二章 始まりの火種
だが、先程のメイド服の女性がアウセントの前方で『闇』を広げて、黒き光線をことごとく弾き飛ばした
二人がアンジェルノと対峙している最中、黒いハチマキを付けた金髪の女性が、二人の後ろに飛来し、拳を構えて接近する
さらにその後方では頭に飾りを付けた女性が杖をかざして次々と魔術を行使し、それらの攻撃を紙一重でかわしながら反撃の隙を伺っているヴェンマーの姿がある
アウセントは右肘に再び『魔方陣』を展開させて、ハチマキの女性、フィオーレ・ガルナットの拳に合わせて右手を広げて構える
「…!」
フィオーレからすればアウセントの魔術はただ右腕の強度を上げたものと勘違いをしていたようだが、実際に二人の腕が衝突したとき、彼女は自分の攻撃による衝撃がバウンドしたかのように跳ね返り、近くの建物の外壁を打ち破って激突した
煙が舞った建物の中でフィオーレは体勢と意識を整えて、アンジェルノから距離をとったアウセントを見据えながら、腰にあるナイフを手に取る
「力の反転か…?そんな力、『魔術』で可能な筈が…」
本来、魔術師が行使する防御魔術は『物質強化』もしくは『魔術障壁』ぐらいなもの…
だが、あの少年が展開させたのは、明らかに見慣れた『魔方陣』である