一章 始まった世界
人気が多く、商売が栄えているいこの都市内の大道路に一人の悪魔を先頭に何処かへと進軍している白銀の鎧を纏った人の軍隊がいた
数多くの軍隊を率いていたその悪魔は周りを見渡して謎の異変を前にこう思うしかなかった
―何が起こった…?
今『魔界』に攻めようというこの時期に一体何が―――と
イストール都市を後にガイダルト国を横断する予定だった筈の彼らだが、都市の外に出てみたら、そこにはその悪魔が知らない場所、知らない風景、景色が広がっていた
―何故…
「確か俺達は不気味な光に包まれ…」
―あの光は何か関係があるのか…?
俺達は都市ごと別の場所に移ったとでもいうのか?――――
一章 始まった世界
余りにも不可解な現状を目の当たりにした二本角の端正な外見の悪魔は、軍を率いたまま理解にとまどっていた
『魔界』を攻めるとなった今日にして、このような不可解なアクシデントに見回れてしまったことを不幸というか不運というかやるせない気持ちに歯噛みせずにはいられなかった
これでは急遽予定を変更せざるを得ない
「…こんなときに…」
「スタード様ー!」
ふと名前を呼ばれたスタード・ジークフリートという悪魔は声がした方へと振り向くと、こちらへ走ってくる一人の女性悪魔がいた
彼女の名はリーナ・ヴェルヘム
姿形こそ人のそれとは全く変わらないものの、『五大悪魔族』という有力カレリュード・ヴェルヘムの妹にあたり、スタードの婚約者である
スタードは余り良くない面持ちのまま深い溜息をつく
「リーナ…済まないが、この先を見ての通り現状が分からなくなった。混乱を避けるためにも進軍は諦め、このイストールを拠点に足を止める。後方に控えているカレリュードやホーリエル達を集めてくれ」
スタードはそう言うと、再び目の前の光景を怪訝そうに眺める
そんな彼を見ていたリーナは表面上は何気無い表情をしているが、内心では彼同様に心配していた
「わかりました!少し待っていて下さいね!」
リーナはその場で一礼し、そのまま身を翻して軍隊の後方へと走っていった
彼女が走り去った後も彼は拭いきれない不安を抱えていた
何か悪い悪夢を予感するかのように……