二章 始まりの火種
やがて、崩れ落ちた瓦礫の中からその女性が姿を現す
「エーミスカ!大丈夫?」
「うっす…無事です」
フィオーレの言葉に応じて、立ち上がったエーミスカ・リースガールという女性は周囲の瓦礫を魔術で吹き飛ばし、宙に浮いている『少年』の前に立ちはだかる
エーミスカの服は斬撃によって、右胸・右肩辺りから右肘にかけて無造作に切り崩されてはいるが、彼女自身は傷を負っていなかった
「へェ~…傷一つないなんて、やるじゃん」
しかし、彼女の傷がついていないというのは所詮身体面の話だけであって、アウセント等と戦う際に目の前にいる『少年』を人質にとるも、その『少年』に吹き飛ばされてしまっていたのだ
エーミスカは驚愕と屈辱感を覚え、その様子を見ていた『少年』の蔑むような歪んだ笑みがエーミスカにいっそう強い嫌悪感を抱かせる
対する少年は巨大な風の渦を左右両手に発生させ、『少年』は笑いながら叫ぶ
「オマエら全員死んじまいなァ!」
叫ぶと同時に『少年』は両手の風の渦をぶつけ合わせて、半径十五メートル程の風を作り出し、アウセント、ヴェンマー、フィオーレ、エーミスカの四人を追い回しながら、周りを微塵に破壊していく
「何を言い出すかと思えば…ですぎたことを言いますね!」
「ハン…たかが人質にボコられた分際に言われたく無いよねェ~」
エーミスカは襲いかかる竜巻を難なく突破し、『少年』の元へと突進する
突進してきたエーミスカに対して『少年』は慌てることなく、竜巻の速度を一気に爆発させて側面からエーミスカに攻撃を仕掛ける