一章 始まった世界
~愁城~
一際大きいその城の中に、メイド服を身に付けた女性にもレシフォスからの指令があった
彼女の名はセイブ
レシフォスやシオンと同じく『神魂器』というメンバーの一員であり『愁城』の城主である
先の異変から既に五時間程経っており、一連の事件をレシフォスから聞き、その調査の為にある場所へ行くように指令を受けていた
彼女は城の一員であるアウセント・ジークフリート、ヴェンマー・デルタイナの二名を呼んで、指令の詳細を説明し終えた後、外へ行くための食事などの下準備をしていた
食事とはいえ、パン一枚とコップに水一杯という軽食で、木造テーブルに二人分用意されている
そのテーブルの傍らには大きなテレビがあり、その画面が事件の悲惨さを物語っている
「『次元変動』…か。これほど大きなモノとなると、自然変異としか思えないけど…」
何か府に落ちない面持ちでそう言ったのは赤い服を着たアウセントという少年だった
だが、彼が言うような自然変異だとしても、ここまでのことが起こる筈もない
誰かの能力が原因だとしても、ここまでの影響を及ぼすことができるのだろうか…?
彼の知る中で、かつて世界に対し次元を通して思いもよらぬ大惨劇を起こした者がいた
『このせかいのこわしかた』という力を扱う『覇王』デラード・アグニドラという男が―――
この世界の破滅に最も近づいたその男は『闇次元』という能力を手に『聖界』の中に五つの世界を別の次元から召喚すべく、それらの世界を繋ぐゲートをつくり、それを通して世界同士をぶつけて、その時に生まれる究極の闇次元を使って『聖界』を滅ぼそうと画策した