二章 始まりの火種
姿を確認していないため、相手が何者かは分からないが、足音からして、その人数は三人だということだけは彼らは理解できた
直後、足音は止み、男の声がこちらに向かって響く
「視線を送らずして我々の力を感じ、こんなに早く身を潜めるとは、中々の使い手とみた。我が霊気を剥き出しにした甲斐があったな」
「…!」
計られた――セイブがそう思った時は遅すぎた
すでに連中は『魔術』の類いでこちらの居場所を察知しており、自分達が『力』を感じる能力者かどうか確かめる為に、わざと相手を警戒させる程の大量の霊気を剥き出しに放出し続けたとみてほぼ間違いない
案の定こちらが気配を薄めた為、相手は確信を持って言葉を放ったのであろう
「我が『王』の命より、暫し力を試させてもらおう…。行くぞ、エーミスカ、フィオーレ」
「うっす」
「了解」
途端、セイブ達が隠れていた建物の頭上から光線のような巨大な光の塊が降り注ぎ、光を浴びたその建物は塵となって消えていく
「っつぅ…あぶねえ。いきなりとは」
すでにその巨大な光の領域から逃れていた三人は、その光に視界を遮られた
その間にも空全体を白き光が、地表一帯を黒き光に染め上げられる
「…!二人とも、早く上へ!地上は危険です!」
セイブは咄嗟に上空へと飛翔し、アウセントとヴェンマーも一歩遅れて彼女に続く
その後方では黒一色に染められた地面から、黒き大きな光が二人めがけて飛来した
「……」
ヴェンマーはすぐさま霊気を纏って折り返して、黒き光に立ち向かうが、その直後にセイブは『旋回の雲』でヴェンマーと光の間に躍り出て、己の周りに纏わせていた霊気を『闇』へと侵食させ、黒き光をその『闇』で遮った