二章 始まりの火種
フィオーレはその真意を確かめるべく、今度はナイフを強く握り締め、アウセントに急接近を試みる
「さっきはオレの拳を防御出来たようだが、力を込められたナイフならどうかな!」
アウセントの『魔術』に興味を示すフィオーレだが、周りに気を配らず、なりふり構うことなく彼に突撃したのは迂濶だった
先程から、杖を持った紫髪の少女が魔術を『行使』し、ヴェンマーがその『魔術』を上空にて回避し続けていたが、偶然にもヴェンマーの持つ鎌の柄がフィオーレの横腹に力強く激突したのである
「ぐっ…!!」
「あ…………」
完全に無防備だった横腹に鎌の柄が激突したフィオーレは、以前激突した建物の外壁だけでなく、床を破壊して更に下方へと飛んでいき、ヴェンマーはその様を呆然として見送った
もともとアウセントとヴェンマーは相手を殺めたり、傷つけるつもりは微塵もない
彼等二人にとっては何とか相手を足止めし、この場をやり過ごすことを考えていた
この状況下で相手を生け捕りにし、尋問するのが一番の理想の形ではあるが、この場にアンジェルノがいる限り、セイブの『旋回の雲』を持ってしても全力で阻まれてしまうだろう
いや、下手をすれば逆にこちらがやられてしまう可能性は大いにある
だがそれはアウセントとヴェンマーだけの話であって、セイブはアンジェルノを本気で捕まえる気でいた
そうはいっても、上下からは数百に及ぶ光による縦横無尽の連続射撃。仮にそれら全てを『闇』で防ぐことはできても、『闇』の行使によって出来た死角から相手の直接攻撃を許せば、敗北は決定的なものになる