一章 始まった世界
しかし、結局はレオン・ジークフリートの好相手であるシェラルド・アシュフォードにより計画は断念され、セイブによって倒されてしまい、後に『八大王者』として復活してからも、ヴィクシスとレシフォスに睨みをきかされ、『次元』の能力の発動もままならず、『八人姉妹』によって倒されている
もう既に倒されているとはいえ、もしこのようなことが出来るとしたら、あの『覇王』だけとしかアウセントには思えなかった
しかし、セイブを通してレシフォスから届いた情報は『何者かが』『次元平衡』を揺るがしたというものだ
考えても何の心当たりもないという焦燥がアウセントの中で溜まり、彼は用意されていたパンをかぶりつくように一気に食べる
彼の隣ではセイブも同じように考えていたようで、彼女は一足先にパンを食べ終えていた
後を追うようにアウセントもパンをすぐに食べ終え、二人はヴェンマーと共に玄関へと足を運ぶ
その説明を聞いて理解した二人は、城の玄関へと足を運ぶ
「とにかく、その『次元変動』と共に現れた光のうちの一つ、セルビア国の周辺に行って、目で確かめるって訳か…」
アウセントのそんな呟きに言葉を付け足すように『鎧悪魔』のヴェンマーが言葉を漏らす
「うん、少し緊張する」
『鎧悪魔』とは遥か昔、戦いによって亡くなった者達の思念が一つに集まり、鎧に取り憑いた存在
それらの中で、ヴェンマーは現代に生きる唯一の『鎧悪魔』である
セイブとアウセントが靴を履いて、玄関を出た少し後あたりぐらいか、ヴェンマーは緊張のあまり身震いして鎧をガチガチと鳴らせる
「大丈夫ですよヴェンマー。私達が一緒ですから落ち着いていいですよ」
セイブがそう言ったら、彼は身震いを止めて緊張しなくなった
それを見たアウセントは感心するように彼を見上げる
「それにしても便利だよなー『自立操作』って…」
「そうかな…」
『自立操作』とは『鎧悪魔』特有の力で思考や状況に囚われることなく『精神状況』を簡単に切り換えることが可能なスキルである