一章 始まった世界
~セルビア国~
その国は先ほどの割れた次元の力によってこの世界に現れた地形のひとつである
その地形の中には一際大きい宮殿が、他の建物を突出するように建っていた
宮殿内から放たれるのは異様な存在感
国全体を染め上げる程の存在感は誰も威圧する事なく漂っていた
が、それは『彼』を目の当たりにしていない者の話である
宮殿内で『彼』の前で畏まっている者は『彼』の圧倒的な存在感にあてられ、冷や汗をかいていた
『彼』の名はゼルラージ・ハシェーノ
セルビア国の『親王』であり、人間最強といわれた大魔術師である
ゼルラージは大きなイスに腰をかけたまま、その隣に立っている漆黒の鎧を纏った巨漢の騎士に命令を下す
「『帝王』よ…部下を連れてこの国の辺りの偵察がてら、面白い者がおればそやつらの生け捕りの任、頼めるか…?」
冷淡かつ余裕な雰囲気を併せ持つように淡々と言葉を放つゼルラージだが、その表情の裏腹には怨念めいたものを感じさせる
『帝王』と呼ばれた漆黒の鎧の男はゆっくりと頷いて返答を返す
彼もまた『親王』ゼルラージと同等の威圧感を持ち合わせており、その闘士のみで考えれば、遥かに『親王』を上回っていた
「はい、了解しました。会議が終わり次第、エーミスカとフィオーレを連れ、すぐ準備をして参ります」
「それと明日の悪魔共との戦いを先送りにする…。この天変地異…むやみに出陣し、『魔界』への道が異なってわからんといって無駄な足を踏みたくないからな」