなかったかのように。

「なあ、ライルここはなんでこんな様子なんだ?」

「それは恐らく……」


「それは、俺が答えてやろうか?」


 突然、何処からか声が聞こえた。

 それと同じとき、周りからケラケラとした笑い声がこだまのように響き渡る。


 辺りを見渡すと崩れた屋根の上から最初の声の主が姿を現わす。

 男は姿を現わすと屋根から飛び降りる。

 その男は筋肉質な体格であり、腕には派手なタトゥーが彫られている。

「ここにいた奴らはみんな俺の中さ」


(えっ、どういうことなんですか、レムさん?)

「ああ、つまりこいつは……」

 レムは重い口を開く。だが、男はそれよりも早くしゃべり始めた。


「俺がみんな殺したよ。一人残らずな、今は俺の精神の欠片(ソウル・ピース)になったよ。おかげで王族まで階級が上がったぜ」


(そ、そんなことって……)

 スフィアの身体全身は震えていた。


「ひどい奴らだな」

 ライルは痰を切るように言い捨てた。

「はあ?俺がひどい奴だって?俺はこの世界のルールにしたがって生きているだけだぜ。それにお前だってこの世界で散々人を殺ってきたんだろ。俺と変わらないじゃないか」


 レムとライルはそれを否定しない。事実2人は大量の人を殺した過去がある。


「それでも、精神の欠片(ソウル・ピース)を集めたいなら殺す必要はないだろ」


 男は不適な笑みを浮べる。

「はあ、お前らはほんとにお子様だな。殺したほうがたくさん精神の欠片(ソウル・ピース)手に入るに決まってんだろ。」


「お前正気なのか?」

 レムは男の目を疑った。


「さっきから黙って聞いてりゃ言いたいこと言いやがって、お前ら何様だ!あんッ。そうだ、お前ら戦闘(デュエル)しようか。お前らの精神の欠片(ソウル・ピース)を全部奪ってやるよ」

 男は意気揚々と話す。


「どうする?ライル」

「どうせ、口で言っても聞かないだろ。それに、一石二鳥だろ」


「どうやら、決まりのようだな。じゃあ、ルールは俺に決めさせてもらう。勝敗はライフの全損。範囲はこの村全体と行こうか。リミットは5分。終了までに生き残っていた奴だ勝者だ。負けたものはすべてを失う。それでいいだろ」


「ああ、かまわない」

「先に言っておくがそこの少女も当然参加だからな」


「まて、この子は関係ないはず」

「俺は先に言ったはずだ。ルールは破れない」

「くっ」

 レムは苦い顔で男をにらみつける。

 その横でスフィアが不安そうにしがみついているた。震えている。

「大丈夫、俺が守ってやるよ」

 そういうと自然と震えが収まっていくのがわかった。


「どうやら、話がまとまったみたいだな。んじゃ、そろそろはじめるぞ。いつまでも待ってらんないからな」

「ああ、はじめよう」


『デュエルモード』

 男とレム、そしてライルがそう言うと地面から魔方陣が現れた。

 魔方陣はレムたちをそして、村全体を包み込んでゆく。

 前回は20メートルほどの大きさだったが今回は比べ物にならないくらい大きかった。


 そして、全員の頭上にライフバーが現れカウントが始まる。

「5,4,3,2,1……」


「0」戦いが始まった。


「お前らやっちまいな」

 男がそういうと、後ろから大人数の人が現れた。数は30人はくだらないだろう。


「まさか、こんなにいたとはな。どうする?ライル俺が先に切り込むか?」

「いや、レムはその子を守ってな。俺がいく」


 ライルは黒い光でできた光剣を取り出し、単身で敵に飛び込んでいった。


 ライルが飛び出すと数人が同じく光剣を振りかざしてきた。

 だが、ライルは少し身体をひねりそれをかわす。同時に剣を使いきりかかってきた奴らを切り裂く。

 もちろん、その一撃でライフバーは底をつく。


 だが、周りの奴らはそれを気に留めることもなく再度遅いかかってきた。

 今度は、先ほど違ってフェイントも交えての攻撃を仕掛けてきた。

 ライルは身体を左右にそらしつつ次の攻撃へと転じている。


「さすがわ手馴れさんたちだねなかなか一筋縄ではいかないか」

 しかし、ライルの顔に焦り色は無かった。いくら手馴れといってもはやり、ライルとの間には力の差がありすぎた。もちろん階級の差もあったが、それよりも経験が一番の差が要因だろう。

 倒されるのも時間の問題だろう。


 1分が経過する頃には始めに切りかかっていた7,8人はすべてライフバーが消滅していた。

「お次はどいつらだ?」


 そういうと、男の手下たちは苦い表情を浮べる。

 ライルの発言が腹に来たのか、10人ほどでライルの周りをぐるりと取り囲んだ。

 さらに一斉に呪文を詠唱し始める。

 その瞬間、無数の魔弾が嵐のようにライルのことを襲う。

「うわっやべー」

 ライルはとっさに右腕を地面につけ何かを唱える。

 すると、地面から黒い霧が現れライルの周囲を取り囲んだ。

 その霧はライルの一歩手前で飛んでくる魔弾を消失させた。

「意外にやるじゃねえか、少しヒヤッとしたな。だが、この霧の前じゃ無力だぜ」

 だが、魔弾の嵐はやむことはない。むしろ、さっきよりも激化している。

 そんな魔弾の嵐が数分間続く。



「レム、こいつらは完全に足止めした。今のうちあの男をたたけ!グズグズしてるとタイムオーバーになってこっちの負けだ」


 手元のリミットを確認すると、もう50秒ほどしか残っていない。

「わかった。必ず仕留める。だからライルも早く決着つけろよ」

「了解した」


 レムはスフィアのことを見つめる。

「じゃあ、ちょっと行ってくる。もう少しの辛抱だからな」

 少女は、無言でうなずく。


 レムは地面を蹴り上げ男の方へと向かう。


「まさか、直接俺のところへとたどり着くとはな、あいつらが片付けると思ったが意外にやるな」

「まあな。だがあれを見ろもうすぐあっちも決着がつくぞ」



 ライルは、魔弾の嵐を防ぎつつ新たな力を解放していた。

 新たな黒い霧は凝縮され、小さな玉が無数に浮いている。

 そして、霧の玉は血の雨の如く降りかかり、手下たちのライフバーをすべて飲み込んでいった。



「使えねぇーゴミどもが」

「お前ももうすぐあのようになる」

「どうかな、残り30秒楽しもうじゃねえか」

 そう言うと男はレムとの距離を詰めた。


 男は魔術で銃のようなものを生成し、レムのもとへ数発放つ。

 だがレムも光剣を使い弾丸を切り裂くと、男の左腕を捕らえる。

「喰らえっ」

 その一撃は見事命中し、左腕を断裂させる。今の一撃でライフバーが3割ほど減少する。

「くっ、ふざけるな」

 男は、レムに回し蹴りを放つ。

 しかし、レムはぎりぎりのところで前に受身を取る。

 その転がった勢いを利用し今度は男の右足を断裂させる。さらにライフバーが3割減少する。


 男はその場に転げ込む。


「これで、ラストだな」

 レムはそうつぶやくと光剣で男ごと地面を突き刺す。みるみるうちにライフバーが削られていく。


「糞ガキが、だがな、俺はただではやられないぞ」

 男は右腕の銃の照準を合わせた。弾丸はレムを捕らえることはなく別の方へと飛んでいく。


「スフィア逃げろ!」

 その叫びは届かない。


 徐々に弾丸と少女との距離が縮まってゆく。



「もう、無駄だ。あの子は道連れだ」


 しかし、弾丸は少女を貫くことはなかった。

 弾丸の当たる直前少女の持っていた黒の魔道書が光だし、少女のことを守った。


「糞ガキどもが」

 男のライフは底を着きそして、リミットだ。


 レムはすぐさま少女の元へと駆け寄る。

「大丈夫かスフィア!」

(なんとか、この本が守ってくれたみたい)

「ごめん、守りきれなくて何処か怪我はしてないか?」

(うん、大丈……)


 少女がそう語り終える前に激しい頭痛に襲われ、その場に倒れた。

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